山岳写真を中心に花、滝渓谷、自転車、モータースポーツ、夜景等の分野で、美しいと感じた風景を写真と撮影記で紹介していきます。

shibawannkoの撮影山行

〔100名山〕槍ヶ岳 雪 ~GW 恐ろしかった雪付きの穂先~

北アルプスの雪山に行ってみたい。
厳冬期は無理なので、残雪期のゴールデンウィークに。
3日間の晴天予報が出たので、2泊3日で欲張って槍ヶ岳と奥穂高からの朝焼け夕景狙いかな。
雪の多さと直前の降雪で雪崩が怖かったんですが、雪山初体験の旅友を連れて行ってきました。

山行記録 2018年5月2日~3日

1日目 上り

EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 24mm f16 1/160sec ISO100 PLフィルター

なんと雪山経験なしの旅友を誘っての初の雪の槍ヶ岳。
久しぶりに背負った重荷にあえぎながら毎度の水平移動で横尾まで。
雪山装備がかさばり重いため、水平移動の横尾まででも既に疲れた。
横尾で周りの登山者を見ていると、8:2の比率でだいたいの人が涸沢に向かいますね。

横尾で大休止したのち、人気のない槍ヶ岳方面へ向かいます。
しばらくしてから雪が多くなり、雪山に来ている実感がわいてくる。
槍平小屋で昼食をとりババ平へ向かうと、もうそこは一面の大雪原。
この春の時期にこんな大雪原を歩ける別世界に、感激ひとしお。
大雪原にそそぐ春の日差しが眩しい。

昨日は結構な雪が降った模様。
槍の上り下りが心配だったので、途中ですれ違った2人パーティーに珍しく状況を聞いてみる。
「人に依りますが大丈夫だとは思いますが。。」とのこと。
まぁ、まったくその通りでしょう。
雪への経験や技術に大きく左右されるので、私も聞かれたらそのようにしか答えられないでしょう。

ババ平を抜け、槍沢のひたすらの急斜面を登っていく。
トレースは立派にありますが、やはり残雪期の雪で部分的にグズグズで、上っては少しずり下がったり。
こんな一遍通りの上りは、12本爪アイゼンよりクライミングサポートを効かしたスノーシューの方が圧倒的に楽だと思いますが、槍沢までの長い区間スノーシューを担ぐとなると、どうでしょう?って感じでしょうか
周りも見てもスノーシューを持っている登山者はゼロでした。
上りは良いとしても下りは全く使えないので、やはり要らないという判断になるのでしょうか。

EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 24mm f11 1/125sec ISO100 PLフィルター

槍沢の上部まで詰めると、雪崩ゾーンに入ってきます。
雪が多く残りしかも前日に降雪があったため、結構雪崩に関してリスクを感じているところに、午後も遅くなり気温も上がり雪も緩んでいる。
左右の斜面からは谷の真ん中に切られた登山道にあと少しで達することろまで雪崩のデブリが流れ込んでいる。
なんか恐ろしいんだけれど、目の当りにする自然の驚異が凄い。
絶対に巻き込まれたくはないですが、安全な範囲で雪崩が起きる瞬間を見てみたい。。。

槍ヶ岳が見えてくるとさらに斜度を増してくる。
久しぶりの山行で食糧配分を間違えたか。
雪道ルートを登るのに、おにぎり数個で足りるわけはない。
完全なしゃりばてでもうフラフラ。
ようやく17:00に槍ヶ岳山荘に到着。
ほんとに長かった。

1日目 槍ヶ岳山頂_夕景

EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 24mm f16 1/25sec ISO100 PLフィルター

既に日は傾く中、槍ヶ岳を見ると雪はあまり付いていないように見える。
行けるかな。
ここで槍の穂先まで片道30分で1時間で往復できるだろう、と安易に思って、疲れた体にムチ打って槍の穂先に向かって再び出発。
途中までは順調。
しかし、最後の二段梯子に到達する前の鎖場が非常にいやらしい。
鎖は雪で完全に埋もれていて体をホールドするところが両足のアイゼンとわずかに刺さるピッケルのみ。
これはえげつない。。。
この部分的で瞬間的なリスクは、今の自分の技量からは許容レベルを超えていた。
落ちたら死ぬというリスクを認識しながら、一歩一歩慎重に足場を確保しながら、ピッケルを一刺し一刺ししながら進んでいく。
ようやく通過し、ほっとしながら二段梯子を登り切ると、夕景の北アルプス上空に飛び出る。
着いた~。

無事に辿り着いた安堵感よりも、上りであれだけ苦労した難所の下りが待ち受けることを思うと、とても終わった気にならない。
初めての雪山で槍ヶ岳まで連れてこられた旅友のhisapinは、半ば魂が半分抜けている感じでまともな立ち方をしていない?
雪の状況判断を見誤って、危険な槍の穂先まで連れてきてしまって申し訳ない。
山頂にはもう一人登山者がいました。
下りの危険を感じつつ、気分がそわそわ落ち着かない中、槍ヶ岳からの夕景をいそいそと撮る。
残念ながら穂高方面は大部分が陰になってしまっている。
槍ヶ岳からの撮影は、焼ける部分が多く、夕方より朝方の方がよいのか。
いよいよ意を決して下ります。
このそわそわ落ち着かない緊張感はなんでしょう。

山頂にもう一人いた方も、下りにはもっと自信がないらしく「付いて行っていいですか?」とのこと。
では3人で慎重に下りましょうか。
下りは上りとは段違いに厳しい。
確保するポイントが両端のアイゼンとピッケルの3つしかないため、ピッケルを次のポイントに刺す瞬間は両足の2点支持となる。
足場も非常に狭く雪はやや締まってはいるものの、それは春山で完全には信頼できない。
ピッケルを刺すポイントも雪付きが浅く十分にはない。

この鎖が埋もれた難所の通過は、今から思えばダブルアックスであれば相当程度確実に通過できる気がします。
既に日が落ち早く山荘に戻りたい一方、後ろの二人は苦戦している。
そりゃそうだよね、ゆっくりでいいのでとにかく落ちないでくれ。
一番の難所を通過しても、ほかの個所でも気が抜けない。
日没もとうに過ぎ、槍の穂先でまさかのヘッドライト下山。
しかも、1名ヘッドライトを持ってきていないとかとか。
命からがら槍の穂先から下山しました。

無積雪期であれば、穂先を30分で往復できるところ、人を連れていたこともありますが、上りで45分、下りで1時間かかってしまい19:00山荘着。
夕食の時間には間に合うかな、なんて出かけて行って大幅に遅れてしまい、槍ヶ岳山荘のスタッフの方にはご迷惑をおかけして大変申し訳ありませんでした。
二人して、ひれ伏すように謝りまくっていました。
自己責任の登山において、他人に迷惑をかけたのは後にも先にもこのくらいでしょうか。

2日目 槍ヶ岳山頂_朝焼け

EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 35mm f11 1/8sec ISO100 PLフィルター

翌朝は4時に起きて、槍の穂先からの朝焼けを撮るために、準備を整え槍の穂先へ向かいます。
昨日の反省を踏まえ、時間を十分見ての出発。
今日は昨日の半分腐れ気味の雪と違い雪も堅くに締まっており、安全確実に軽快に穂先に到達することができました。

三脚を構えて夜明けを待っていると、いよいよという時に日が出る東の空に薄雲が現れ、朝焼けを遮ります。
なぬ~~~っ。
せっかくここまで来たのに、一番の目的を達成することができませんでした。
何とか薄日で朝焼けを撮り、下山。
昨日苦戦した槍の穂先からの下山は、雪が閉まっていたこともあり、サクサクっと40分で降りることができました。

2日目 下り

EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 24mm f11 1/200sec ISO100 PLフィルター

朝食を頂いて下山すると雲が広がり、昨日とはうって変わって一面灰色の世界。
何も撮るものがない。
下山も長いので、槍沢でシリセードを何度か試みます。
ふわふわの雪ではなく、残雪期の堅い雪でシリセードには適しませんでしたが、持参した銀マットを使って無理やり滑ってみたり。
そんなこんなで下りてくると、、、ない。
携帯電話がない!
ファスナー付きのズボンのポケットに入れておいた携帯電話が、ファスナーが空いていてこつ然となくなっています。
小屋では確かにあったので、シリセードの途中でファスナーが解放されてなくなったのでしょう。
小さな白い携帯電話を、大雪原から探し出すことは確実に不可能なので、探索を諦めました。
さらに気付くとシリセードをしたときに、堅い雪との摩擦がすごかったのか、リュックが溶けて穴空いてるよ!
携帯紛失とリュック損壊で完全に不機嫌モードになってしまいました。

さらに下山中に相方に貸していた12本爪を固定しているナットが緩んで外れてしまい、アイゼン使用不可状態。
今日中に横尾まで戻ってから奥穂高山荘まで登りかえして、翌日朝に奥穂高登頂予定のところ、アイゼンなしでは実行不可能。
朝の悪天候も気圧の谷か通り過ぎたのか、天気予報通り晴れ渡っている。
明日も晴れて朝焼けが狙えたのでしょうけれど、計画断念で横尾から小屋泊まりの予定をキャンセルして山行終了~。
どのみち、今朝槍ヶ岳山荘を出発して奥穂高山荘間まで登りかえすのは、携帯紛失の精神的ダメージと雪道での体力消耗からも、とても挑めなかったでしょう。
上高地バスターミナルまで3時間の水平歩道を肩を落としてもくもくと歩いて帰りました。

残雪期の槍ヶ岳登頂という目的は達成できましたが、槍ヶ岳と奥穂高からの朝焼け撮影という目的は達成できませんでした。
骨が折れますが、また再チャレンジですかね。

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