山岳写真を中心に花、滝渓谷、自転車、モータースポーツ、夜景等の分野で、美しいと感じた風景を写真と撮影記で紹介していきます。

shibawannkoの撮影山行

〔100名山〕塩見岳 冬季小屋テント泊 ~条件良くも夜明けに間に合わず...~

今年はクリスマスを迎えようとするにも係らず、降雪と天気と休日のタイミングを合わせられず一度も雪山に行けていない。
「昨年惨敗した塩見岳をリベンジしてみたいな」となんとなく思っていましたが、だんだんと今年の鳥倉林道クローズの12/26が近くなってくる。
天気予報を確認すると、降雪の直後に2日間の晴れマークが並ぶ。
この時期のこの気圧配置ならば、南アルプスの山域は確実に晴れるでしょう!
ってことで、聖岳と迷いましたが、ゲートクローズの駆け込み需要で塩見岳に行ってきました。

ルート

〔1日目_山行〕10時間30分 /〔休憩〕5時間30分 /〔合計〕16時間0分
鳥倉林道ゲート(駐車場)02:20 ⇒ 09:00 三伏小屋 10:00 ⇒ 10:10 三伏山 11:30 ⇒ 11:40 三伏峠小屋 11:50 ⇒ 13:00 烏帽子岳 14:00 ⇒ 15:00 折返し地点 16:30 ⇒ 16:50 烏帽子岳 17:20 ⇒ 18:20 三伏峠小屋泊
〔2日目_山行〕15時間30分 /〔休憩〕2時間40分 /〔合計〕18時間10分
三伏峠小屋 02:20 ⇒ 02:30 三伏山 ⇒ 03:45 本谷山 ⇒ 05:30 塩見小屋 05:40 ⇒ 07:40 塩見岳 08:00 ⇒ 08:10 塩見岳東峰 08:15 ⇒ 10:10 塩見小屋 10:15 ⇒ 13:00 本谷山 13:10 ⇒ 14:40 三伏山 14:50 ⇒ 15:00 三伏峠小屋 16:30 ⇒ 19:30 鳥倉林道登山口 19:40 ⇒ 20:30 鳥倉林道ゲート(駐車場)

山行記録 2018年12月24~25日

1日目 鳥倉林道~三伏峠小屋~本谷山往復

02:20 鳥倉林道駐車場ゲート発
仕事から帰り準備を整え、270kmを運転して到着すぐに歩きはじめ。
今回は昨年の日帰り敗退を踏まえて、山中1泊のテント泊。
撮影機材4kgを入れたテント泊フル装備の重量級のリュックが肩に食い込む。

鳥倉林道は雪が少ない。
日が当たる部分は完全に溶けて雪はないが、日陰になる部分は雪が残りアイスバーンと化している。
鳥倉林道で自転車を投入している記録を見かけますが、この冬の時期はどうでしょう?
1/3くらいはアイスバーンとなっていて、自転車投入しなくても、、、という程度。
降雪とのタイミングによると思います。

03:00 50分林道歩きをしてから、いよいよ三伏小屋へ向けて登り始め。
雪はだんだんと増え始め、8/10でついにスノーシューを履くことに。
昨日降った雪でしょうか。トレースは消え、まさかの軽いラッセル状態。

夜明け前後は、空は雪雲で覆い尽くされ真っ暗で小雪が舞う始末。
寒気が入ってくるタイミングで、「完全に天気外したかな~」とテンションだだ下がりでしたが、ほどなくして雲がとれ晴れ渡ってくる。

EOS5DsR+EF16-35mmF4L IS USM 35mm f11 1/160sec ISO100 PLフィルター

09:00 三伏峠小屋着。
今日の予定は、可能な限り塩見岳に近い所までつめてテント泊と考えていましたが、徹夜と三伏小屋までの標高1,000mの上りで、この超重量級のテントフルセットをこれ以上1cmも運びたくないくらい疲れてしまった。
三伏冬季小屋に入ると5人パーティーの方々が塩見岳にアタック中とのこと。
ちょうど冬季小屋奥の部屋が空いたため、今日は三伏小屋泊りとし、夕景を烏帽子岳から撮ればよいかな。

日没の烏帽子の前にまずは最高の状況の塩見岳を撮るために、テントをセットして急いで三伏山まで。
10分くらいで三伏山まで登ると空は晴れ渡り、降雪直後で手前の木々から太っとい樹氷と化し、一面白銀の世界。
俺はこんな景色が求めてたんじゃ~っ!
期待通りの降雪直後の最高の条件を合わすことができました。

以前三伏山からの冬の塩見岳の写真を見たときは、南アルプスのロングルートにテントを担いで冬に行くなんて、限られた人だけの世界と思っていました。
その見た写真以上の光景に巡り合うことができて、もうこれだけで目的の半分以上を達成した感じです。
三伏山から塩見岳を撮り尽くしていると、体格の良い男性2人パーティーが塩見岳へ向かっていきます。
聞いてみると、今日は塩見小屋まで行くとのこと。
じゃあ明日塩見で一緒ですね。
私はもうヘロヘロなので、三伏小屋からアタックします。

三伏峠小屋~烏帽子岳

EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 70mm f16 1/100sec ISO100 PLフィルター

三伏峠小屋まで戻って夕方まで寝ようかと思いましたが、こんな最高の条件の時に寝ていられない。
ってことで、夕景にはまだまだ早いですが、烏帽子岳に向かいます。
樹林帯を抜けるとすぐに開けて樹氷の木々の向こうに塩見岳が聳える。
凄っごいなぁ~、こっちのルート大当たりだ!

本谷山を超えて塩見岳へ通じるルートは樹林帯歩きで展望がない一方で、こちらの烏帽子岳へ向かうルートは塩見岳方面だけでなく小河内岳方面の展望も広がって素晴らしい。
三伏峠小屋泊りとする場合、時間があればぜひ烏帽子岳まで行ってみると良いかもしれません。
写真を撮っていると、後ろから2人パーティーが追い越していく。
トレース付けて頂いてありがとうございます。
写真を撮っていると絶対に追いつけないので...。

EOS5DsR+EF16-35mmF4L IS USM 22mm f11 1/160sec ISO100 PLフィルター

13:00 烏帽子岳着。
ビクトリーロードを経て烏帽子岳へ達すると眺めは最高。
先の2人は日帰りで烏帽子岳までとのこと。
確かに塩見岳の日帰りは相当ハードですが、烏帽子岳であれば塩見岳の展望も素晴らしくて日帰りも十分可能なのでナイスなプランですね。

時間にゆとりがあるので、自撮りしてみたり。
塩見岳と反対方向を見やると、まったくノーチェックだった小河内岳方面の山々が素晴らしい。

烏帽子岳~小河内岳方面 往復

EOS5DsR+EF16-35mmF4L IS USM 16mm f11 1/160sec ISO100 PLフィルター

時間も有り余っているので小河内岳まで行ってみようかな。
いつもの気楽な計画変更で小河内岳方面へとりあえず進んでみる。
それにしても、私一昨日から寝てないけど元気だな。

発達したエビの尻尾と戯れたりしながら一面の銀世界を進んでいきます。
このまま小河内岳へ行けるかと思いきや、前小河内岳に差し掛かると、スノーシューでも踏み抜きが激しくなってくる。
疲れた、やっぱり小河内岳はやめた。

2,700mの稜線でボケーっと日向ぼっこをしていたら、日が傾き始める。
夕景はどこから撮ればいいかな?
辺りを行ったり来たりしながら、結局烏帽子岳から夕景を撮ることに。

EOS5DsR+EF16-35mmF4L IS USM 16mm f11 1/160sec ISO100 PLフィルター

16:50 烏帽子岳山頂から夕景を撮り始める。
烏帽子岳からは北側に塩見岳、南側には南アルプス深南部の山々、東側には富士山、西側には沈みゆく夕日と、全方位が撮れる素晴らしいポイントです。
それぞれの方向を順次夕日に染まるタイミングで撮りつくします。
徹夜で重荷を背負ってここまで来るのは気が狂いそうに大変でしたが、それを吹き飛ばすくらいの素晴らしい光景に巡り合えて、今日は本当に幸運でした。
冬山はこんな感じだと嬉しいのですが。

18:30 1時間程度で三伏小屋まで戻ると、塩見岳アタックから戻って切った5人パーティーが夕食中でした。
会話も弾んでいるようで、最高の塩見岳だったのでしょう。
降雪直後の一番手のラッセル本当に大変だったと思います。
明日そのトレースありがたく使わせて頂きます。
本当にありがとうございます。
それにしても、1人で作って食べる自分の飯、本当にまずいわ。

2日目 塩見岳山頂

EOS5DsR+EF16-35mmF4L IS USM 29mm f16 1/80sec ISO100 PLフィルター

01:00起床でもたもた準備をして02:20三伏小屋発。
今日は夜明け前に塩見岳山頂に到着して、当日内に鳥倉林道まで下山する予定。
昨日も前小河内岳付近まで行ったりして大変でしたが、実は今日の方がよっぽど大変か。

あんまり早く着きすぎると山頂で耐えられないな~、なんて思いながらヨタヨタ歩いているうちに、全然塩見岳に近づかない。
あれっ?このペースだと夜明け前に全然着かなくないか?
本谷山の下り付近から焦り始め、ペースを限界まで上げて休みなく歩き続ける。

05:30 塩見小屋着。
ちらっと見やっただけで、時間がないのでそのまま進む。
塩見小屋からは急登がひたすら続くので、アイゼンに変えずに、ヒールリフターを効かせてスノーシューでそのまま標高を稼ぎます。
結局天狗岩までスノーシューで上がり、ピッケルに換装する。
デポするスノーシューとストックは、念を入れてワイヤーロックで括り付けておきます。
今度俺のスノーシューパクったら〇〇〇!
⇒ 『スノーシューパクられ山行』
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-1327608.html

いよいよ天狗岳に取り付きます。
既に休みなく歩き続け3時間経過し、夜明けが迫り時間もなく、そして疲れた身からすると、絶望的な高さの壁が聳え立つように感じます。
塩見岳は遥か昔に夏に登っていますが、ルートはおぼろげで覚えておらず。
前日の4人パーティーがつけておいてくれたトレースが綺麗に残っているので、忠実にトレースを辿っていきます。
1つ1つのムーブは難しくはありませんが、一面雪に覆われた状況でルートファインディングするのは非常に怖いな、と思いました。
もし一番手でトレースなしで乗り込んでいたら、ルートファインディングに相当時間がかかるか、怖くなって引き返していたかもしれません。

夜明けまで時間がないので、乳酸出まくっても急ぐしかありません。
ようやく天狗岳を登って一度下りると、今度は西峰が天狗岳以上の高さで聳え立ちます。
その立ちふさがる壁を前に、もう夜明けに間に合わないことを悟りました。
急いで登るも、西峰前で夜明けを迎える。
南側の小河内岳方面は撮れるけれど、東側の富士山や北側の間ノ岳方面は撮れない。

07:40 夜明けから30分遅れて西峰着。
ああ~、東峰に続く稜線越しの富士山が素晴らしい。
今回の目的はこの朝焼け富士のシーンを撮りたかったはずなのに、雪付きも良く快晴の最高の条件であったにもかかわらず、朝焼けに間に合わなかったとは。。。

山頂に立てて喜ばしいはずなんですが、一番の目的が自分の過失で達成できず、本当にがっかりした。
確かにこれ以上のペースでは歩くことはできなかったけれど、もう30分早く歩き始めることぐらいはできたはずなのに。。。とか、
こんなに大変な雪山ロングルートの3回目はないない。とか、
こんな好条件を合わすことはなかなかできない。とかとか。

後悔ひとしおの気分に浸りながらも、とりあえず山頂景色を撮りまくります。
しかし、なんか気分だけでなく体も具合悪い。
よく考えると、今の自分って「疲労凍死の3条件」を非常に高いレベルで満たしてないか?
〔条件①:疲労〕5時間休みなくオーバーペースで歩き続けて疲労困憊、しかも乳酸たぎってバテバテ状態でもう足も出ない。
〔条件②:低温〕冬の3,000m峰で、氷点下10度の強風に晒され続けている。
〔条件③:空腹〕01:30に食べ終えてから6時間何も食べておらず、胃の中に何も残っていないくらい空腹。ハラ減った。
これってもう少しここに留まると、突然行動不能に陥るケースかな?
しかも低温強風で強制冷却されて、なんかお腹痛い。。。

これはいかんってことで、カロリーメートを暖かいお茶で流し込む。
もう撤退だ。
長く居る場所ではない。
ヨタヨタと来た道を下るが、登りで完全にバテたのか、下りでも足が出ない。
こんなバテたの、ちょうど一年前の塩見岳以来だ。
⇒ 『バテバテ塩見岳日帰り山行』
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-1338067.html

天狗岳まで戻ると、行きの稜線を辿る夏山ルートとは違う、斜面を大きくショートカットするようなトラバースのトレースが。
天狗岳への登り返しが気が遠くなるほどバテていたので、楽そうなトラバースのトレースを雪質を確認しながら少し辿ってみる。
なるほどなるほど。
ほぼ水平にトラバースして、楽に天狗岳の登り口に合流できました。
このルートを刻めるって凄いなぁ、と感心しきりでした。
4人パーティーの方々、どうもありがとうございました。

塩見岳~鳥倉林道ゲート

天狗岳の登り口からはデポしておいたスノーシューを回収して下ります。
セットしていると、昨日塩見小屋に泊まられていたと思われる男性2人組が上がってきました。
今日塩見岳に登るのは私と2名合わせて3名だけでしょう。
今度は気絶するくらいのながい道のりを帰ります。
遥か彼方に三伏小屋が見える。
そして三伏小屋からはさらにテントセットの重量が加わって、900mの下りと3kmの水平歩きが加わるとか。
もう、考えただけでも死んでしまいそうだ(笑)。

完全にバテきった体で、アップダウンを繰り返しながら本谷山まで戻ります。
本谷山前で、なんと2時間のビハインドがあった男性2人組に早々に抜かれます。
そりゃあ30秒歩いては10秒休んでいるペースは亀以下だよね。。。
本谷山の上りは長く、毎回来るたびに「まだか、まだか」という苦しい思いをしながら登っている。
本谷山は、山の中で一番好きではない山かもしれない(笑)。

13:00 本谷山着。
先の男性2人組が休憩されてました。
倒れこむように座り込んで、本谷山ゴーーール!
この先バテ切っている自分が2人に追いつくことは絶対にないので、ここからは長~い一人旅。

15:00 三伏峠小屋着。
ここで大休止。
テントをたたみつつ、1,000mの下りに備えて体力を回復させます。
4/10くらいからは雪が少なくなり、踏み固められたアイスバーンに。
ぷるぷるしながら踏ん張って歩いていましたが、2回ほどすっ転び谷に落ちそうになったので、断念して12本爪アイゼンを着けて歩くことに。

19:30 鳥倉林道登山口着。
20:30 鳥倉林道ゲート着。
もうヘロヘロを通り過ぎました。
前回の22:00着とあまり変わらないやんけ。

「塩見岳山頂からの朝焼け」
今回も撮れませんでしたが、自分の人生で冬の塩見はもういっぱいかもしれません。
こんな大変なルートをまた来ようと思う日はくるのかな(終)。

今日のお役立ちアイテム ~実際の使用状況とその役割について~

塩見岳は百名山と言えども、冬季は人の入りは多くはありません
そのためトレースの期待できない塩見岳に降雪後に入山する場合には、スノーシューやワカンがないと敗退確実と思った方が良く、通常スノーシューは必須です。
完全なトレースがある場合は、アイゼンかスノーシューか迷いますが、一長一短がありますがスノーシューは持って行った方が安全でしょう。
スノーシューは両足で2kg弱とやはりアイゼンより重たくなるため、塩見岳のロングルートの全線をスノーシューで歩くにはそれなりに負担が大きい一方で、雪面での上りにはヒールリフターが非常に役に立ちます
特に権右衛門山を越えてからの塩見小屋への急な上りや、塩見小屋から天狗岩の付け根までの急斜面もスノーシューが活します。
この区間は特に雪が深くなるので、アイゼン歩行よりはヒールリフターを効かせてのスノーシューの方がずっと有効だと思います。

冬季の塩見岳は鳥倉林道夏ゲートからの往復で、標高差1,400m/水平距離28kmを重装備のテント泊セットを背負って歩く後負荷のロングルートになります。
そのため、通常はワカンやスノーシューの重量も加わるため、装備は可能な限り軽くしたいところです。
塩見岳のロングルートは、天狗岩から上部の岩場部分以外はピッケルはほぼ不要でダブルストックの方が有効です。
長時間の雪稜歩きで、2本で360gと軽量化が図れるディスタンスカーボンの存在が非常にありがたかったです。
以前の旧モデルはスノーバスケットが取り付けできず完全な無積雪期専用モデルでしたが、マイナーチェンジしたニューモデルはスノーバスケットをワンタッチで取り付けることができます。そのため、浮力は若干少ないものの超軽量のストックで積雪と無積雪のいずれの状況にも対応することができます

塩見岳のロングルートは、天狗岩から上部の岩場部分以外はピッケルはほぼ不要でダブルストックの方が有効です。
また天狗岩から上部の岩場部分も雪の状況次第ですが、年末年始であれば雨で氷化することも想定しにくく通常は柔らかな雪になります。
そのため、270gと軽量化に特化したコルサナノテクでも安全は十分確保でき、そこまでの長い区間ピッケルを持ち運ぶ負担も少なく、精神面でも重量増に対する懸念を大きく軽減してくれました。

1日目も2日目も朝夕合計4回のナイトハイク。
日没後の真っ暗の雪道を500ルーメンの照度が必要十分に照らしてくれました。
塩見岳のルートは降雪直後でトレースが消えている状況でも、夏道を知っていれば何となく分かり、道迷いのリスクはそれほど高くはありません。
それでもハイパワーのヘッドライトがあると、夜間歩行の道迷いリスクに対する安心感が違います

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