GW前半の晴れは日曜の1日しかない。
まだ行ったことがないGWの穂高か、行ったことのある立山・燕岳の撮り直しか。
降雪直後ではたして穂高山荘まで辿り着けるのか?
直前まで迷々高速を走っていましたが、今しかない穂高へ行くことにしました。
ルート
上高地バスターミナル 08:50 ⇒ 09:30 明神館 ⇒ 10:20 徳澤園 ⇒ 11:20 横尾 11:40 ⇒ 12:50 本谷橋 ⇒ 14:20涸沢ヒュッテ
〔2日目_山行〕11時間20分 /〔休憩〕4時間45分 /〔合計〕16時間05分
涸沢ヒュッテ 01:30 ⇒ 05:10 涸沢岳 05:50 ⇒ 06:20 穂高岳山荘 07:20 ⇒ 08:20 穂高岳 09:00 ⇒ 09:30 穂高岳山荘 11:10 ⇒ 12:30 涸沢ヒュッテ 12:50 ⇒ 4:30 横尾 14:50 ⇒ 17:00 上高地バスターミナル
山行記録 2019年4月27日~28日
今まで周囲の山々から眺め見て、冬のその姿に畏敬の念を抱いていた穂高連峰。
その神々しい冬の姿を映すためには、相当のリスクを取って蒲田富士を超え涸沢岳西尾根から行かなければならないと考えていた。
そしてそのルートが最も難度が高く、自分の最終の目的地とも。
しかし、今回その目的に近づくことができました(残雪期だけれど)。
幸運にも前日に寒波が入り山の上部では40cmの降雪が見込まれるとのこと。
降雪直後に行って厳冬期っぽい写真が撮れれば、危険な西尾根でなくてもいいかな?
結果は降雪直後でやや厳冬期っぽいものが撮れたでしょうか。
ただ小さなミスが重なり朝焼けには間に合わなかったり、日中薄雲が掛かったり。
なかなか一度では撮らせてもらえませんね。
そして懸念していた①雪壁滑落と②雪崩という大きなリスクを回避できました。
また来年以降、GW付近の降雪直後を狙って北穂高と一緒に行ってみたい。
1日目_アプローチ(上高地バスターミナル 08:50 ⇒ 14:20 涸沢ヒュッテ)
08:50 上高地スタート
2時間スタートが遅れ、今日中に穂高山荘に着くには厳しい時間になってしまった。
横尾までの水平歩きは2時間半ノンストップ。
横尾からは雪道歩き。
いったいこの橋を何度渡ったことだろう。
今回初めて雪のある時期に涸沢へ向かいます。
12:50 本谷橋
橋がないよ!完全に雪に埋もれている。へぇ~、GWでもこんななんだ。
上に行くほど雪が強くなり視界も霞む。
悪天候のせいか人は少なめ。
明日晴れるならば今日つめるしかあるまい。
踏み固められた1本のルートを歩いてひたすら高度を上げます。
雪の涸沢って大変そうだなぁ~って思っていましたが、この日は気温も低く雪も締まっていたので、夏よりだいぶ楽でした。
14:20 涸沢ヒュッテ着。
雪が締まっていたので、結局最後までノーアイゼンで涸沢まで歩けました。
吹雪とはいかないまでも激しい降雪。
激しく雪が降る中、テント設営に勤しむテン泊者達。
雪山テント泊、私には大変すぎる。。。
軽く早く、小屋に泊まれるのであれば極力小屋泊まりにしたい。
奥穂山荘まで行くかどうかウロウロウ迷う。
視界も悪く進む方向も全く見えない。
どうする?どうする??
時間も遅く雪崩も怖いので涸沢ヒュッテ泊まりとしました。
天気が悪かったので混んでいませんでした。
余力を残して初日終了。
この降雪の中、穂高山荘まで行かれた3名の方が軽い雪崩にあったことを翌日お聞きしました。
さらに遅い時間に自分が突っ込んでいたらどうなっていたことか。
我ながらよく踏みとどまったと思います。
2日目_涸沢岳アタック(涸沢ヒュッテ01:30 ⇒ 05:10 涸沢岳 05:50)
EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 33mm f11 1/125sec ISO100 PLフィルター
00:30 朝焼け狙いのため起床・朝食
今涸沢に数百人いようとも、朝焼け狙いの自分が確実に一番手になるだろう。
朝焼け狙いに、降雪直後一番手のラッセルは避けられない宿命。
前夜に受け取っていた涸沢ヒュッテの朝弁当を頂きます。
美味しいけれど、この量だと雪を掻き分け稜線に辿り着く分にも足りないかも。
案の定、穂高山荘に着く前に腹が減った。
01:30 涸沢ヒュッテ発
月末でデータ使用制限が掛かり、GPSに地図を落とせないというミス。
暗闇の中、ザイテングラードの基部まで迷々のトレースを刻んでしまった。
ザイテングラード基部に到着し、涸沢岳に向かって左側の小豆沢を登るかザイテングラードを登るかを迷う。
新雪直後だけれど気温が低いので小豆沢を登っても大丈夫かな、と一瞬思う。
しかし、雪崩が起こらない保証はないし、気温が上がってから後続者が続いて雪崩に巻き込まれても困るし、上部でザイテングラードに取り付けるのかも分からないので、リスクを一番低くするためにザイテングラードから行くことにしました。
ザイテングラードのアップダウンが見た感じ大変そうだったので、最初は右側をラッセルで登り、中腹の取り付きやすい所からザイテングラードに取り付いてそのまま穂高山荘まで上りました。
ザイテングラードの上は雪が飛んで固く締まっていて、滑落は怖かったですが歩きやすかったです。
もっと下部からザイテングラードを行った方が歩きやすかったのかもしれません。
05:10 涸沢岳山頂着
一番手ラッセルと迷々トレースを刻んだ分だけ、夜明けに5分間に合わなかった。
朝焼けに間に合わせるために閾値を超えて急いだため、乳酸出まくり。
ああ~、夜明けのピンク色が抜けてしまった。。。
でも雪の稜線の向こうに槍!素晴らしか~。
毎度のことながらもっと早く出ればよかったのに。
一番手ラッセルと迷々トレースの時間を考慮していなかった。
こんな絶好のチャンスを、悔やまれる。。。
それでも北穂高から北アルプス深部の山々の雪景色を見ることができました。
初めて見る雪たっぷりの穂高連峰。感慨深い。
槍ヶ岳とは反対側に見えるのは奥穂高。
朝一番で雪壁に挑むのは怖かったので涸沢岳にしましたが、あのくらいだったら全然大丈夫でしょう。
階段部分が埋もれて壁になるかと思っていました。
朝焼け狙いは奥穂高でよかったかもしれない。
奥穂高アタック(穂高山荘 07:20 ⇒ 08:20 奥穂高 09:00 ⇒ 09:30 穂高山荘)
07:20 次は準備を整えていよいよ奥穂高へ。
まずは最大の難所、梯子上の雪壁1本目をダブルアックスで慎重に登る。
すっげー角度だな、まったく下が見えん。
しばらくはヨタヨタ歩いていくと、遠くに2本目の雪壁が見えてきた。
2本目の雪壁は、ダブルアックスの威力を知り慣れたのか、サクっと登ってやった。
EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 24mm f8 1/640sec ISO100 PLフィルター
08:20 奥穂高岳着。
やったー!いつかは来たいと思っていた最終目的である、厳冬期っぽい雪の穂高連峰を撮ることができました(残雪期だけれど)。
奥穂高からのこの眺望は、稜線が幾重にも重なった向こうに槍が見え背景に山々が連なり、日本一の山岳展望だと何度来ても思います。
残念ながら薄雲が空を覆ってコントラストが低下している。
次のまだ見ぬ雪景色を北アルプス深部に思いを馳せる。
行ってみたいな~、荷物重そうだな~、膝に来そうだな...。
EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 70mm f8 1/500sec ISO100 PLフィルター
のんびり居座っていたら既に09:00。
既に光が回ってベタ光線に近いようになっています。
斜光線で立体的に撮るには夜明け~8時前には来た方が良いでしょう。
下りの雪壁2本はだいぶ慣れました。
まだ9時半を回ったくらいなのに、雪が緩み始めていました。
可能な限り雪が緩む前の早い時間に登った方がよいでしょう。
下山(穂高山荘 11:10 ⇒ 12:30 涸沢ヒュッテ 12:50 ⇒ 上高地 17:40)
09:30 穂高山荘まで戻ってきました。ああ~、乗り切った。
天気を調べると明日も良さそう。
もう1回来るよりかは今日もう1泊した方が朝焼け夕焼け狙えるかも。
もう1泊しようかと迷々ウロウロ考えていましたが、やっぱ帰ることにした。
11:10 下山開始。
あれ、バス間に合わないんじゃね?
小屋でも稜線上でも「小豆沢で雪崩れて数人が巻き込まれるのを見た。」「(壁に向かって)右側の斜面で雪崩れて数名が巻き込まれた。」等の情報をあちこちで聞く。
新雪後の急斜面、危ない状況なのは間違いないよね。
一番安全なザイテングラード上を下りてゆくと、あれ?
みんなザイテングラードの北側の斜面を歩いている。
今朝私は中腹からザイテングラードに取り付いてあそこは歩いていない。
新しいルートができていた。
ザイテングラードの露出した岩は歩きたくないので、朝取り付いた所から北側斜面に下りて、斜面削りながら早く下りよう。
足をおろすと新雪30cm下で硬い雪層にぶつかるのが分かる。
どこでも雪崩が起きてもおかしくなさそうな状況なので、シリセードで一気に滑り降りたい欲求を抑えてザクザク歩いて下りました。
そもそもシリセードで雪崩が誘発されるかどうかは分かりませんが、直感がやめろと言っていた。
膝への負担を極力減らしたいのと、いい加減面倒くさなってきたので、最後の最後の安全なズベズベ雪の斜面で前の人のシリセード跡を見つけてシリセード。
本当はもっと上の方から豪快に滑ってきたかったんですけれど。
楽ちんでした。
12:20 涸沢着
奥穂高と合わせて北穂高も行きたかったんですが、晴天が1日なのと北穂山荘の営業開始がまだなので今回はこれで終わり。
北穂と奥穂から朝焼け夕焼けを撮るためにまた来ます。
GW期間中の降雪直後がねらい目かな。
17:30 河童橋着。
横尾~上高地間の11kmは長い長い。明神~上高地間は電波が入ったので(AU)、スマホでヤマレコ見ながら歩きで、苦しさを紛らわすことができました。
沢渡行きのバスの定時最終は17:05で終わりです。
しかし新島々行きの最終バス18:00が沢渡の各駐車場を寄ってくれるそうで、それに乗って無事帰ることができました。
GWの穂高、来てよかった。
感謝感謝。
GW穂高のリスク ~GWの穂高を安全に楽しむには~
奥穂高雪壁×大小2つ
(1)装備 ~ダブルアックスの勧め~
雪の穂高に登りたいけれど、雪壁が心配で二の足を踏む人もいるかと思います。
アイスクライミングを練習すればいいんでしょうけれど、私のようにその志向が全くない人にとってはなおさらその壁は高く立ちはだかります。
私はピッケルを1本追加してダブルアックス(ピッケル)で対応しました。
通常岩登りは「三点支持」を使った登り方が基本姿勢とされます。
しかし岩等のホールドがない雪壁の場合は、ピッケルを持っていない側の手は支点となり得ず、場合によっては非常に緊張を強いられる場面もあります。
以前GWの槍ヶ岳で、鎖が雪で埋もれ午後で雪が緩んでいた時は、非常に危険で恐ろしい思いをしました。
そのとき「もう1本ピッケルがあれば...」と強く思ったのを今でも覚えています。
そこで1本ピッケルを追加すれば、通常の三点支持の動きができ、また雪壁に対してピッケルのピック部分の支持力が強力なので、非常に安定感が増します。
雪質によりますがピック部分が雪面に刺さればよいので、重厚な氷壁登攀用のアックスでなくても軽量化を考慮して、短めの軽量モデルでも十分機能すると思います。
またトラバース時等、2本が必要ない時は、リュックと背中の間に挿しておけばさほど邪魔にはなりません。
雪の穂高に来る人が素人ということは考えられないので、2本持ちが必須というわけではありません。
実際ほとんどの人がピッケル1本持ちで、割合的に5~10人に1人くらいが2本持ちだったような気がします。
雪壁が怖くて少しでもリスクを低減させたい人には、ピッケル2本持ちがお勧めです。
この点、CAMPのコルサナノテクでは270gと超軽量なので重量増を抑えることができ、1本追加で持つには最適です。
(2)雪壁の通行状況
通過する時間帯は、雪が硬く締まっている早い時間帯の方がいいです。
実際下山時の9時過ぎには、雪は緩み始めていました。
雪壁は特段一方通行ではないので、実際すれ違い時にはラインが重ならないようにして双方向で上り下りしました。ただラインは変えても取り付き部分は同じなので、ラインが重なるときは注意した方が良いでしょう。
また多くの人が蹴り込んだ雪面は衝撃で脆くなっている部分もあるため、状況に応じて既にあるステップにこだわらなくても良いかと思います。
涸沢カールの雪崩
自分の経験上、雪崩のリスクが高かったのは、GW槍沢、GW涸沢、厳冬期ドカ雪直後の赤岳くらいしか経験はなく、適切に雪崩の発生を読めるわけでもなく、また誰しもが完全に読み切れるものではないと思います。
今回で言えば、降雪中の27日にも雪崩で人が巻き込まれており、降雪後の28日でも雪崩が数か所で発生して同じく人が巻き込まれています。
「雪崩が起きそうな所には近づかない」との鉄則に厳密に従えば、そのそもこの両日の行動を控えるべきということになっていまいますが。
では一発のリスクが極めて高い雪崩に対して、両日どう対処すべきだったのか?
私は雪崩のリスクを認識している中で行動していたので、もし巻き込まれたら「泳いで最後までもがけばいいんだろう」という思考回路だけは備えて行動していました。
①降雪中・降雪直後の行動を控える、②沢筋を回避する、③気温の上がる午後の時間帯の行動を控える等、リスクを1つ1つ回避する行動を取っていくしかないとしか今は考えられない。
それでも完全に回避することはできないのだから、、、。
今まで雪崩のリスクのあるルートをそれほど多く歩いてこなかったので、雪崩と言っても特に他人事と思っている節があったのも事実です。
ただだんだんと雪崩リスクの高い領域に足を踏み入れようとしていることを認識し、真摯に向き合わなければならないと今回の山行で思わされた次第です。
規模はともかく、①27日の降雪中に雪崩が起きた、②28日の降雪直後にも雪崩が起きた、③雪崩が起きた場所はザイテングラードの左右の沢筋。
今回実際現地で聞いて目にしたことで、紙面で見た知識が実体験として自分のものになったことは良かったと思います。
今回はただただ幸運でした。
今日のお役立ちアイテム
ピッケルを使うのは精々涸沢から上部になります。
横尾から涸沢までの区間はストックが有効で、2本で360gと超軽量で扱いやすいストックが雪原歩きの助けになりました。
以前の旧モデルはスノーバスケットが取り付けできず完全な無積雪期専用モデルでしたが、マイナーチェンジしたニューモデルはスノーバスケットをワンタッチで取り付けることができます。そのため、浮力は若干少ないものの超軽量のストックをそのまま冬用ストックとして使用することができます。
このザムストの膝サポーターは、膝の上下でしっかり固定するタイプのため、2日間を通してズレることなくしっかり膝をサポートしてくれました。
雪山が足にがやさしいとはいえ、サポートタイツと膝サポーターによるダブルの膝の保護はかなり効果的です。
膝と足首を痛めていて不安のある中での山行でしたが、なんとかハードなロングルートを乗り越えることができました。
またCW-Xの冬用サポートタイツは結構暖かく、防寒着とサポートの両方に機能するインナーとして冬山では欠かせないアイテムとなっています。