山岳写真を中心に花、滝渓谷、自転車、モータースポーツ、夜景等の分野で、美しいと感じた風景を写真と撮影記で紹介していきます。

shibawannkoの撮影山行

〔100名山〕聖岳_冬 東尾根 ~憧れの雪山へ!けど雪少なし...~

先週の上河内岳の降雪直後のフルラッセルで、一週間具合が悪くなった。自分の限界を超えて知った。降雪直後の真っ白な峰々の朝焼けを狙おうにも、このエリアの山々の単独ラッセルは自分には厳し過ぎる。

冬山を始めて以来、現実的な最終目標は冬の聖岳と漠然と思っていた。先週の上河内岳のフルラッセルで考えを一部修正。降雪直後ではなく、まずはトレースが期待される年末年始に登ってみよう。そうと決まれば、晴天を狙って憧れの冬の聖岳へ。

今回のミッションは以下の3つ。
① ピラミダルな奥聖岳の朝焼け撮影
② 東尾根の雪稜を安全に通過しての冬期の聖岳登頂
➂ 早く下山して、大晦日の年越しそばを家族と一緒に食べること

聖岳と言ってもルートが複数ある。野望は上河内岳~聖岳の縦走だったが、こちらは日程と体力からいったん取りやめ。残るは易老度から入るか畑薙ダムから入るかだが、畑薙ダムから入る東尾根ルートは、冬季バリエーションルート。細い雪稜の雪と岩のミックスが核心部とされるが、自分の実力で安全確実に超えられるかがが第一の不安材料。
一方、易老度からは登れるとは思うが、東京方面からぐるっと280km回り込んでの易老度までのアプローチが面倒くさすぎる。畑薙ダムまでの峠道も大変だが、まだこちらの方がまし。
そして写真的には東尾根の途中から見るピラミダルな奥聖岳が素晴らしく、奥聖岳の朝焼けを狙いたい。山頂1点だけでなく、東尾根ルートの方が撮れるシーンが多いだろう。
ということでルートは東尾根に決定。長い東俣林道は、MTBを投入すれば何とかなるでしょう。

ルート/shibawannkoのワンポイントアドバイス

〔1日目_山行〕8時間10分/〔休憩〕30分/合計〕8時間40分
畑薙ダムゲート前 04:30 ⇒ 06:50 聖沢登山口 07:20 ⇒ 13:10 白蓬ノ頭泊
〔2日目_山行〕9時間10分/〔休憩〕4時間/〔合計〕13時間10分
白蓬ノ頭 04:40 ⇒ 06:30 2800m峰(東聖岳)07:30 ⇒ 07:50 奥聖岳 08:10 ⇒ 08:40 聖岳 09:00 ⇒ 09:30 奥聖岳 09:50 ⇒ 11:10 白蓬ノ頭 12:40 ⇒ 15:50 聖沢登山口 16:20 ⇒ 17:50畑薙ダムゲート前

ポイント

≪12/30-31の積雪状況≫
・東俣林道:凍結箇所は多少あるが轍はなく、全面自転車可能。
・聖沢から積雪あるが明瞭なトレースあり。
・ジャンクションピーク~稜線までは、踏み抜き多発。
・稜線上は一部雪が解けて地面露出あり、ハイマツが藪い。

≪使用武器≫
・12本爪アイゼン/ウィペット×2/(ピッケル)
⇒ 雪稜歩きはピッケルだと地面に届かずやや宙ぶらりん。急斜面で刺しても、上部の雪質は柔らかく、ピッケルの頭まで潜り有効に活用できなかった。核心部の登りはウィペット×1+ピッケルの2本体制で行ったが、下りはウィペット×2で下りた。

≪危険個所≫
・2800mから先の雪と岩のミックス?の細い雪稜。
⇒ この日は雪が少なくトレース明瞭のため、恐怖を感じるところはなかった。
⇒ 岩というよりハイマツが出ている印象の方が強かった。
・聖沢登山口~ジャンクションピーク
⇒ 雪とトレースがあれば迷わないが、雪が解けるとルートファインディング必要。
⇒ ピンクテープは稀で、ピンクテープを連ねて歩ける感じではない。

≪東俣林道へのMTB投入≫
・MTBはかなり有効。往路で2時間強/復路で1時間半程度。落石注意。
⇒ 全般的に勾配は少なく、緩い登りと下りを繰り返すため、上りで押し歩いても、その次の下りでMTBに乗って下りれるという繰り返し。
⇒ 往路復路ともに半分くらいはMTBに乗っていられる感じ。往路より復路の方が下り区間が長いため、時間は少なく済む。
⇒ 路面凍結箇所は若干あったが、轍が少なかったので、水平及び下り区間ではMTBに乗ったまま通過した。
⇒ ヘッドライトの電源を温存するため、MTBに高輝度の照明をつけておくと便利。

山行記録 2022年12月30日(05:50~13:40)

(1日目)畑薙ダムゲート前 04:30 ~ 06:50 聖沢登山口 07:20 ~ 13:10 白蓬ノ頭泊

04:30 沼平ゲート発。先週の上河内岳で味をしめたので、今週も当然MTBを投入。前回と違うのはその距離。沼平ゲートから畑薙大吊橋までは3kmだが、沼平ゲートから聖沢登山口までは14km。どのくらい往路でMTBが使えるか心配だったが、半分くらいは乗っていられる感じで、やはりMTB投入は有効だった。
赤石ダム湖あたりで明るくなる。登る前からして秘境感たっぷり。
06:50 2時間強で聖沢登山口着。

聖沢登山口 07:20 ~ 13:10 白蓬ノ頭泊

EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 24mm f8 1/80sec ISO100 PLフィルター

07:20 準備を整えいよいよ登山開始。聖沢登山口から明瞭なトレースがあり、ラッセルもルートファインディングも不要で楽に登らせてもらう。
先週の上河内岳のフルラッセルとどうしても比べてしまうが、この急斜面のルートを一番手でラッセルした人は本当に大変だったと思う。ピンクテープも稀にしかなく、ルートファインディングしながらのさらに雪稜をもラッセルしなければならないことを考えると、初回で自分ができるとは思えない。本当に感謝しかない。
ジャンクションピークからは若干傾斜が緩む部分が出てくるが、さらに雪が深くなる。まだ雪が落ち着いていないうえ入山者が少なく踏み固められていないのか、雪は柔らかめ。トレースがあることを見越してスノーシューを持ってこなかったが、ロシアンルーレットのような踏み抜き発生。一日目の終盤に来て、さらに体力が奪われる。
今回は完璧なトレースがあるにもかかわらずバテた。二週連続でバテてしまった。体力のなさを痛感せざるを得ない。

EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 28mm f11 1/125sec ISO100 PLフィルター

13:10 バテバテになって、今日の幕営地である白蓬ノ頭に到着。整地する余裕もなし。前泊者の整地跡を有難く使わせてもらう。感謝感謝。
10分でテントを張り、10分で荷物を整理して聖岳山頂へ向かうが、200~300m歩いたら一歩たりとも足が出なくなる。天気が良ければ初日で聖岳山頂まで行き、聖岳山頂からの夕景撮影とか考えていたが、まったくの無謀計画だった。目的の上河内岳方面は雲がかかり始めていたので、安心して初日の行動を終了することにした。
夕暮れ時に白蓬の頭まで行って夕景撮影。聖岳は逆光。赤石岳と悪沢岳の僅かな部分が染まるだけ。まともに撮れるのは富士山だけだった。鋭く尖る聖岳を見上げると、いよいよ明日、見るからに恐ろしいあの細い雪稜を登るのかと思うと、恐ろしくて仕方がない。

白蓬の頭の幕営地は風がなく助かったが、夜間のテント内の気温は氷点下15度。恐ろしい寒さだ。シュラフカバーとカイロ×3個追加して暖かく寝れたが、もし持ってこなければ寒くて寝れなかったかもしれない。

(2日目)白蓬ノ頭 04:40 ~ 06:30 2800m峰(東聖岳)

EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 24mm f8 1/15sec ISO100 PLフィルター

04:40 目的の奥聖岳がピラミダルに見える朝焼けスポットへ、夜明け時刻に間に合うよう、余裕を見てスタート。森林限界を超えたあたりで今回初めてアイゼンを装着し、ウィペット1本をピッケルに換装する。しかしピッケルが雪面に届かず宙ぶらりんで杖の機能を果たさず、やや持て余す感じ。
次々現れるピークを越えていくが、目的の光景は広がらない。結局目的の光景が広がるのは、核心部手前の2800m峰だった。
晴れていたので心配していなかったが、夜明け直前になって雲が西から東へ広がり始める。雲が出てもよいが太陽を隠してくれると目的が達成できない。早く太陽出てくれ!

06:50 地平線と広がる雲の隙間から太陽が昇る。今日は上空の雲に太陽が隠れるまでの短い時間が勝負だな。
なんとか無事に朝焼けが始まる。目的の奥聖岳はというと、雪が少ない...。一週間前は真っ白だった聖岳も雪が解けてしまって、手前の稜線の地肌が黒々している。まぁ仕方がない。今回は登れて朝焼けが撮れただけれも上出来だ。今回の3つのミッションの1つは無事クリアした。

EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 43mm f8 1/30sec ISO100 PLフィルター

隣の赤石岳はさらに雪が解けて地肌むき出し。ピンクに焼ける部分が少ない。上河内岳も焼ける部分が少ない。これで朝焼け終了かと思ったら、遠くにピンクに染まる槍穂高を目撃する。その隣は鹿島槍ヶ岳の後立山連峰までくっきり。分かっちゃいたけど、南アルプスの南部から北アルプスまで見えるんだ!かなり遠いけど斬新だな。

2800m峰(東聖岳)07:30 ~ 07:50 奥聖岳 08:10 ~ 08:40 聖岳

EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 24mm f16 1/50sec ISO100 PLフィルター

一通り朝焼けを撮り終えて、いよいよ核心部の通過に挑む。ここまでも雪稜を歩いてきたし、眼前にルートを確認できるので、不安はもうあまりない。雪と岩のミックスと言われているが、どちらかというと雪からハイマツの枝が出ている感じに近い。トレースもあり、別に難しくはなさそう。
実際に取り付いてみると、今日の状況では何ら難しさや恐怖を感じるものはなかった。2800m峰から核心部へ進むと、地形的に西風が遮られるため風は弱い。急斜面を登って暑い、暑すぎる!もっと吹き晒してくれないと(笑)。

07:50 核心部を通過するとすぐに奥聖岳山頂。ここからは緩やかに聖岳への稜線歩きを楽しむだけ。意外にこの区間も西風が遮られる区間だった。

聖岳 09:00 ~ 09:30 奥聖岳 09:50 ~ 11:10 白蓬ノ頭 

EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 29mm f11 1/160sec ISO100 PLフィルター

08:40 聖岳山頂着。ついに憧れてきた冬期聖岳の登頂を果たすとともに、今日のミッション2つ目も無事達成。雪付きは少なく求めた山岳写真ではないが、素直に登頂できただけでも嬉しい。やっとここまで来たという感じもするが、実はただ単に想っていたただけで行動に移していなかったという方が近しい(チャレンジしたのは1回だけ)。光に包まれる山頂が眩しい。なんか暖かいと感じて温度計を見たが、立派に氷点下15度だった。山頂は強風地帯で風を避けれる場所がないが、今日はそれほどの強風ではなかったからだろう。
おだんごの「3013聖岳」を見ることにどれだけ憧れたことか。入念に撮る(笑)。

小聖岳方面から登山者が登ってくる。写真撮影をお願いされたので写真を撮ってあげると、急いで小聖岳へ下りて行った。滞在時間わずか2分?よっぽど寒かったのだろうか。せっかく登頂したのだからもっとゆっくり山頂風景を楽しめばよいのにと思ってしまったが、きっと事情があるのでしょう。
次に現れた登山者は、リュックは大型で一目で縦走すると分かる出で立ち。山頂写真を撮ると、足早に名前だけかわいい兎岳方面へ下りて行った。すごいな、私にはできない。是非とも記録を上げてもらいたい。

EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 24mm f11 1/200sec ISO100 PLフィルター

09:00 山頂風景を撮り尽くしたので下山開始。今日のミッションはあと1つ残っている。今日は大晦日なので、家族と一緒に年越しそばを食べることだ。そう思うととんでもない山奥にいるものだと改めて思う。この時点で予定より1時間のビハインド。急いで下りねば。
雪稜の核心部はもう一度通っているため、不安はまったくない。下りは上りであまり有効活用できなかったピッケルをしまって、ウィペット×2で通過した。このウィペットの石突がかなり鋭く長いので、雪面を非常によく捉える。まずは滑落を防止するという段階で、バランスの保持にかなり有効だと自分は感じている。

心は駆け下りたい気持ちでいっぱいなのだが、昨日の登りで完全にバテたせいか、今日もスピードがまったく上がらない。今日唯一の東尾根からの登山者に追い抜かれる。

11:10 幕営地である白蓬ノ頭に戻って、昼食&テント撤収。
12:40 下り分のエネルギーを十分補充して、下山開始。気持ちは軽いが体は重い。
今日は誰も登山者は上がってこなかった。ジャンクションピークまでは今日も酷い踏み抜き。下りで荷重が乗っているので容赦なく股まで踏み抜く。
ジャンクションピークからは、さらに傾斜が急になる分だけ早く標高を下げれるのと、まだ十分に雪が残ってくれているので助かる。膝に優しいのと、雪とトレースが残っている限り道に迷わずに済むからだ。南斜面は急速に雪解けが進んで、部分的に地面が露出してきていたが、聖沢登山口まで雪は続いてくれた。

白蓬ノ頭 12:40 ~ 15:50 聖沢登山口 16:20 ~ 17:50畑薙ダムゲート前

16:20 準備を整えて、MTBでのダウンヒル開始。復路はよりMTBに乗れる時間が長いので楽。MTBを分解して車に積み込む作業は面倒なうえ、車中での寝るスペースがなくなったりするデメリットもあるが、山中でのMTBによるダウンヒルは非常に楽しい。この爽快感は病みつきになり、登山の醍醐味の1つとも今では思える。

17:50 1時間20分で沼平ゲート着。3つ目のミッションの家族との年越しそばも、年末の夜間で誰も通らない70kmの峠道を快適に運転して間に合うことができた。
長い林道歩きに2,000mに及ぶ標高差、極寒のテント泊に細い雪稜と、困難は多いがその分の達成感も大きい聖岳東尾根。今回は雪は少なかったが、また雪たっぷりのときに来てみたいが。

■ 使用レンズ(備忘)

① 24-70mmF2.8:奥聖岳や赤石岳等を狙うには、この焦点距離がぴったり。
② 100-400mmF5.6-8:富士山等をアップで撮りたい場合のみ(以外は不要)。
~~~(未使用レンズ)~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
➂ 14-35mmF4:軽量化のため不所持。特に広く撮るものは少ない。
④ 100-500mmF4.5-7.1:重すぎて担ぎ上げるのは無理。

聖岳 山行記録一覧

2010年07月16日~19日 ■■■■☒『南アルプス新南部縦走』
2022年12月30日~31日 ■■■■☒『聖岳_冬 東尾根 ~憧れの雪山へ!けど雪少なし...~』

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