山岳写真家からサイクリストへ浮気しつつある今日この頃。ひょんな赤石岳冬季登山から自転車の趣味に目覚めて、いずれ来たいと思っていた”ヒルクライムの聖地”と呼ばれる乗鞍岳へ。自転車を持って早くももう訪れてしまった。
季節を変え、もう10回以上登山しに来ているので、やや新鮮味はないんだけど、はたして自転車で登る乗鞍岳はどうでしょう。
乗鞍ヒルライムでの、電動マウンテンバイクの威力を試す時が来た。
走行ルート+登山ルート
自転車ヒルクライム+乗鞍岳登山のデータ。ダウンヒルのログがところどころ飛んでしまっている。
走行山行記録(2023年7月17日)
乗鞍エコーラインHC(三本滝レストハウス 10:00 ~ 11:50 畳平)
EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 34mm f8 1/80sec ISO100 PLフィルター
乗鞍ヒルクライムのスタート地点は、通常は乗鞍観光センターから。
10:00 一山目の霧ヶ峰からの移動で時間が遅かったので、車で行ける最奥の、ゲートのある三本滝駐車場からスタートすることに。乗鞍観光センター~三本滝駐車場の区間は展望のない樹林帯なので、フルにヒルクライムを堪能したい人でなければ、すっ飛ばしてもよいかもしれません。
上半身は自転車用ヘルメットにサイクルジャージを着つつ、下半身はサポートタイツに膝サポーターに履きつ潰したトレランシューズにダブルストック、そしていつもの写真機材を背負うという、サイクリストと登山者の装備を合わせた微妙な恰好でスタート。登山と自転車、本気で両方やっている人って、そうは多くはないはず。
トランポしてきた自転車は、スペシャライズドのe-MTB、LEVO SL。アルミモデルを購入したけれど重たすぎてちょっぴり後悔しているのと、アルミ=安いイメージと色が緑ザクに似ていることから、自分はコイツを「ザク」と呼んでいる(以後「ザク」と呼ぶ)。w
標高差あるしヒルクライムの後の登山もあるので、楽に登らせてもらいます。登山アプローチの目的でeMTB買ったのだから。
本当は”ヒルクライムの聖地”と呼ばれる乗鞍岳は、ロードバイクで走ってみたいけれどロードバイク持ってないので、いつかきたるロードバイクでの走行前にe-MTBで様子を見ておく、といったところでしょうか。
準備を整えてさぁスタート。監視員さんがいて送り出してくれる。ここで写真を撮っている間に、3人組のローディーに抜かされる。この先頂上までずっと似たようなペースで走ることに。
ゲート前に「夜間通行止」の看板あり。夜間通行止めでなければ、夜間にヒルクライムとナイトハイクして山頂朝焼けという、いつものナイトハイク+朝焼け撮影の計画が取れるのに残念。今日も当初はその予定だったのだけど、夜間通行止めを知って、霧ヶ峰と順序を入れ替えて朝焼けは霧ヶ峰で撮ってきた。
スタートしてすぐはスキー場を登っていく。眼下には三本滝レストハウスが小さく見える。三本滝レストハウスからスタートすると、既に樹林帯を抜けて視界が開けているので、気持ちがいい。
ちょこちょこ写真を撮るために止まっているので、三本滝ゲートで抜かされた3人組のローディーにすぐに追いついてしまう。e-MTBの方がペースは速いが、抜かしてまで早いペースで走りたいわけでもなく、どうせ止まって写真を多く撮るので前に出てもまた抜かれることになる。ゆっくり邪魔にならない程度の距離を空けて着いていく。
緑と青と白の3色だけの高原の夏景色。今日は猛暑日だけど、標高が高いので適度に暑いくらいで気持ちがいい。
いや、もう最高の景色になってきた。今までの登山で、バスの中からしか見てなかったなんてもったいない!このお三方がかなりの脚力の持ち主で、早い早い。後ろからついていくと、他のサイクリストをことごとく抜いていく。このお三方は誰にも抜かれていなかったので、本日最強のローディーといえる。
はるか遠くに剣ヶ峰。まだあれだけの距離と標高差があるなんて楽しすぎる。「楽しい」とか言ってられるのもe-MTBだから。この長く続く上り坂、人力だったら「楽しい」んでしょうけれど「辛い」も入る気がする。
上りはどんどん展望が開けていくので、ワクワクする。たまに立ち止まって、写真撮影。まだ穂高連峰は現れない。
11:00 休憩ポイントの位ヶ原山荘に到着。ここから顔をのぞかせる乗鞍岳が大きすぎる!
クマちゃんがお出迎え。写真撮って先を急ぐ。今日は乗鞍岳登山もするので、遅いスタートではあるものの、なんとか雲がかかる前に登りたい。
あそこを行くのね。この標高差なかなか。楽しみがまだたくさんあるってこと。
EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 34mm f11 1/80sec ISO100 PLフィルター
車両通行止めなので一般車は通らず、車を気にせず走れるが、バスは行き来するのでご注意を。安全のためにフロントライトは付けておいた方がよいと思う。今日は急いで出発して車の中にライトを置き忘れてきてしまった、反省。特に樹林帯の中だと、相手からは自転車は見えずらい。
マイカー規制される前に車や大型二輪で何度も登ったことがあるけれど、自転車で味わう景色はそれとは比較にならないほど味わい深い。
完全な森林限界になって、最高の景色が展開し始める。他のサイクリストたちはみんな「ハァハァ」と粗い呼吸をしてるけれど、自分ラクラク。抜くのは申し訳ない感が若干あるけれど、電動アシストと人力でどうしようもない速度差が出てしまうので、抜かさせてもらう。
だんだん近づいてくる乗鞍岳。穂高連峰を望みながら天空の快走路。
このあたりで高山植物を撮るためのマクロレンズを車に置いてきたのに気づく。もう戻れないので、このまま進む。今までコマクサとかたくさん撮ってきたので、今日はもう高山植物撮影はよしとする。
途中で小滝が現れたので写真を撮ったりと。電動アシストだと、ヒルクライムというよりゆるポタに近い感じになる。全然余裕あり。
まさに雲上のサイクリングコース。素敵。肩の小屋口まで来た。残りはあともう少し。
冬山登山では、このあたりから肩の小屋までの区間が、風の通り道で近いようでなかなか辿り着かないとても厳しい区間。冬山登山での苦しい状況が思い出される。
上部の雪渓では、大勢のスキーヤーが夏スキーを楽しんでいる。自分もスキーも好きだしバックカントリスキーも少しやるけれど、夏にスキー板を持ってここで滑るほどの情熱はないかも。スキー熱に感心。
あのコーナーを曲がるとそろそろ終わりの雰囲気。「もう終わってしまう...」というちょっぴり残念感。
11:30 県境ゲートにゴーーール!途中写真を撮りながらで、1時間半で畳平へ到着。電動アシストで楽をしつつ景色と写真を存分に楽しむという、なんだかとても贅沢な時間だった。サイクリストもいっぱい。
”ヒルクライムの聖地”と呼ばれるのに納得。今日は電動アシストで様子見だったけれど、今度は人力のロードバイクで走ってみたい。また季節を変えて秋の紅葉の時期に登ったら、それまた絶景極上のサイクリングなのは間違いない。
EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 28mm f11 1/80sec ISO100 PLフィルター
忘れないうちに記念写真。やっぱりゆるポタバイクにはスタンドが付いていると楽。隣には同じくe-MTB。さりげなく並ぶ形で撮らせてもらった。
お花畑を見ながら、鶴ヶ池の周囲を回って畳平へ。
11:50 夏雲湧く畳平。夏景色って感じ。ここで第一部のヒルクライムのパートは終了。いや~、もうお腹いっぱいかも。濃かった。
乗鞍岳登山(12:00~14:50)
EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 33mm f11 1/80sec ISO100 PLフィルター
12:00 目的の1つだったヒルクライムだけでもうお腹いっぱい。何度もピークを踏んでいる乗鞍岳のピークハントはやめてもよいのだけれど、晴れていることだしせっかくなので登ることに。黄色いお花畑はちょっとわかりづらい。振り返っての畳平。アルペンムードいっぱい。
お花畑咲く、複雑な地形を進む。不消ヶ池に残る雪渓。
畳平~肩の小屋までの30分の水平移動がちょっとかったるい。この区間、電動マウンテンバイクであれば楽に楽しく走れるのに...、とかとか思いながらひたすら歩く。
雪渓で夏スキー。斜度としては結構急かも。そこまでのスキーに対するパワーが自分にはない。
12:30 肩の小屋着。剣ヶ峰がまで大きく近づいてくる。初めてのバックカントリーで脚折って遭難しかけたり、いろいろ感慨深い乗鞍岳。また来てしまった。冬、風の通り道で爆風だった場所。冬はどこで休憩取ればいいんでしょうね。
肩の小屋から乗鞍岳山頂まで40分。ヒルクライムで脚を使ったのか、それなりにしんどい。冬山登山の重装備に比べれば、空気のように軽い装備しか持っていないのに、ゴロゴロした石が歩きづらく、冬の乗鞍岳の方が登りやすいのではないか?とか思ってしまう。ようやく山頂を捉えた。あともう少し。
13:20 乗鞍岳山頂着。何度も見なれた山頂。厳冬期に山頂から見た朝焼け穂高連峰の光景が思い出される。もうあれを上回る山行はできない気がする。
EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 24mm f11 1/60sec ISO100 PLフィルター
乗鞍岳山頂には本宮神社が立つ。山頂に立つこの小屋が、乗鞍岳冬季登山の難易度とリスクを大幅に低減してくれていると身をもって確信している。氷点下18度を下回る標高3,000mの爆風地帯に設けられたこの無風スポットが、どれだけ有難かったことか。有難やありがたや。
ちょうど雲から姿を現す穂高連峰。奥穂高。多くの登山者で賑わっているのでしょう。望遠レンズでもさすがに人は見えない。
老朽化が目立つ観測所。さらにボロくなったんじゃないかな。w 雪渓残る権現池と雲。いいなぁ~。
午後を回り、登山者も少なくなってきた山頂を後にする。ここまで来て驚いたことに、登山者だけでなく相当数のサイクリスト達も山頂まで登ってきている。
登山者かサイクリストかの違いは、自転車用のヘルメットをかぶり、膝上までのサイクルジャージ(ピチピチタイツ)を履いているので一目でわかる。標高差1,200mのヒルクライムをした後に登頂してしまうサイクリストがこれだけ多いとは思わなかった。
素早く下山していると、前方には2人のサイクリストが下山している。軽やかな足取りで大岩の上をバランスよく滑らかに下りてゆく。速度を競うわけではないが、自分が頑張って早く下りるペースと同等かちょっと早いペース。ちぎられそうになった。恐るべしサイクリスト...。いや待てよ、久しぶりの登山で自分が衰えたのか。いつもの重い撮影機材のせいということにしておこう。w
肩の小屋でしばし休憩。足元にいた小鳥がストックにとまった。調子が悪いようで、うまく飛べずこの距離でも逃げて行かない。頑張って回復してほしい。
眼下にはこれからダウンヒルするお楽しみのうねうねエコーラインが見える。
コマクサはたくさん咲いていた。以前にも撮っているので今日は簡単に。マクロレンズも忘れてきたので、適当な花を探してあっさりと。
県境ゲートまで戻ってくると、なんと自分のと同じザクが2機も。さすが量産型!いや、ゴメンナサイ。同じe-MTBが3台なんて、あまり見ない光景。
お花畑を愛でながら。あともう少しで畳平。だんだん雲が優勢になってきたけれど、もう下山したから雨さえ降らなければOK!
乗鞍エコーラインDH(畳平 15:00 ~ 16:00 三本滝レストハウス)
EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 24mm f11 1/60sec ISO100 PLフィルター
15:00 往復2時間半で登山を終え、再びの畳平。畳平には下りのバス待ちの長い列ができているけれど、こちらは自転車なので関係なし。機動力のある自転車は、まさに魔法の翼という感じ。いいな、この自由感!登山の後の自転車の軽快さがたまらない。
岐阜県側の乗鞍スカイラインは閉鎖中。開通したら岐阜県側からヒルクライムする、という楽しみ方もある。もう数十年、岐阜県側の乗鞍スカイラインには入っていない。ああ、名残惜しい畳平。去りがたし。
自転車にも通行時間に制限があるのが残念。自転車で自由に行き来したい。
んんっ!!!なんとママチャリ発見!ママチャリでここまで登ってきたのか!?行きにはなかったので、そういうことになる。ある一番意味ガチな人かも...。
県境からダウンヒル開始。こんな山岳道路を走れるなんて、なんて贅沢!しかもタダ。
エコーラインのように長いストレートがない場合、下りは自動車より自転車の方が速度が乗って早い。下りてゆくバスを先に行かせて、追いつかないように時間を空けて出発する。ダウンヒルの前に、改めてヒャッホー区間を見下ろす。w
ダウンヒルは爽快すぎる!まじヒャッホーだった。一気に下るのがもったいないので、ちょっと止まって味わいながら。こんなときは、スタンドが付けられるアルミモデルもよいと思える。
再びヒャッホー開始!まだスキーやってる!楽しみ方は人さまざま。ゆっくり走っても下りコーナーの練習にはならないので、すっ飛ばして下りてきてしまった。あっちゅーま。雲に向かって風を切って下りてゆく。速度は出るが、e-MTBのアルミフレーム剛性が高すぎて、不安感は全くない。
途中穂高連峰が見えたり楽しすぎる。標高を落としてしまうのがもったいない。ここも秋になると、錦繍でとても美しくなるポイント。
位置エネルギーを大事に運動エネルギーに変えながら、あっという間に位ヶ原山荘。さよなら、クマさん。また秋に来ます。
行きに撮れなかった、道端のユリを撮りながら。
下から見上げる乗鞍岳は壁のようにそそり立っている。あそこまで人力で登ったと思うと達成感が凄い。いや、思い返せば人力ではなく半分くらい電動だった。w またまた思い返せば、冬はもっと下のスキー場から、重荷を背負って登頂しているのだった。夏と冬の差が激しすぎて笑える。
16:00 三本滝レストハウス着。
自転車に登山を合わせた、ヒルクライム+登山+ダウンヒル。バス代往復3,400円を浮かせられるうえ三度楽しい、なんとも贅沢な遊びだった。季節を変えてもう行き尽くしたと思っていた乗鞍岳で、こんな楽しみ方があったなんて。今度は涼しく美しい紅葉の時期に、人力ロードバイクでヒルクライムしてみたい。
e-MTBは使えるのか?
e-MTBの威力
結論から言うと、乗鞍エコーラインのように勾配が急な長い登りが続く場合、電動アシストの威力は絶大です。
分かりやすい比較事象で言うと、他の人力自転車に抜かれることはまずないです。
今回はスタート地点の三本滝レストハウスで3人組のローディーさんと一緒にスタート。このお三方が他のサイクリストをことごとく抜いていき、ゴールの県境まで誰にも抜かれなかったので、本日最強のローディーさん達と言える。
ペースを比較すると、自分は写真を撮るたびに頻繁に止まるので当然離されるけれど、電動アシストの力ですぐに追いついてしまう、という繰り返し。
電動アシストのレベルは、基本3段階中の「中」を使用。最強のターボモードにすると当然楽なのだが、ある程度ペダルに荷重をかけてペダリングしないと、荷重がお尻に乗ってしまってお尻が痛くなってしまう、という側面もあり。
電動アシストの威力は、アシストレベル「中」でやや軽くペダリングして、この最強ローディーさん達と同じペース。最強のターボモードにすると、一瞬で抜いて引き離せるくらいの威力。最後の県境ゲート直前では、後ろに付いていると気にされるだろうと思って、写真を撮るポイントもなくなってきたので一気に抜かさせてもらった。
三本滝レストハウスから畳平までの標高差900mを登っても、心配持久力と脚筋力はそれほど消耗しなかった。最強のターボモードを多用していれば、より軽減されたのは確実。
当初のe-MTBを購入した「登山のために必要な心配持久力と脚筋力を、アプローチで可能な限り消耗させない」という登山アプローチの使用目的からすれば、e-MTBは絶大な威力を発揮することが確かめられた。ちょっと安心(笑)。
ただ、自転車でのアプローチが必要な山が多いかと言ったら少ない、という点がもったいないところか。
e-MTBの楽しさ
電動アシストの力を借りて登って楽しいのか?という疑問もあった。
実際試してみると、これまたすごい楽しい。”楽に早く移動できる”というのが乗り物の楽しさの本質なんでしょう。
もちろん体を鍛えて人力で登ってこそ、という喜びも当然あるでしょうけれど、eバイクの魅力は、「楽(ラク)=楽しい」、なんだと思った。
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