油圧ディスクブレーキのフル内装モデルを組み立てる上で、一番厄介なのはブレーキオイルのブリーディング(エア抜き)だと思っていた。
ところが、その前段階で大きな壁にぶつかってしまった。ブレーキキャリパーとSTIレバーも新しくするから、ブレーキラインを一度切り離す必要がある。切り離した後は、古いブレーキホースを再利用して新しいパーツを取り付ければいい、と本気で思っていたのだ。
ところが、調べながら作業を進めていくと、ブレーキキャリパーとSTIレバーをブレーキホースに接続する部品、オリーブとインサートは再利用不可とのこと。ここらへんから、自分の超ド級初心者ぶりがバレてしまうが、初めてのことだから仕方ない。
要するに、ブレーキホースの両端を切断する必要があり、その分ホースが短くなるため、ブレーキホースも新しいものに交換しなければならないという総取り換えが必要になるということだ。
両端を1cmずつ、合計2cm短くなったブレーキホースは、もともとかなり長さに余裕を持たせていなければ再利用は難しいのではないだろか?再接続した結果「やっぱり短かった…」となると、精神的なダメージも大きい。
厄介なブリーディングさえ乗り切れば...、と思っていたのに、ケーブルフル内装のフレームとステム一体型ハンドルへブレーキホースを通すという最難関の作業がもう一つ加わってしまった。こうなると、もはやバラ完とほぼ同じではないか!
でも、この難関を乗り越えなければ、愛車のピナ子(ピナレロF5のこと)には乗れない。一度始めたコンポーネント載せ替え作業は、最後までやり通さなければならない!
しかし、素人で無知なぶん、良く言えば柔軟だ。なんと試行錯誤しているうちに、100%確実に成功するルーティング方法を編み出してしまった!ここでは、そのルーティング方法を紹介しよう。
作業手順と難易度
油圧ブレーキホースルーティング(フレーム&Fフォーク)
②リアブレーキホースのフレーム内ルーティング
➂フロントブレーキホースのフロントフォーク内ルーティング
こで紹介しているルーティング方法は、ルーティングを確実に行える反面、新旧ブレーキホースを連結させる作業に時間がかかり、手先の器用さも求められる。
作業レベルはLV4(5段階中)。これは最難関作業の一つと言っていいだろう。ただ、この工程でしっかりとした連結部分さえ作ってしまえば、この後のさらに難易度の高いステム一体型ハンドルへのルーティング作業は、もうほぼ終わったようなものだ。
油圧ブレーキのフル内装も、恐れるに足らず!
油圧ブレーキホースルーティング作業(LV4)
これはぶった切るしかないか...
古いブレーキホースのインサートと接続により変形したオリーブ。
使用前のオリーブは綺麗な丸型をしている。オリーブは、ブレーキホースとブレーキキャリパーやSTIレバーとを接続する際に、圧縮されて変形することでシール(密閉)する役割を担っている。そのため、一度締め付けて圧縮されたオリーブは元の形に戻らず、再利用するとオイル漏れやブレーキ不良の原因となる。
まさか再利用できないなんて。もうぶった切るしかないな…。
再利用できないなら仕方ない。フロントとリアのブレーキホースの両端をぶった切ってしまった。当然、ブレーキホースも短くなるので再利用はできない。
でも、ここで古いブレーキホースを抜いてはいけないのだ!このフレームやフロントフォーク、ステム一体型ハンドルに既に通っている古いブレーキホースがガイドワイヤーになり命綱なのだ。
ルーティング方法を模索する
インサート挿入済み。これではルーティングできない...。
仕方がないので、インサート部分をぶった切ってしまった。
ルーティングの方法を調べてみると、ブレーキホースの中にシフターのインナーケーブルを入れる方法や、専用コネクタで連結する方法などが出てくる。でも、自分の状況ではどうもうまくいくイメージが湧かない。
まず、今回購入したブレーキキャリパーは「イージージョイントシステム」というもの。ブレーキキャリパーとブレーキホースがすでに繋がっていて、末端にはインサートが圧入済みでオイルも充填されている。この末端に、ルーティング用のケーブルやコネクタは接続できない。この状態で、どうやってフル内装のフレームやステム一体型ハンドルに通すのだろう?
しかも、変速は電動Di2だからインナーケーブルなんて持っていない。ルーティングキットの専用コネクタも、うまい具合の物が入っていなさそうだし、値段も高い。今回のコンポ載せ替えは、「工賃は自分でやるからタダ、工具は最低限」が方針だ。
ルーティングの要素を改めて考えてみる。
今回はバラ完じゃないので、すでに古いブレーキホースはフレーム内を通っている。シンプルに考えれば、この古いホースに新しいホースを連結させて引っ張っていけばうまくいくはずだ。
● 油圧ブレーキホースはかなり硬くて曲がらない。
● ルーティング中に連結部分が外れたら、その時点でアウト。
● フレーム内やフォーク、そしてこの後の一番の難関であるステム一体型ハンドルの中は、狭いうえにバリなどが残っていることもある。ほんのわずかな穴を通していくので、連結部分がホースの直径より少しでも出っ張ったり凹んだりしても引っかかってうまくいかない。
要するに、新旧ブレーキホースの両端を繋ぐ連結部分が一番重要なのだ。
連結部分に求められる要素は、「引っ張っても外れない強固な結合」「段差がなくホースの直径で結合されること」「そして折れ曲がらないこと」だ。
この要素を満たすにはどうすればいいか?
考えていたら閃いた。「新旧ブレーキホースの先端に穴を開けて、糸を通してつなげればいいんじゃないか?」という考えに至った。
電動ドリルは持っている。小さな穴を開けるドリル刃は持っていない(→Amazonでポチって、明日届くように手配した)。糸は家にあった釣り糸で代用できる。
思いついたこの連結方法を、最小コストで試してみることにした。
新旧ブレーキホースの連結
まずは新旧ブレーキホースの両端に、糸を通すための穴を開ける必要がある。Amazonで買ったドリル刃が翌日に届いたので、さっそく作業再開!
ブレーキホースは硬いので、ふにゃることなくきれいに穴を開けることができた。
連結のコツは、ただ糸で連結するだけだと、カーブで折れ曲がってしまって通らないことが判明。連結部分を糸で外れなくすると同時に、折れ曲がらないようにしなければならない。
そこで、ブレーキホースの穴に爪楊枝を適当な長さに折って刺してみたが、力がかかって折れてしまった。そこで、古いブレーキホースの末端についていたインサートの頭を切断して棒状にし、連結部に差し込むと、十分な強度が得られて折れ曲がらなくなった。
インサートを両側から押し込んで連結し、新旧ブレーキホースの両端に開けた穴に釣り糸を2〜3重に通してしっかりと結ぶ。これで新旧ブレーキホースが強固に連結された。
力をかけても外れず、折れ曲がらず、釣り糸の結び目の分だけ段差ができるが、そのくらいは許容範囲だろう。これで完璧だ!いざ、ブレーキホースのルーティングへ。
ブレーキホースルーティング(F/R)
イージージョイントシステムは、すでに片方にブレーキキャリパーが連結されている。そのため、チェーンステー側から古いブレーキホースをたどって、フレーム内部を通していく。いざ、フレーム内部へ!
チェーンステー内にバリがあったが、その狭い空間に引っかかることなく、連結部がヘッドチューブの穴から顔を出した。やったね!リア側は成功だ!フレーム内でブレーキホースが動いてカタカタ音が鳴らないように、筒状の音消しチューブが入っているので、忘れずにフレーム内に押し込む。
左側に出ているのはフロント側。途中で内部に挿入していた爪楊枝の軸が折れてしまったが、なんとかフロント側も貫通した。
フレーム内には2箇所、ブレーキホースを固定する爪があるので、こちらにも忘れずに固定しておく。
確かに、強固な連結部分を作るための下準備は手間がかかった。だが、この作業さえできてしまえば、ルーティング作業は苦労なし。われながらかなり良い方法だと思う。
当初「どうするんだ、これ?」と思ったルーティング作業だったが、100%確実に通せる画期的な方法を開発してしまった。恐るべし、初心者…というところか(笑)。
これでフレームとフロントフォークにそれぞれブレーキホースが通った。あとは、ルーティング作業の最難関、ステム一体型ハンドルに通すだけだ。
その前に、フロントブレーキホースがフォーク内を通って、フロントフォークが組み立てられるようになったので、ヘッドベアリングの清掃とグリスアップを行っておこう。
≪コンポ載せ替え⑦≫ ヘッドベアリング清掃&グリスアップ ~購入後1年4か月ぶりに開けてみると...~、へ続く。
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≪コンポ載せ替え⑦≫ ヘッドベアリングの清掃 ~購入後1年4ヶ月ぶりに開けてみると...~
ピナレロF5のコンポーネント載せ替え作業、工程⑦はヘッドベアリングの清掃だ。 当初、ブレーキキャリパーとSTIレバーだけを交換し、ブレーキホースはそのまま再利用できるだろうと楽観的に考えていた(ここら ...
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