南アルプス 関東・信越

南アルプスの秘瀑巡り≪後編≫_桑の木沢黒戸噴水滝 ~圧倒的な存在感を放つヒョングリ滝を訪れる~

投稿日:2019年6月22日 更新日:

南アルプスの奥地に「篠沢大滝」という幻の滝があるらしい。
曇り空が続く梅雨時がちょうどいい。
以前から気になっていながら行けていなかった篠沢大滝を、桑の木沢の黒戸噴水滝とあわせて行ってきました。

ルート


【前編:篠沢大滝】篠沢橋 10:20 ⇒ 10:45 桑木沢探勝路 10:50 ⇒ 12:00 篠沢大滝 12:30 ⇒ 13:00 桑木沢探勝路
【後編:桑の木沢】13:00 桑木沢探勝路 ⇒ 16:00 黒戸噴水滝 16:30 ⇒ 17:40桑木沢探勝路 17:45 ⇒ 18:10篠沢橋

山行記録 2019年6月22日(13:00~18:10)

桑の木沢は以前に一度、友人と来たことがある。
もうだいぶ昔のことで、どこまで行ったのか、最奥の黒戸噴水滝まで行ったのかも忘れてしまった。
13:00 まぁ行けばわかるさ、ということで篠沢大滝に引き続き桑の木沢へ入渓。

桑の木沢に入ると、鬱蒼としていて暗い。
光りが届きにくいためか、渓流周りをコケゴケが覆い尽くしている。
渓相は尾白川渓谷や石空渓谷等の南アルプスの渓谷に共通する白い花崗岩の基調ですが、だいぶ印象が違います。

「桑の木沢探勝路」とされながらも、近年の記録もなくだいぶ前の時点から荒れているとの情報通り荒れている。
情報だと赤テープが随所にあるとのことでしたが、赤テープの色も退色して目立ちません。
入渓する人もいないためか、踏み後もよく分からないといった感じです。
ただ桑の木沢で共通するのが、渓流沿いを行き、渓流から大きく離れて高巻くところはありません。
渓流から大きく離れることがあれば間違っているので、勇気を出して来た道を戻りましょう。

桑の木沢分岐~桑の木滝

EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 35mm f11 1/0.6sec ISO100 PLフィルター

桑の木沢を軽快に進んでいくと、まず第一のポイントである桑の木の滝が現れます。
遊歩道下に桑の木滝を見ることができます。
桑の木沢は、共通して水量も多くなく、渓流の深さは浅いので、登山靴でも渡渉ができないところはほぼありません。
石伝いに渡渉して行けば、桑の木の滝の真正面まで行くことができます。
桑の木滝は落差10mと比較的小さいですが、黒戸噴水滝を除いて小滝が連続する桑の木沢の滝群においては前半のハイライトでしょうか。
真正面から見上げると新緑と絡んでみたり、斜めから手前の渓流を入れてみたりと、なかなか綺麗な滝です。

桑の木滝から上流へは、桑の木滝のすぐ上部にある右岸の鉄製の階段を進んで行きます。
尾根を上がってゆくような踏み後っぽいのも見られましたが、間違いです。
桑の木の沢は渓流から大きく外れることはありません。

黄門の滝/三条の滝

EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 24mm f16 1.3sec ISO100 PLフィルター

桑の木滝から少し歩くと次は黄門の滝です。
黄門の滝は、小さな滝壺を抱える落差5mの小さなスッキリした滝です。
暗く鬱蒼としている桑の木沢の中で、やや開けて明るい印象でいい感じです。
黄門の滝のすぐ横に鉄梯子があり、鉄梯子を登って次へ進みます。

ここから上部はさらに流れが複雑になり徒渉も多くなってきます。
ここまでくると渓流歩きというか完全な沢歩きです。
水量が少なく渓流の深さも浅いので、通常の登山靴でもどこでも徒渉が可能ですが、全体として苔むしていて滑りやすい。
前半は大丈夫だったので登山靴で通してしまいましたが、後から思えば早々にフェルト底の沢靴に替えておけばよかった。
滑りやすい足元に注意しながら遡行していくのは、動作的にも精神的にも非常に疲れます。

黄門の滝からしばらく歩くと、くの字の滝っぽいのが現れます。
最初はこの滝をくの字の滝と思い込んでいましたが、全然違いました。
三条の滝です。

完全に沢登っぽくなってきました。
おいおい、どこから登るのかな?
どうやら左岸から上るようです。
滝のすぐ脇の濡れた土付き斜面を登るので、注意が必要です。

三条の滝を超えて進むと、倒木が倒れ込んでいる。
ゔぁ~~~。
倒木を跨いで跨いで、さらに跨いで、おまけに苔付きの石は滑りやすいときたもんだ。
いい加減に面倒くさくなってくると、少し綺麗な淵が現れたり。

□ くの字の滝

EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 30mm f16 2.5sec ISO100 PLフィルター

流木に塞がれ、だいぶ時間を掛けながら進むと、今度こそ本当のくの字の滝が現れます。
くの字の滝と言っても、下流側から見れば逆くの字の滝ですが。
この滝も規模的に大きくはないですが、白い岸壁と周囲の新緑も絡んで全体的に綺麗な滝です。
桑の木沢の中盤のハイライトといったところでしょうか。
くの字の滝のすぐ上の左岸を巻いて上流に向かいと、鉄梯子が現れてホッとする。

小滝を超えて進むと、だんだんと沢が険悪になってくる。
もうボッコボコ。
いい加減飽きてきた。
お、また鉄梯子が現れた。
短めの鉄梯子を上って右の方向を切ると、ああ~、続く鉄梯子が壊れてるよ。
中段が抜けていて上段の手すりが内側に折れてますが、強度的には問題なく通過できました。
もったいない。せっかくここまで頑丈な鉄梯子を設けたのに。

前衛滝の前の滝/前衛の滝

EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 24mm f16 1.3sec ISO100 PLフィルター

沢はさらに荒れて、流木やら倒木やらが道を塞ぐ。
足元に注意してながら倒木やらを乗り越えて行かなければならないため、後半スピードが極端に落ちてくる。
あまり見ごたえのない小滝ばかりが連続し、気分的のもだいぶ飽きてきた。
滝は好きですが、あまり写真映えのしないしょぼい滝はもう十分という感じです。

そんな飽き気味疲れ気味な感じで進んで行くと、荒れた沢筋の向こうに一筋の滝が落ちる。
ラスボスが近い感じを伺わせるなかなかいい雰囲気ですが、右岸も左岸も巻けそうもない。
どうやって進むんだよ?ってあれか!

山梨県の渓谷道に共通する赤い鉄梯子が左岸にかかりますが、それをぶち壊すように大きな流木がめり込んでいる。
どうやったら流木がその高さの階段に刺さるのだろう?
激しすぎる。。。
やはり沢筋の渓谷道を維持するのは大変なのでしょう。
大きな流木が突き刺さった鉄梯子を登ってゆくが、流木がやたら滑る。
流木に体重をかけた両足のステップが抜け、今日一番のヒヤリハットでした。
一応両足のステップが抜けても、ホールドが十分だったので、両手2本で体重は支えられましたが。

この日は蒸し暑くて沢沿いでも涼しくない。
持参した水が心もとなくなってきたので、脇から流れ込む沢水を手にとって飲んでみる。
美味しくな~~~い。
ここ桑の木沢は、尾白川渓谷や石空渓谷の「南アルプスの天然水」で有名なエリアのはずなんですけど(笑)。

流木が刺さって破壊された鉄梯子を登って進むと、一枚岩を滑らかに水を落とす前衛滝が現れます。
お、これはいい感じですね~。
前衛滝の奥には広い空間が広がり、新緑の向こうに少しだけ姿を見せる黒戸噴水滝の流身が見える神秘的な光景です。

桑の木沢のしょぼい滝と行く手を遮る流木等にいい加減うんざりしてましたが、様相が一変。
苔に覆われたつるつるの一枚岩を上り、黒戸噴水滝に近づきます。

黒戸噴水滝(16:00~16:30)

EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 30mm f11 1.6sec ISO100 PLフィルター

16:00 入渓して3時間で、ようやく黒戸噴水滝にたどり着きました。
距離的には大したことないんですが、沢靴じゃないのと沢が荒れていて木々を掻き分けて進む必要があるため、さらに滝が現れるごとに三脚を立てていたら、予想以上に時間がかかってしまいました。

周囲は50m以上の岸壁に囲まれた広い空間になっている。
今までの暗い空間から解放され、無事目的地に到達したことから、余計に黒戸噴水滝のインパクトが大きい。
下からだと下段2段しか見えなく、形はいいとは言えないけれども落差は70mもある。
ここに来るまでの困難さと周囲の荒々しさと相まって感動的である。
岸壁に生える緑が多く、下から透かせて見る緑が非常に綺麗。
秋の紅葉の時期も綺麗なのでしょうか?

黒戸噴水滝は名前の通り、最上段が水を跳ね上げている滝です。
下からは緑に遮られて僅かながらその様子を確認することができます。
できれば最上段脇まで行ってその様子を写真に納めたいところですが、すでにもう16時半。
時間もなければ、倒木等を掻き分けてここまで来たので、気持ち的にもう結構参っている。
そもそも周囲の50mを超える岸壁を登ろうとしても、登れる所も見当たらない。
黒戸噴水滝、ここまでで十分です。

帰りは来た道を帰るだけ。
既にルートは分かっているので、何も怖いところはありません。
帰りはサクサクっと下って、桑の木沢橋の駐車場まで。
今日はダブルメインの篠沢大滝と黒戸噴水滝の2つを無事行けてよかったです。
2つの滝とも素晴らしいので、南アルプスの懐の深さを感じながらの滝巡り、お勧めです。

今日の必須アイテム

桑の木沢の渓流は浅く、渡渉を何度も繰り返しますが、ハイカットの登山靴でも黒戸噴水滝まで行けます。
ただ、桑の木沢の苔むした渓流は非常に滑るので、滑る足元に注意しながら歩くのは精神的に非常に疲れました。
桑の木滝あたりから沢靴にした方が、よっぽど楽に安全に早く行動できます。

桑の木沢は全般的に苔に覆われた滑りやすい渓谷です。
渡渉も何度となく繰り返すので、バランスを取るためダブルストックがあると非常に重宝します。
フェルト底の沢靴でなく登山靴に入渓する場合には必須になります。

MAMMUT(マムート) Wall Rider 56-61cm chill 2220-00140

もしものとき用です。
滑落の危険や落石の直撃を受ける沢筋を行く沢登りでは、言うまでもなく必須です。

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