北アルプス

〔100名山〕白馬岳 冬_栂池~登頂チャンスも爆風にリュック飛ばされ幕~

かなり信頼できそうな晴れ予報が土曜日に付いた。
これは昨年から狙っていた白馬岳の野望実現のときか!
狙うは以下の3つ。
①2日目_小蓮華山からの朝焼けの白馬三山
②2日目_白馬岳山頂からの早い午前中の剱岳
③1日目_夕景 → 1日目でできれば白馬岳まで行ってしまおうか。
初めて冬の白馬岳に行ってきました。
降雪直後の厳冬期に近い白馬岳をご紹介します。

ルート

〔1日目_山行〕7時間20分 / 〔休憩〕1時間40分 /〔合計〕9時間
栂池パノラマウェイ ⇒ 自然園駅 10:00 ⇒ 14:10 白馬大池山荘 15:10 ⇒ 16:40 船越ノ頭 16:50 ⇒ 17:30 小蓮華山 18:00 ⇒ 19:00白馬大池山荘
〔2日目_山行〕6時間 / 〔休憩〕2時間30分 / 〔合計〕8時間30分
白馬大池山荘 03:30 ⇒ 04:10 船越ノ頭 ⇒ 05:20 小蓮華山 07:10 ⇒ 08:20 白馬大池山荘 09:00 ⇒ 12:00栂池パノラマウェイ 自然園駅

山行記録 2019年3月9日~10日

1日目(前半)_ゴンドラトップ~白馬大池

EOS5DsR+EF16-35mmF4L IS USM 70mm f8 1/500sec ISO100 PLフィルター

夜間栂池に来るまでも、八ヶ岳付近でところどころ吹雪に合う。
いや、あまり降られてもそれはそれは大変なんだが。
早朝栂池に着いても、天候は回復傾向だが山頂方面は厚い雲に覆われている。
2本目のゴンドラは強風のために運行休止。
がーん。
天候回復を信じ待つしかないので、もじもじしていると上部ゴンドラが運行開始。
2本ゴンドラを乗り継いでゴンドラトップへ。

駅から出るなり、想像した通り50cmの新雪の斜面が待ち構えていた。
ここから大池までの区間は歩いたことないし、この深雪はヤバいよ。
深雪全線ラッセルかと思いきや、先行するバックカントリーツアーのトレースあり。
ありがたく天狗原までトレースを使わせて頂きました。
感謝感謝。
嵐から姿を現し始める杓子岳や白馬鑓ヶ岳の迫力が凄まじい。

EOS5DsR+EF16-35mmF4L IS USM 16mm f16 1/160sec ISO100 PLフィルター

天狗原からは通常乗鞍岳経由で大池に行きますがトレースなし。
北側の尾根に薄くトレースがあったので、後続者1名と北側の尾根を登ることに。
今日この状況では、結果的にこのルートで正解でした。
北側は雪が飛ばされ硬いバーンとなっており、非常に登りやすかったです。
翌日乗鞍岳経由で帰りましたが、こちらは深雪ラッセルで非常に大変だったでしょう。

14:10 白馬大池着。
全面大雪原となった大池に下りて、大池を横断していきます。
こんな広い大雪原を1人で歩いている。
なんか感動だ。
白馬はスケールが大きい。
白馬に来たことを大池を1足1足歩く度に全身で実感する。

できればもっと先でテントを張りたかったのですが、時間も遅かったので迷った末、大池の真ん中付近のちょっとした段差のところでテントを設営することにしました。

新雪で雪が柔らかかったので、設営は楽楽。
最初の10分で穴掘り完了。
テントをはめるとハマらなかったので、再度穴掘りで10分。
固定等微調整で10分、荷物投入で10分の、計40分でテント設営が完了しました。

1日目(後半)_小蓮華山往復

EOS5DsR+EF16-35mmF4L IS USM 16mm f16 1/100sec ISO100 PLフィルター

天候も回復し、この快晴の1日をアプローチだけで終わらせることはできない。
1泊するならば夕景も撮らなければ。
時間的に白馬山頂は無理だから小蓮華山あたりか。
最速でテントを設営した後、小蓮華山に向かうためすぐに出発。

船超ノ頭に向かうまでが広くてどこを歩いてよいのかよく分からない。
適当に斜面をトラバース気味にショートカットして船超ノ頭に向かう。
途中の斜面にシュカブラがたくさん現れる。
ここまで大きく段差のあるシュカブラを見るのは初めてかもしれない。
それだけ気象が厳しいということなのでしょう。
恐ろしや、北アルプス。

16:40 船超ノ頭着。
もう既に日は傾き、眼前に聳える小蓮華山は日陰になろうとしている。
日没までに小蓮華山、間に合うのか?
既にもうかなり疲れており、小蓮華山が遠く高く見えてくる。
それよりも強風で雪煙が舞いまくっている小蓮華山までの稜線が恐ろしい。
もう今日はここまででやめてしまおうか。
船超ノ頭は日陰になり夕日すら拝めない。
辛いけどあともう2時間くらい頑張れるでしょう!
小蓮華山まで行くことにした。

小蓮華山に向かうにつれて強風が凄まじくなってくる。
テントを白馬大池ではなく、中途半端な稜線まで持ち上げなくて本当に良かった。
とんでもない大きさのシュカブラはあちこちにあり、もう見慣れてしまった。
そのシュカブラを覆い隠すように足元に雪煙が川のように流れる。
なんか来てはいけないところに足を踏み入れてしまったような恐怖にかられながらも、シュカブラの海を超えて標高を上げていく。

EOS5DsR+EF16-35mmF4L IS USM 16mm f8 1/60sec ISO100 PLフィルター

17:30 何度も偽ピークに騙されその度に帰ろうかと思う中、日が伸びたことに助けられた形で日没前に小蓮華山着。
小蓮華山山頂に出ると、山頂に刺さる剣と夕日が眼前に現れる。
おおおお~~~。
誰もいるわけがないので、ちょっと叫んでやった(笑)。

思いのほか白馬岳の北斜面が焼けてくれる。
手前のピンクに焼けた斜面と雪倉岳のシルエットが美しい。
東方向を見ると、妙高火打よりも北の尖がった山が焼けている。
何山だろう?
真っ赤な夕日が日本海に沈んでいく。
頑張ってきここまで来てよかった。
氷点下11度で烈風。
結構寒いな、もう帰ろう。
帰りは気が楽になったのか、白馬大池のテントまで1時間でした。

2日目(前半)_白馬岳アタック

EOS5DsR+EF16-35mmF4L IS USM 35mm f8 1/50sec ISO100 PLフィルター

さぁ、今日がど本命の白馬三山の朝焼けを狙う日。
空は見渡す限り晴れ。
03:30 準備を整え白馬大池テント発。
大池では夜間無風だったにもかかわらず、稜線は昨日以上の強風。
昨日ルートも撮影ポイントも確認しておいたので、スムーズに進む。
やばい、このままでは早く着きすぎてしまう。
暗闇の中、身を隠す場所もない強風の稜線と、早く着きすぎて今の場所よりさらに風の強い場所で待機せざる得ない状況がさらに恐怖を増す。

05:20 小蓮華山着。
わざと牛歩で登ったにもかかわらず、早く着きすぎてしまった。
氷点下11度で強風。
更に着込むと、着込んだシェルのフロントジッパーが破損して役に立たなくなった。
どうなってんだ〇ース。
なんか今日は気押されているというか不吉な予感がする。

06:40 寒い中ウロウロしてようやく夜明け。
夜明け前に一瞬風が収まったが、日が昇り始めてだんだん風が強くなってくる。
強風で雪煙が舞う中、白馬三山が焼け始める。
風向きが変わりこちらに雪煙が向かってくるため、目もまともに開けられない。
しかし、ただの朝焼けの写真ではなく雪煙が舞うところが冬山っぽくていいかも。
白馬三山の奥にはさらに五竜岳や鹿島槍ヶ岳、槍と穂高連峰まで連なる。
その山々の連なりのが全て焼けてくれる。
やっぱり後立山連峰は夕方よりも朝ですね。
白馬岳の稜線の奥には何やら恐ろし気なピークが覗く。
立山か!
雪煙で霞んで見えるのが、その恐ろしさを倍増させてくれる。
やっぱり北アルプス凄いな~。
厳冬期は厳しいので、冬の厳しさを残す3月上旬が現実的に一番いいかもしれない。
この期間は北アルプス集中期間としよう(笑)。
今回の一番の目的である「白馬三山の朝焼け」をしっかり撮ることができました。
後は冬の白馬岳のピークハントと、白馬岳からの剱岳を撮れればもう今回完璧!

EOS5DsR+EF16-35mmF4L IS USM 16mm f11 1/100sec ISO100 PLフィルター

さらに強風から烈風に風が強まる中でも、半分目的達成できて心は軽い。
今日は快晴予報だし、風もそのうち収まるでしょう。
そんな軽くなった心持ちで白馬岳のピークハントに向かう。

歩き始めると三角形にカットされた面白いシュカブラと白馬三山が綺麗。
いいな、これも撮っておくか。
今日こんな素晴らしい景色が山頂までずっと続くのかな。
先ほどよりさらに風が強まるが何とか撮って反対の雪倉岳にポイントを探す。
烈風から暴風に変わった瞬間、背中側で「ぼふっ」って音がしたので振り返ると、
ん?
んん?
おお~~~~~~~~~~いっ!
足元に置いてあった55リットルの大きなリュックが忽然と姿を消していた。
暴風でリュックが一瞬で飛んでいったのだ。

かなり動転したが事実は事実だ。
谷底まで飛んで行ったのだ、目を離した一瞬で。
狭くもない普通の稜線に置いておいたあの重たいリュックが、中身ごと。

半分混乱する中、失ったものと今後の取るべき行動を考える。
手元にあるのは、手に持っていたカメラ+三脚と投げ出しておいたストックのみ。
飛んで行ったのは、リュック、アイゼン、ピッケル、ヘッドライト、食料、水、その他諸々の小物と、そして望遠レンズ。。。

向かう方向を見ると、白馬岳が白く輝いている。
今日の天気から確実にすぐに風は収まり、登頂も何ら問題ないはず。
道具は消失したが、絶好の機会。
このまま行ってやろうか、としばし考える。

この稜線だったらピッケルアイゼンなくても、ライトニングアッセントとダブルストックで十分行けるだろう。
しかし重たいカメラ+三脚とダブルストックで両手が塞がり、すこぶるバランスが悪い。
コースタイムは山頂まであと1.5時間だから、山頂含めて往復プラス3時間。
もう既に早々に食べた朝食から時間が経ちやや空腹な上、強風に晒され続けて喉が渇き切っている。
食料はともかく3~4時間水がないのはちょっと苦しい。
たとえ山頂に行っても望遠レンズがないと剱が撮れない。
やーめた。

07:10 喉の渇きの恐怖と登っても剱が撮れないことから、早々に帰ることにした。
帰りながら、なくしたものの金額を集計する思考が止まらない。
アークテリクスのリュックで7万、キャノンの新型の望遠レンズで14万、、、。
この時点で既に20万円超え。
そしてピッケル、アイゼン、ヘッドライトに、、、もうやめよう。
自分が谷底に飛んでいくよりかははるかに安かったと考えよう。
活動量を多くすれば、その分なにか起こるものさ。

帰り際に見る白く輝く白馬岳が恨めしい。
昨日一緒に登ってきた人ともう一人が登ってくるところだった。
今日は最高の一日になるでしょう。
力なく引き返す自分と対称的に、足取りが力強い。

2日目(後半)_白馬大池帰り

EOS5DsR+EF16-35mmF4L IS USM 35mm f16 1/100sec ISO100 PLフィルター

08:20 大池のテント着。
テントに着いて食料・水を補給できましたが、まだこの山行は終わっていない。
リュックがない中、この宿泊セットをどう持ち帰るか。
テントに全部つめ込んで背負って帰るしかないでしょう~。
心配無用、パッキングは意外なほど簡単だった。
テントに入れるだけだから(笑)。

今日も快晴。
乗鞍岳へはバックカントリーや登山者がアリの行列状態で登ってくる。
テントを背負ったサンタクロースは、さぞ奇異なものに見えたことでしょう。
不自然な者への反応は以下の3通りありました。
(1)明らかに不自然だが、特に何も話しかけない。
→ こちらもぶっすり沈んでいたので、当然と言えば当然でしょう。
(2)不自然過ぎがたまりかねて、話しかけてくれた人。
→ 「それ、テントですよねー?テントですよねー??」
→ 「はい、そうです。これはテントです。」「実は・・・」
(3)話しかけてくれたけれど、ちょっとポイントがズレていた人。
→ 「それ、パラグライダーですか?」
→ 「いいえ、違います。これはテントです。」
最高の登山日和で眩しい光が降り注ぐ中、ゴンドラを乗り継ぎ栂池を後にしました。

冬山でリュックが飛ばされるリスクと対応について

確かにあの烈風の稜線で、無造作にリュックをおいて目を離したのは失敗でした。
しかし、狭くもなくどちらかと言えば広い平らな稜線で、55リットルのピッケル・アイゼン、水筒500mlフル・食料、そして望遠レンズと、重いものをしこたま入れた重量物が一瞬で消失するとは想像しにくかったのも事実。

そして、今回は目的の朝焼けを撮った後で気が緩んでいるのも事実。
以前綺麗な景色を見て走ってすっ転んだりしたこともあり、浮かれているときこそ注意が必要ということでしょうか。

そして、失ったものもありましたが失わなかったものもあります。
①現金/②カード・免許証等/③車のキー/④スマホ
登山する人は上記の貴重品を、自分で持つかリュックの雨蓋に入れるか、どちらがよいか迷うことがあるかもしれません。
以前冬山でリュックを落とす事例を聞いたことがあったので、リュック消失のリスクヘッジのために、上記の貴重品等はすべて身に着けるようにしていました。

そのため登山セットは色々なくしましたが、その後の活動で支障は出ませんでした。
スマホをなくしても面倒ですし、何より栂池のような街中ではなく、誰もいない電波の通じない山奥で車のキーをなくしていたら、と思うとぞっとしてなりません。
ネタとしては面白いと思いますが、かなり高くついてしまいました(終)。

今日のお役立ちアイテム

白馬岳へのルート上には、びっくりするくらいの規模のシュカブラが発達します。シュカブラを手前から大きく取り入れてダイナミックに表現するには16mmからの超広角域が必須です。

【納期約1〜2週間】【お一人様1台限り】canon キヤノン EF70-20040LIS2 交換用レンズ EF70-200mm F4L IS II USM EF70-20040LIS2

朝焼けや夕焼け時等の、焼けた峰々の切り取りには70-200mmの画角が非常に活躍します。今回は行けませんでしたが、白馬岳山頂からの剱岳を狙うにも威力を発揮するでしょう。

ISUKA/イスカ 200821 ゴアテックス シュラフカバー ウルトラライト ワイド

白馬大池でのテント泊でのテント内の気温は氷点下10度(スリーシーズン用テント)。夜間は結構冷えるので、シュラフカバーがあると暖かさが増し、濡れ等の心配もしなくてよいのでお勧めです。
このシュラフカバーに防寒着を全て着込めば、もうワンランク下のシュラフでも対応できると思います。

今回のゴンドラトップから小蓮華山の往復で、MSRライトニングアッセントが大活躍でした。
特にゴンドラトップから白馬大池間は、新雪深雪のため、スノーシュー以外の選択肢はほぼなかったような気がします。
また、船超ノ頭手前のピークを外したトラバースも、トラバースに強いライトニングアッセントがよく雪面を捉えてくれました。
さらに、船超ノ頭から小蓮華山までの上りも、ヒールリフターを効かしての登攀が非常に役に立ちました。

このザムストの膝サポーターは、膝の上下でしっかり固定するタイプのため、2日間を通してズレることなく、しっかり膝をサポートしてくれました。
今回は雪山テント泊で、普段持たないシャベルやスノーソー等の装備も加わり最大重量のセットでしたが、ザムストの膝サポーターのおかげで、膝が痛くなることは全くありませんでした。
雪山で足にやさしいとはいえ、サポーターによる膝の保護はかなり効果的です。

白馬岳 記録一覧

2019年03月09-10日 ■■■■■『白馬岳 冬 ~栂池_登頂チャンスも強風にリュック飛ばされ幕~』⇒ ほぼ厳冬期の白馬岳
2018年07月16日       ■■■■☒『白馬岳 夏 ~蓮華温泉から日帰り!北アの展望とお花畑を見に~』⇒ お花畑/展望
2015年07月25-26日 ■■■■■『白馬岳 夏 ~蓮華温泉より高山植物咲く雪倉岳・朝日岳縦走~』⇒ 朝焼け/お花畑

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