いろんな人の記録を見ていたら、残雪期に針ノ木岳という選択肢があることを知る。
燕岳の翌日も晴れ予報。
厳冬期は行けないからGWの今しかない!
思いついたらいてもたってもいれず、GWの針ノ木岳に行ってきました。
よく「山は逃げない」と言われるけれど、チャンスを逃すと山は遠くへ逃げるのだ。
ルート
- 〔山行〕6時間50分 /〔休憩〕2時間10分 /〔合計〕9時間
【上り(4時間10分)】扇沢駅 00:10 ⇒ 03:00 針ノ木小屋 03:10 ⇒ 04:20 針ノ木岳
【下り(3時間10分)】針ノ木岳 06:20 ⇒ 07:10 針ノ木小屋 ⇒ 09:10 扇沢駅
山行記録 2019年5月5日
計画
今年の針ノ木岳の記録を全て見て情報を収集すると、要は以下の2つのことに集約される。
①雪崩が怖い
②雪壁?傾斜が急な斜面のトラバースがある
この2つのリスクをどう低減させるかと思考すると、以下の対処法が考えられた。
①雪崩リスク
→ 4/27の大雪以降、大きく雪や雨は降っておらずほぼ晴天続き。
→ 斜面に日が当たって雪が緩む前に下山すれば、雪崩を極力回避できると思われる。
②急斜面滑落リスク
→ この時期ガチガチに氷化していることは考えられず、雪が緩む前の堅く締まっている早い時間帯がよいかな。
→ このGWに奥穂高の雪壁も越えてきているので、ヘルメット+ダブルアックスで大丈夫でしょう。
ということで、上記リスク回避と朝焼け撮影の目的も併せて、24時登り始めとした。
上り(扇沢駅 00;:10 ⇒ 04:20 針ノ木岳)
00:00 扇沢発
以前の記録を見ていると、登りだけでだいたい5~6時間かかっている。
標高差1,400mだから、1時間当たりの登りの標高差をMax400mとすると3.5時間で着くはずなんだけれど、先人たちがそれほど時間かかっているには訳があるはず。
うかうかしていると日の出に間に合わず目的が達成できない。
早々に準備をして、車にshibawanwanを残し扇沢を飛び出すように出発する。
「生きて家族の元に帰らなければ...」みたいに内心かなりビビっている一方、大丈夫という確信はある。
04:30針ノ木岳山頂着 → 05:30 山頂発 → 08:00 扇沢着で、中央高速のGW渋滞をギリギリ回避するという、我ながら完璧な計画だな(笑)!
さすがゴールデンウィーク。
トレースはバッチリでときどきGPSで位置確認するも迷う余地がない。
夜間で気温が低いため、日中は緩んでいた雪も堅く締まり踏み抜きはなし。
前日までのトレースが硬く締まりステップ状になっており、雪渓はだんだん急になるもののアイゼンも不要なくらい。
順調に標高を稼いでいく。
気温も低く汗もかかず踏み抜きもなく、これは楽だわ。
雪渓に入ると、信じられないくらいのデブリが雪渓の大部分を覆う。
大きい塊は自分の背の高さ位もあり、こんなものを食らったらひとたまりもない。
しかもこれほど大規模に雪崩れて雪渓の大部分を塞ぐようになると、逃げることもほぼ不可能ではないか。
暗闇から浮かび上がるデブリが恐ろしげである。
この各々の沢から流れ出るおびただしい雪崩が、扇沢まで開通して人が入る前に発生したものなのか、人が入るようになった後に発生したものなのか?
そして、これだけ雪崩れていればもう雪崩れないのか、それともまだまだ雪崩れてくるのか全く分からない。
少なくとも日が当たって雪が緩む前に下りてくれば大丈夫だろう、としか思えない。
03:00 針ノ木小屋着
軽快にゆっくり休まず歩いて、3時間半で針ノ木小屋着。
ここから1時間のコースタイムで針ノ木岳山頂へ。
夜明けに間に合わないことは許されないので、そのまま休まず稜線歩きへ突入する。
歩いてしばらくすると、闇夜の中ヘッドライトに照らされた超急斜面のトラバースが浮かび上がる。
これか~、俺こういうの大っ嫌いなんだけどなー(焦)。
トラバースする斜面が急すぎて恐ろしすぎる。
こんなところでトラバースでアイゼン引っかけて頭から落ちたら、確実に止まれない自信がある。
ダブルストックからピッケルに換装し、ヘルメットを被る。
リスク軽減のため念のためピッケル2本持ってきましたが、トラバースで意味なし。
トラバースは前半と後半があって、前半の方が急で幅が狭く歩幅が重なるので難易度が高いでしょうか。
雪が硬く締まっているので確実に雪面を捉えられますが、この傾斜が恐ろしい。
こういうトラバースは初めてでもないので、大丈夫ではありました。
怖くていち早く通過してしまいたい衝動を抑えて、ゆっくり一歩一歩確実にアイゼンを引っかけないように進むしかない。
意外とこのトラバース区間が短くはなく「なめてはいけない針ノ木岳」といった感じでしょうか。
ようやく急斜面のトラバースを渡りきり、あと少しと思いきや、今度は急斜面の登りが立ちはだかる。
ダブルアックスにするのが面倒だったので、横着してそのままピッケル1本で登り始める。
ピッケル1本で大丈夫と言えば大丈夫ですが、上の方ほど急になり緊張を強いられ、やはりダブルアックスの方が断然安心感がありました。
04:20 西の空が明るくなり始めた頃に針ノ木岳山頂着。
なんとか乗り越えた~。
ノンストップで来たけど、結構かかったな。
後半慎重に行ったせいか。
安堵するも、針ノ木岳の山頂自体が両側が切れ落ちたようなナイフリッジのようになっており、なかなか落ち着かない。
そして、帰りもまたあの急斜面のトラバースとデブリまくりの雪渓を通過することを思うと、落ち着きがないのも落ち着かない(笑)。
山頂標識が見えるように雪が掘られており、リュックをはめるのにちょうどよい。
風でリュックが飛ばされるのを防ぐ退避壕として機能した。
二度と飛ばされてなるものか...。
目的は違うけれど、掘ってくれた人に感謝。
針ノ木岳山頂(04:20 ⇒ 06:20)
EOS5DsR+EF100-400mmF4.5-5.6L ISⅡUSM 248mm f5.6 1/10sec ISO100 PLフィルター
山頂からは、昨日の燕岳と似たような感はありますが、南に槍穂高、北に剱立山と北アルプスの両雄が眺められる素晴らしい眺望。
とりわけ剱・立山の景色が素晴らしいでしょうか。
以前夏に来たときは雲が湧いてしまいましたが、ここ針ノ木岳からの眺望は最強に近いですね。
北アルプスの名立たる名峰がほぼ全部見えるのではないでしょうか。
EOS5DsR+EF100-400mmF4.5-5.6L ISⅡUSM 182mm f8 1/40sec ISO100 PLフィルター
槍・穂高と剱・立山等を撮るために、担ぎ上げた超望遠ズーム100-400mm。
いかようにも切り取ることができ、絶大な威力を発揮してくれました。
通常の登山者の方は、こんな食えない重たい代物を担ぎ上げてはいけません(笑)。
EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 61mm f8 1/200sec ISO100 PLフィルター
夜明けとともに北アルプス全山がモルゲンロートに染まる。
槍穂高→剱立山→槍穂高→剱立山と、撮るのが忙しい。
尾根尾根の向こうにははるか乗鞍岳まで見ることができました。
こんな好条件は滅多にないので、入念に撮っていたら1時間くらい山頂にいました。
下り(針ノ木岳 06:20 ⇒ 09:10 扇沢駅)
06:00 予定より30分超過して下山開始。
まずは雪壁の下りから。
今度も横着してピッケル1本で行ったら登り以上に緊張を強いられた。
次はトラバース×2本。
今度は登りの暗闇とは違い明るかったので、さほど緊張することなく下りることができました。
通常はこうなんでしょう。
07:10 針ノ木小屋着
ふぅ~、これで一安心。
針ノ木小屋からは雪渓をひたすら下るのみ。
下方に登山者が1名が登ってくるところでした。
EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 24mm f11 1/320sec ISO100 PLフィルター
下りていくと、ほぼすべての沢筋から膨大な量のデブリが雪渓を塞いでいる。
いや、ほんとにすっげーな。
こんな規模の雪崩を食らったらほぼかわしきれないって。
もうすでに斜面に日が当たり始め、日が当たる斜面は急速に雪が緩み始めている。
先日の涸沢で多発した雪崩も、別に午後の遅い時間帯ではなく日が当たり始めた午前中から発生していたので、あまりうかうかはしていられない(降雪後の状況とは違うので大丈夫でしょうけれど)。
緩んだ斜面をスケーティングしながらあっという間に標高を下げていく。
バックカントリーの方はこの少し融けた斜面の滑走が最高に楽しいのでしょうけれど、登山者の方はどうなのでしょうか。
結構遅くから登られてくる方もおり、心配でした。
私にはこの雪渓両側の斜面が再び雪崩れない、ということは分からない。
心配しすぎでしょうか。
09:15 約束の08:00下山から1時間遅れてshibawanwanの待つ扇沢着。
心配かけて申し訳ない。
最短の時間で目的を達成できた納得のいく満足な山行でした。
トレースを刻み、記録を上げて頂いた先人達に感謝感謝。