ピナレロF5のコンポーネント載せ替え作業の工程⑨。
厄介だったブレーキホースのルーティングは、フレーム、フロントフォーク、ステム一体型ハンドルへとすべて完了した。
ルーティングしたブレーキホースをSTIレバーへ接続すれば、ブレーキラインはブリーディング(エア抜き)を除いてひとまず完成だ。
だが、ブレーキホースの長さ決めとカット、そしてSTIレバーに接続する際の締め付けトルク管理と、まだまだ慎重を要する作業が続く。
作業手順と難易度
SITレバー接続の作業手順
②コネクターインサート圧入
②STIレバーへの接続
難易度はLV4(5段階中)。ブレーキホースを切断するという、不可逆的な作業となるからだ。もし短く切りすぎてしまったら、今までのルーティング作業すべてやり直しという悪夢が待っている…。
また、STIレバーに接続する際、締め付けトルクをきっちり管理しないと、オイル漏れや最悪の場合はSTIレバーの破損にもつながりかねない。
どちらも慎重に行わなければならない、ある意味、コンポーネント載せ替え作業の中で一番緊張する作業と言えるだろう。
STIレバー接続(LV4)
ブレーキホース切断
ブレーキホースをSTIレバーへ接続する前に、適切な長さでカットする必要がある。この長さを間違えると、ハンドルを切ったときに届かなくなってしまう。そうなると、ホースの買い直しや、今までやってきたルーティング作業からすべてやり直しという、悪夢のような作業が加わることになる。
ハンドルを仮止めして、左右に切っても余裕があるように、慎重に位置を決める。短すぎると完全にアウト。かといって、長めにしすぎると、余ったケーブルがフレーム内で当たって、ハンドルを切るたびにカチカチと音がしてしまうことになる。
ジャストサイズで、少しだけ長めにするのがよいのだろうか。経験がゼロなのでなんとも言えないが、最後は「えいっ!」と決めるしかない。
切断する際にも注意が必要だ。コネクターインサートが隙間なく圧入されるように、切断面はつぶれたり斜めになったりしないよう、きれいにカットしなければならない。
切断にはハサミやカッターではなく、専用のホースカッターを使う。ここはケチらない方がいい。
純正品シマノのホースカッターは高価だけど、いろいろなメーカーから出ている。今回は半額程度のものを使った。スパッと綺麗に切断できて、インサートの圧入も完璧にできたから、これで十分だと思う。
インサート挿入
最後は「えいやっ!」とブレーキホースを切断。長めに切っておいたから、多分大丈夫なはずだ。
切断したホースにコネクティングボルトとオリーブを通してから、コネクターインサートを差し込む。この順番を間違えて、通し忘れないように注意しよう!
コネクターインサートの圧入は、専用のホースカッターでネジを回して押し込むだけ。本当によくできている。失敗することなく圧入完了。
STIレバー側の圧入は、狭いスペースで行うため、ハンマーで叩き込むような芸当は難しい。専用のホースカッターを使えば失敗がない。
STIレバー接続
ブレーキホースの接続で何が難しいかと言うと、締め付けトルクの管理だ。
ブレーキキャリパーの接続部分は鉄製なので、規定より多少強く締めてもあまり心配はない。しかし、STIレバー側の接続部分は、軽量化のためかプラスチック製なので、規定トルクを超えて締め付けすぎると、STIレバーが破損しかねない。
STIレバーはとても高価なパーツだ。これを壊してしまったら泣くに泣けない……。
しかしトルク管理をしようにも、コネクターナットにホースが連結されているため、トルクレンチはそのままでは使えない。
そこで、トルクレンチにクローフットレンチを接続して、トルク管理を行う。ここでも注意が必要だ。トルクレンチの軸と締め付け部分の軸がズレることで、てこの原理が働き、規定トルクで締めると実際には締め付けすぎになる。そのため、少し弱めのトルクで締め付ける必要がある。
シマノのマニュアルから引用。破損しやすいSTI側の規定トルクは5-6N・m。これを守ってね!
新品のDURA-ACEのSTIレバーを破損するなんて、悪夢過ぎる...。
そこで、取り外した105の金属製のブレーキキャリーパー側で予行練習を行った。STIレバー側の既定の締め付けトルクは5-6N・m。予行練習をして、だいたいの感触はつかめた。
STIレバーにブレーキホースを差し込む前にも、まだ注意点がある。この工程は、本当に気をつけるべきポイントがたくさんある。
STIレバーの中に入っているオリーブを取り出しておかないといけない。これに気づかずそのままホースを差し込んで締め付けてしまったら、いったい何が起こるか想像すらしたくない。
グリスが透明で写真では分かりづらいため、シマノのマニュアルから引用する。コネクティングボルトとオリーブには、シマノのプレミアムグリスをたっぷり塗ってある。
グリスはネジ山の固着を防止し、密閉性を向上させてオイル漏れのリスクを減らす役割を果たすため、グリスを塗ることを忘れてはならない。厄介なブリーディング(エア抜き)作業の前に、確実にブレーキラインを仕上げておこう。
いざ、コネクターインサートを圧入したブレーキホースをSTIレバーへ差し込む。
まずは手で締められるところまで締めてから、クローフットレンチを取り付けたトルクレンチで本締めを行う。
締め付けすぎて破損させるのは最悪だが、締め付けが弱くてオイルが漏れるのもこれまた最悪だ。破損しない程度にしっかり締め付ける。
気をつけなければいけないのは、クローフットレンチをコネクティングボルトにしっかり噛ませてからトルクをかけること。狭いスペースでの作業なので、しっかり噛んでいない状態でトルクをかけると、コネクティングボルトをなめてしまう。
片側が少し噛み浅く、なめかけてしまったが、セーフ!
トルクを確認しながら、STIレバーへの接続完了!
だいたい慣れてくれば、5-7N・mという力加減は手で分かってくるもの。これで大丈夫なはず。
次は、いよいよ油圧ブレーキの悪名高きブリーディング作業へ。
≪コンポ載せ替え⑩≫ 油圧ブレーキオイル_ブリーディング、に続く。