VANYAR PRO

〔ELVES VANYAR PRO〕ロードバイク1台を身長差のある男女2人で兼用できるか ~ジオメトリを読み解いてみる~

ロードバイクのフィッテイングはとってもシビア。サドル位置やステム長が1cm変わっただけでも明確に分かるくらいの違和感を覚える。
男性のお古のロードバイクを女性に貸してあげたい、または、彼女・奥さん用のロードバイクを男性も使いたいなど、1台のロードバイクを男女2人で兼用したい、というニーズもあるかと思います。

フィッテイングがシビアなロードバイクで、はたしてそんな男女兼用のロードバイクが実現するのか?を実際にELVES VANYAR PROを作って試してみました。

 

ロードバイク1台を身長差のある男女2で兼用できるか?

結論

まずは結論から。
男女の体格差、男女兼用とするロードバイクのジオメトリ、ステム長、シートポスト長などいろんな条件によりますが、ロードバイク1台の男女兼用はある程度可能でした。

左が自分のロードバイク、ピナレロF5。フレームサイズは515。
右が嫁さん用兼自分用に作った男女兼用ロードバイク、ELVES VANYAR PRO。フレームサイズは一番小さい47サイズ(適正身長幅156-166cm)。

”ある程度”と言うのを、もう少し詳しく表現していきます。
今回は完全に嫁さん用に合わせて、フレームサイズとステム長を決定しました。
結果、当たり前ですが嫁さんはフィッティングで特に問題なし。

一方自分にとってはそのフレームサイズは1.5サイズくらい小さいサイズになります。
この小さめのロードバイクを自分が乗るとすると、ステム一体型ハンドルに油圧ブレーキなので、ステム長とハンドルの高さは調整不可(ハンドルの高さはスペーサー1枚くらいであればできなくはないですが、毎回気軽に変えられる部分ではないので)。
唯一調整できる部分はシートポストをどれだけフレームから出すか、とそれに合わせて微小にサドルの前後位置を変える、ということしかできません。

結果、ベストではないけどまぁまぁフツーに乗れるけれど、ややハンドルが近くて窮屈な感じ。体格に合ったフレームサイズに乗るのが良いのが当たり前と言えば当たり前で、若干の違和感を感じつつも意外と乗れなくはないよね?という感じです。
STIレバーのコブを握るとちょうどよい感じなので、下記ピナレロF5とのトップチューブ差の通り、2cmくらい短い感じですね。

しかし面白いことに、毎朝の散歩サイクリングでこの小さめの兼用バイクをずっと使っていると違和感は薄れてこれがあたり前になってきたりします(笑)。

 

今回試した身長差と体型差

今回の試みの元となる、自分と嫁さんの対格差を纏めると以下の通り。

身長 腕の長さ 胴の長さ
自分(男) 173cm 平均より短い(95%) 平均より長い(102%)
嫁さん(女) 158cm 平均より長い ???

身長差は15cm。だいたい男女の身長差の平均値ではないでしょうか。
身長だけではロードバイクのサイズを決定できないのが難しいところ。腕や胴や足の長さで同じ身長でも適正フレームサイズは変わります。

今回の特殊条件で考慮すべきところは、身長差が15cmあるにもかかわらず、自分と嫁さんの腕の長さが同じ、ということ。なんか自分のマウンテンバイクを乗らせても何となく乗れてしまうことから、ふとしたきっかけで腕の長さを測り比べたところ、同じ長さという結果に。え、マジで?と思って測り直しても、肩から指の先までほぼ一緒。w

上記の腕の長さと胴の長さのパーセンテージは、ピナレロ購入時に、店舗でポジションの簡易フィッティングで測定してもらった結果です。結果は全平均比で胴が長くて腕が短いとのこと。どおりで11cmや10cmのステム長が全く合わなかったことに合点がいった。
一方、嫁さんは昔「腕が長いね」と言われたことがあるらしく。身長差がある男女の腕の長さが同じという結果で。

 

機材選択

男女兼用バイクを作る上で悩ましいのが、機材のサイズの選択。どちらに合わせたサイズにするのか、それとも双方の中間のサイズにするのかなどなど。
機材のサイズ選択としては、一番影響が大きいものが①フレーム、次に②ステム長、➂ハンドルの高さ(コラムカット)、④ハンドル幅ではないでしょうか。それぞれ見ていきます。

フレーム選択とジオメトリ

まずは今自分が使っている、ピナレロF5のジオメトリです(ピナレロHPより抜粋)。
フィッティングの結果、適合フレームサイズは515を選択。ちなみにピナレロは各フレームに対する適正身長幅の記載はありません。購入店でフィッティングしてもらうことになります。
515サイズのリーチが378.1mmスタックが523.3mm

次に嫁さん用に購入するELVESバイク、VANYAR PROのジオメトリ(ELVESバイクHPより抜粋)。
ELVESバイクは各フレームサイズに対する適正身長幅の記載があります。

自分の身長が173cmなので、適合フレームサイズは50の上限ぎりぎり。
一方嫁さんの身長が158cmなので、適合フレームサイズは47の真ん中にきてジャストサイズ。自分に合わせて50にすると、嫁さんの適正身長幅からかなり外れます。

嫁さんに合わせて47サイズにするか、自分に合わせて50サイズにするかがとっても悩ましい~。
迷ったときは本来の目的に立ち返って考えてみます。本来の目的は「嫁さんと一緒にロードバイクで楽しい思い出を作りたい」というもの。そこに、そうは言ってもそもそも使用頻度は高くはないだろう...ということから、あわよくば自分のセカンドバイクに出来ないか?というスケベ心が生じてくる。

嫁さんが楽しく使えなければ意味がない、ということで、ここは完全に嫁さんに合わせて47のサイズに決定。ハンドルが遠すぎて背筋が伸び切って力が入らない、というサイズではロードバイクは楽しめないどころか乗れませんから。

リーチ

最も重要な指標であるリーチを見ていくと、VANYAR_47サイズのリーチが375mm
これに対してピナレロF5_515サイズのリーチは378.1mm。なんと3mm差でほとんど変わらない。

どこで差が出てくるのかというとホリゾンタル換算のトップチューブ長。
VANYAR PROが47サイズで510.3mm
ピナレロF5が515サイズで535mm
トップチューブ長の差が25mm。要はBBからハンドルまでのリーチ差で3mm、BBからシートポストまで後ろの長さで22mmの差が生じてくる。
要はハンドルからシートポストまでの距離が、25mm自分にとって狭くなるということ。28mmハンドルが近くなると、それは影響出るよね?さてさてこの差をどう埋めるか。

スタック

次にスタックを比べてみると、VANAYAR_47サイズのスタックが505mm
これに対してピナレロF5_515サイズのスタックが532.3mmで、その差は18.3mm。

ピナレロF5はレーシングジオメトリを採用したレースモデルのため、エンデュランスロードよりかは前傾が深いモデル。そのピナレロF5よりもVANYAR PROの方がハンドルが低くなる?もう1つ上のサイズにしても519mmだから、ピナレロF5よりもやはり低くなる。VANYAR PROってレーシングジオメトリなのだろうか。確かにヘッドチューブが、エンデュランスロードのように間延びしているようには見えない。

そのままVANYAR PROを組むと、ピナレロF5よりもハンドル位置が低くなってしまう?これ以上前傾がきつくなると苦しいお年頃なので、スペーサーは多めに入れる必要があるか。
う~ん、ジオメトリって奥が深い。

 

ハンドルサイズ/ステム長選択

 

次に悩ましいのがステム長。ハンドルとステムは、ELVESバイクから出ている専用のステム一体型カーボンハンドルを購入する予定。そのため一度サイズを決めたらポジション調整は不可、というフレームサイズと同じく1回ぽっきりの選択を迫られます。

自分にとっては、VANYAR PROのフレームサイズを小さい47にすることによって、ジオメトリから28mmハンドルが近くなる。これを改善するには、ステム長を長くしたいのだけれど嫁さんはそもそも何cmが適合するのか?

自分は今あるロードバイクとの比較で、ある程度正確にサイズ選択ができるけれど、嫁さんは実車でフィッティングできないし、ロードバイクも持っていないので比較することができない。もうここは想像で選ぶしかない。w

ロードバイクで一番きついのが、ハンドルが遠すぎて背筋が伸び切って全く力が入りません、というもの。
自分もステム長11cmが付いていたピナレロF5の試乗車を乗らせてもらったときは、(ロードバイク初心者ということもあり)完全にハンドルが遠すぎて腰が痛すぎ。10分とまともに乗れませんでした。
次に10cmのステムで購入したときも、やはりハンドルが遠すぎて、結局今は9cmのステム一体型ハンドルにして、ようやく乗れるようになったという経緯があり。

長すぎると乗れない危険があるので、ここも完全に嫁さんに(想像で)合わせて一番短い90mmを選択。これで「ロードバイクなんか乗れない...」なんていうことにはならないでしょう。
自分としては28mmの差を埋めるべく、せめて100mmのステムを選択したかったのですが。

 

シートポスト選択

VANYAR PROのシートポストは専用のカーボンシートポスト。2種類選択ができ、12mmオフセットのものと25mmオフセットのもの。簡単に言えば、シートチューブの延長線からどれだけ後ろにズラしてサドルを取り付けるか、というもの。

シートポストだけは自分に合わせて、25mmオフセットのものを選択。28mmハンドルが近くなる分だけ、サドルを後ろにズラして逃げられるようにするため。とはいえ、サドルの前後位置はBBの位置で決まってしまいますが。

 

 

組立/フィッティング

シートポストカット(サドル高)

ステム一体型ハンドルのため、ポジションを調整できるする部分はシートポストとサドルの前後位置のみ。シートポストを自分と嫁さんの双方に合うように2つのセッティングを出すつ必要があります。

自分に合わせると、シートポストを確実に固定できるようにできるだけ長く残したい、嫁さんに合わせると、適正なサドル高となるまでシートポストをバッサリ切らないといけない、という相反する要件を満たす切断位置を慎重に探っていきます。

誤ってシートポストを長く切りすぎてしまうと、フレームから長く出せなくなって自分が使えなくなってしまいます。慎重に短めに切っては乗って試してもらって「ダメ!足が着かない」、を繰り返して、最終的には目盛り「5」のところまで切ることになりました。

どのくらいシートポストを残すかの安全長には諸説ありますが、一応直径の3倍の繰り出し量はギリギリ確保できています。

神奈川県横須賀市の湘南国際村で、相模湾と富士山を背景に撮ったVANYAR PRO。
このときは自分が乗っていたので、シートポストの繰り出し量は、ホリゾンタルフレームっぽいVANYAR PROでも、そこそこの長さが出ています。

こちらは伊豆の土肥で、土肥桜と一緒に撮ったもの。
このときは嫁さんが乗っていたので、シートポストはフレームに刺せるだけ刺しています(Sサイズでもここまで刺してようやく適正サドル高w)。

フォークコラムカット(ハンドルの高さ)

ハンドルの高さ調整は、フォークコラムのカットで調整します。
自分としては、レーシングバイクのピナレロF5よりかは前傾を緩くしたい、嫁さんとしてはロードバイク初心者のため高い方が安全でしょう、ということろで、かなり安全目にスペーサーは6枚と決定。ぶった切ります。w

スペーサーを6枚挟んでこのくらい。ギリギリ”首長竜”にはならないくらいでしょうか。
ステム一体型ハンドルと油圧ブレーキのため、簡単には調整しにくいですが、高さを残しておく分には調整の幅があります。

 

 

まとめ

今回の自分のケースでは、1台のロードバイクの男女兼用は一応できましたが、男女の体格差、兼用ロードバイクのジオメトリ、ステム長などから、もちろん兼用できる許容域に収まらない場合もあるかと思います。しかし1人で2台使えると、フレーム特性の違いが分かったり使い分けができたりなど、いろいろ便利な面があります。

場合によりますが、身長差10cm以内ならなんとかなる場合もあるかと思いました。ロードバイクを2人で楽しむ場合は、男女兼用を試してみると楽しいかもしれません。

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