関東・信越

尾白川渓谷_滝巡りガイド ~“南アルプスの天然水”はここ!~

悪天のため笛吹川東沢釜ノ沢東俣~甲武信ヶ岳の予定を変更し、尾白川渓谷の神蛇滝まで撮り直しに行ってきました。
渓谷道で見れる、神蛇滝までの滝と淵等をご紹介します。

ルート

〔山行〕1時間50分 /〔休憩〕2時間10分 /〔合計〕4時間
【上り】尾白川渓谷駐車場 14:10 ⇒ 14:20 竹宇駒ヶ岳神社 14:30 ⇒ 14:40 千ヶ淵 15:20 ⇒ 15:40 三の滝 15:50 ⇒ 16:00 旭滝 16:20 ⇒ 16:30 百合ヶ淵 16:40 ⇒ 16:50 神蛇滝
【下り】神蛇滝 17:30 ⇒ 18:00 竹宇駒ヶ岳神社 ⇒ 18:10 尾白川渓谷駐車場

吊り橋を渡ると、渓谷道と尾根道に分かれます。
尾白川渓谷は非常に急峻な谷のため、渓谷道といっても水線沿いに歩けるものではなく、基本高巻き道を歩きつつ滝等のポイントポイントで下りていくというスタイルになっています。
渓谷道で滝を巡りながら登り、下りは尾根道でスタート地点まで戻ることになります。
スタート地点から神蛇滝までは標高差300mあり、渓谷道は一部非常に急なので、逆回りは禁止と案内されています。
山馴れた自分でさえ「険しいな...」と思うくらい急で、しっかり歩けば問題ありませんが、大袈裟ではなく落ちれば死亡又は複数個所骨折というところもあります。
特に傾斜が急となる千ヶ淵より上部は、「登山道」であるという認識が必要です。
山登りされている方は大丈夫ですが、登山経験のない一般の観光客の方が登ると面食らうと思います。

山行記録 2019年6月9日

千ヶ淵(14:40~15:20)

EOS5DsR+EF16-35mmF4L IS USM 31mm f16 4sec ISO100 PLフィルター

午前中いっぱいで横谷渓谷の滝巡りをした後は、尾白川渓谷の滝めぐり。
尾白川渓谷駐車場に着いたのは既に14時。
最奥の不動滝までは厳しい時間ですが、神蛇滝から先の不動滝までは通行止めの案内。
時間もないので、今日は神蛇滝までにしておきましょう。
急いで支度を整えて第一のポイントの千ヶ淵に向かいます。

駐車場からすぐに竹宇駒ヶ岳神社に到着。
甲斐駒ヶ岳へ黒戸尾根から登るときによく出てくるシーンです。
甲斐駒ヶ岳は夏も秋も冬も何度も登っていますが、黒戸尾根からは登ったことはありません。
ダイレクトに甲斐駒ヶ岳へ登ることができますが、その大変さから登ってみたいような登ってみたくない(笑)。

そんな感慨にふけりつつも駒ヶ岳神社の左から吊り橋を渡って渓谷道に入ります。
以前何度も来ていた尾白川渓谷も残っているのはフィルムで、もう10数年以上前のことだろうか。
年月の経過は結構忘れさせてしまうもので、景観を思い出しながら先に進みます。
吊り橋を渡った尾根道との分岐を右に水線沿いに歩いていきます。
この時点から川沿いの岩の上を歩く形で、尾白川渓谷の険しさを感じさせてくれます。
少し歩くと、翡翠色の水をたたえた千ヶ淵が現れ、その奥には白い飛沫だけ見せる滝の一部を見ることができます。

尾白川渓谷は全般に白い花崗岩の岩肌で形成された明るい渓相の渓谷です。
花崗岩の白い岩肌と蓄えられた千ヶ淵の翡翠色の対比が美しい。
この千ヶ淵だけでも南アルプスの存在を感じることができるでしょう。
サントリーの「南アルプスの天然水」とはまさにここの水のことです。

千ヶ淵の奥は別々の沢から大小2本の滝が落ち、ここだけ岸壁の色は異なり赤褐色となっています。
薄暗い滝壺の空間で、滝の赤い岸壁が水飛沫で濡れて暗く光り、尾白川渓谷の険しさと恐ろしさを伝えてるようです。
この千ヶ淵の奥にある滝を撮ってみたいのですが、どの角度から見てもその姿を見ることはできません。
沢靴を履いて千ヶ淵を超えて行かないと見れないでしょう。
一度やってみたいのですが、千ヶ淵が意外と深そうで濡れずにへつりだけで行くのは難しそうです。

三の滝/無名滝(15:40~15:50)

EOS5DsR+EF16-35mmF4L IS USM 35mm f8 1/4sec ISO100 PLフィルター

千ヶ淵より上部は注意の案内にもあるように「渓谷道」とは思えないくらい険しく急になります。
千ヶ淵の岸壁上部に出ようとしているので、険しくなるは当然です。
すぐにオレンジ色の塗装がされた階段が連続します。
その階段がものすごい角度で、おそらく自分が見たことのある階段の中で最も急なものだと思います。
急な角度の階段が尾白川渓谷の険しさを物語っている。

水線を高巻いたり近づいたりしながら渓谷道をゆくと、渓谷道沿いに明確な滝の存在を感じます。
渓谷道から下りてゆくと、大岩から二筋に流れ落ちる豪快な滝が三の滝です。
三の滝の前方の大岩から真正面に眺めることができます。

もともと水量が豊富な沢ですが、昨日からの断続的な雨でさらに水量が多いのか、身の危険すら感じる圧力を感じます。
ここにきて雨が強まる中、沢筋まで下りていろいろなポジションでの撮影を試みると、今まで撮ったことがない迫力あるシーンを撮ることができました。
白く明るい花崗岩の渓相にいくつもの滝と淵をたたえる尾白川渓谷、最高です。
数ある渓谷の中でも断トツの美しさだと思います。
最終的には、尾白川渓谷と同じ渓相でもっと多きい巨瀑と淵を多く抱える黄蓮谷右俣を行ってみたいのですが、単独行の限界でしょうか。
多分私が1人で行ったら、無事に帰ってくることはできないでしょう。

三の滝のすぐ上には、くの字に曲がる無名滝があります。
近づいて撮りたいのですが、標準ズームの偏光フィルターを忘れてきているので、超望遠ズームの望遠端で撮るしかありません。
やや寄り切れませんが、雨も強くなってきたし仕方なし。
日没も近づいてきているので、次の旭滝へ急ぎます。

旭滝/百合ヶ渕(16:00~16:40)

EOS5DsR+EF16-35mmF4L IS USM 35mm f8 2.5sec ISO100 PLフィルター

尾白川が蛇行するたびに高巻き道に追いやられ、急登を登ってはまた沢に近づいてゆく。
本当に急峻な渓谷です。
沢に近づいていくと、旭滝の看板が立っています。
旭滝は渓谷道からは全く見えないので、通り過ぎてしまう方も多い滝です。
ですが、旭滝は尾白川渓谷の滝の中で最も近くに寄れ、その渓流のエネルギーを全身に感じられる滝なので是非行くべきです。
そして、旭滝の下部に形成される淵も深い翡翠色で非常に美しいスポットだからです。
かくいう私も初めて来たときは、そんなものかと思って確か通り過ぎてしまったと思います。

旭滝へは看板の奥に進むと大きな岩の間から沢に下りれるところがあるので、滑り落ちないように注意しながら慎重に下りてゆきます。
この時点でも旭滝は大岩に隠れて見ることはできず、旭滝から生じる大量の水飛沫と美しい淵を見ることができます。
深い翡翠色をした美しい淵に降り立ち大岩を上流側に回り込むと、そこに荒れ狂ったような旭滝がようやく姿を現します。

滝が大量の水を放出する際に生じさせる風圧がもの凄く、たいていの場合はその水飛沫で短時間で身を濡らすことになります。
写真を撮る場合は、レンズに一瞬で水滴が付くので、レンズに水滴が付かないように防御しながら近づき、近づいたら一瞬で撮るしかありません。
撮るたびにレンズを拭くことになるので、乾いたタオルは必携です。
このように写真を撮るも非常に困難な滝なので、条件によってはうまく撮れないか、時間がかかります。

旭滝の前方は一枚岩になっているので、一枚岩を伝ってもっと旭滝に近づくことはできます。
しかしその風圧と水飛沫、そして全身を震わせるような轟音なので、近づくには相当の勇気が必要だと思います。
旭滝お勧めです!

旭滝を過ぎるともう残す滝は神蛇滝と最深部の不動滝のみ。
神蛇滝の前に百合ヶ渕があります。
百合ヶは、高台から深い翡翠色をした百合ヶ淵とそこに流れ込む白い滝の流水だけを見ることができます。
百合ヶに流れ込む滝の姿を見たいと思い、滝の見えるポジションをいろいろ探しますが、地形が急峻過ぎてどこからも見ることができません。
滝の存在を認識することはできるけれど滝は見えない、というのも秘境っぽくて、それも尾白川渓谷の1つの特徴でしょうか。
望遠で切り取るしかできないので、ちゃちゃっと撮って、今日の最終目的地の神蛇滝へ。

神蛇滝(16:50~17:30)

EOS5DsR+EF100-400mmF4.5-5.6L ISⅡUSM 100mm f11 6sec ISO100 PLフィルター

百合ヶ淵から神蛇滝へは、深い谷を見ながら谷を回り込むように行くと、間もなく神蛇滝へ到着します。
尾白川渓谷内に多くの案内板が立っていますが、そこに記載されている歩行時間はかなり多めのような気がします。
一般の観光客向けの歩行時間のような感じで、普通の登山者であればそれほどの時間はかかりません。
途中の滝々で散々時間を費やして、ようやく今日の最終目的地の神蛇滝が姿を現します。
見える限り3段で、それぞれの落ち口にエメラルドブルーの釜を有する、偶然が生み出すにはあまりにも綺麗な滝です。
神蛇滝は何度も来ていますが、神蛇滝の美しい釜は、夏の時期よりは秋の方が澄んで深い翡翠色になるように感じます。
滝の形状から、山梨県の100名瀑で、甲府の町を挟んで奥秩父の「七ツ釜五段の滝」と南アルプスの「神蛇滝」とが対をなすかのようです。

神蛇滝は、展望台となる直方体の大岩の上から、深い谷を挟んで遠望する形で見ることができます。
この展望台となっている大岩は崖になっているので、落ちないように注意が必要です。
神蛇滝は深い谷にあるなので、直射光線が差す晴天だと強い陰影が付いて白とび黒潰れとなってしまうので、柔らかい光が回る曇天か雨天の方が撮影に向く滝です。
ただ、深い谷を挟んだ遠方にあるので、強い雨の日等は霧が谷を埋めてしまい霞んでしまうこともあります。
今回もようやくたどり着いた神蛇滝はガスが谷を挟んでモヤってしまっていました。
さらに標準ズームがないので、超望遠ズームの望遠端と超望遠ズームの広角端で神蛇滝の全景を捉えようとするも、どちらも合わない。。。
超広角ズームの望遠端で撮ってトリミングするしかなし。
お粗末様でした。

そうこうしているうちに風で谷を埋めている霧が晴れたり戻ったり。
何とか霧が晴れた瞬間に、それぞれの段瀑と釜を撮ることができました。
この先にある最奥の不動滝は、大きな釜を抱えた水量豊富な巨大な滝なのですが、通行止めで日没間際で時間なし。
尾白川渓谷を締めくくるに相応しい大瀑布なのですが仕方なし。
またの機会にしましょう。

下りは神蛇滝から尾根道で帰ります。
尾根道は適度な傾斜で平坦なので、非常に歩きやすくハイカットの登山靴でも小走りで下りることもできました。
快適に下りて、神蛇滝からスタート地点の吊り橋まで15分。
尾白川渓谷は、南アルプスを感じることができる素晴らしい渓谷でした。
曇りや雨の日でも楽しめるので、天気が悪く山がお預けの日とかに行くのにお勧めです。

今日のお役立ちアイテム

尾白川渓谷の渓谷道は、「渓谷道」と言えども部分的に非常に急峻な山歩きになります。
そのためローカットのトレランシューズ等よりも、足首まで保護するハイカットの登山靴の方がお勧めです。
また、沢沿いの岩場が濡れていたりするので、グリップ力のあるビブラムソールを採用する登山靴が望ましいといえます。

-関東・信越