鹿島槍ヶ岳に登ったのは、今から17年前の2007年の夏の一度きり。つまりフィルムカメラで撮っていた時代だ。
その後デジタル画像で残したく、二度ほど鹿島槍ヶ岳に挑戦しているが、途中の爺ヶ岳で天候が悪化したり、途中の爺ヶ岳でカメラが壊れたり、なかなか鹿島槍ヶ岳に辿り着けない。そして、爺ヶ岳経由の柏原新道は長すぎだ。
今回で鹿島槍ヶ岳は最後にしよう、ということで、最短ルートの赤岩尾根から電動チャリを使って短縮するという万全の態勢。登頂はさておき、本当の目的は赤岩尾根の紅葉を撮りたかったから。初めて行く赤岩尾根の紅葉はどんなもんでしょう。
登山ルート
〔山行〕8時間50分/〔休憩〕2時間50分/〔合計〕11時間40分
山行記録 2024年10月1日(03:30-14:40)
上り①(03:00 大谷原登山口 ⇒ 06:50 冷乗越)
EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 24mm f16 0.3sec ISO200 PLフィルター
今日の目的は、①鹿島槍ヶ岳からの山頂風景と②赤岩尾根の紅葉撮影の2つ。
03:00 いつものように稜線または山頂日の出のナイトハイクをすると、往路の赤岩尾根の紅葉が撮れない。そのため、赤岩尾根の上部あたりで夜明けを迎える感じで、遅くもない早くもない微妙な時間に出発。
電動MTB(以下「ザク」と呼ぶ)は大きく、車に積むのに前輪を外さなければならず、かつ寝るスペースも狭くなるので、持ち運びは結構煩雑で大変だ。半面チャリ登山では絶大な威力を発揮する。
今日は、かなりハードな鹿島槍ヶ岳の日帰りを、大谷原登山口から西俣出合までの林道3.4km/標高差280mをザクで無効化し、ごっそり負担軽減する。
赤岩尾根ルートの登山全体から見れば、往復20km/標高差1,820mのうち、往復約7km/標高差280mをザクで稼ぐので、実質往復13km/標高差約1,540mを人力で歩けばよいということになる。そうすると”かなりハードな鹿島槍ヶ岳登山”が、”ちょっと大変な日帰り登山”へと大きく難易度が下がる。標高こそ違えど、ちょっと丹沢に毛が生えたくらいのものか。w
西俣出合までの林道の状況は、まぁそこそこ大変な感じ。所々わだちが深く、石は鋭利なものは少ないが大きく、傾斜もそこそこある。そのため、マウンテンバイクを持って行ったとしても、電動でない人力であれば上りはほぼ手押しになるのは間違いない。マウンテンバイク以外の自転車にあっては、ほぼ走行困難という感じ。
そんなやや手強い林道をザクで軽快に駆け上がる。これがなんとも言えなく楽しいんだな。
03:20 勾配にトラクションを奪われながらも、20分で西俣出合着。衝撃の速さだ。体力の消耗は感じられず、見上げる空には星がいっぱい。今日の勝利はほぼ確実だろう。
初めて登る赤岩尾根は、急登だが整備されていて非常に歩きやすい。斜度は急でほぼ一定。足場は平らで置きやすく、体力がある人であればCTを大幅に短縮できるルートだ。自分的には、上りも下りも短時間で標高が稼げて、爺ヶ岳経由の柏原新道よりも好ましい。
04:50 90分で展望が開ける高千穂平に到着。夜明け前で真っ暗だが、鹿島槍ヶ岳の稜線がすぐそこに見える。まだ全然紅葉していないので先に進む。夜が明けるにつれて、鹿島槍ヶ岳の稜線がハッキリ浮かび上がってくる。デカイな...。
05:50 紅葉の始まった白樺平上部で夜明けを迎える。イマイチ撮影ポイントが分からないまま、朝日に染まる紅葉と鹿島槍ヶ岳を合わせる。反対側の爺ヶ岳方面も紅葉と合う場所がある。暑い夏でまだ寒さに当たっていないせいか、紅葉はボチボチかな。稜線の紅葉を撮りつつ鹿島槍ヶ岳の朝焼けも撮れるよい場所だった。
EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 24mm f16 1/4sec ISO100 PLフィルター
明るくなってから、冷乗越へ登り再開。赤岩尾根から見る鹿島槍ヶ岳はまさに壁。切り立った険しい斜面に紅葉する木々が並ぶ様が美しい。鹿島槍ヶ岳は眺めて最高の山だな。
紅葉する木々と鹿島槍ヶ岳を絡めたいが、なかなか微妙に絡まない。なかなか涸沢のようにはならない。
手前にある赤や黄色の紅葉と鹿島槍ヶ岳との間がちょっと離れているんだな。超広角だったらうまく撮れたのだろうか。いや、ロングルートでのレンズ3本とかもう受け入れ難い。w
EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 24mm f16 1/20sec ISO100 PLフィルター
なんとか黄色と橙の紅葉と鹿島槍ヶ岳を合わすことができた。上を見上げれば急斜面の岩稜が続き、紅葉エリアも終わりとなる。
紅葉はちょっと早くボチボチだったけれど、まずは赤岩尾根の紅葉と鹿島槍ヶ岳を撮れて一安心。天気も大丈夫そうだけど、油断せずこのまま山頂まで行っちゃいましょう。
赤岩尾根上部には鎖場があるが、特に問題なし。岩が露出し道幅が狭くなっているだけなので、慎重に歩けばよいだけ。気象条件が悪くなければ、鎖に頼ることもない。
鎖場を抜ければ、狭いトラバース道を辿れば、冷乗越はすぐそこ。トラバース道から見る鹿島槍ヶ岳は、重厚そのもの。
上り②(06:50 冷乗越 ⇒ 09:00 鹿島槍ヶ岳山頂)
EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 24mm f16 1/30sec ISO100 PLフィルター
06:50 ポンっと展望の開けた爺ヶ岳からの稜線に合流すると、そこが冷乗越。正面にはドーンと立山~剱岳のギザギザスカイラインがお目見えする。普通はここで感動するんでしょうけれど、もう見慣れちゃって。冬の剱岳を何度も見ているので、それと比べてしまうのだろう。
どちらかと言えば、冷乗越からの鹿島槍ヶ岳の方が新鮮。なんせ17年ぶりだから。
07:10 さっき大休止をとったので、冷池山荘には立ち寄らずそのまま通り過ぎる。山荘前に小さな池塘があったけれど、これが冷池なのかな?正確な冷池の場所がよく分からず。
07:15 山荘から5分で冷池山荘テント場。前回はここにテントを張ったけれど、この山荘までの5-10分の距離が遠いのよね。トイレが...、と今でも思い出してしまうほど、山荘とテント場が離れている。
テント場からは、正面に立山~剱岳。あまりによく見えすぎてしまうので、秘境感というか奥ゆかしい感じが足らなく感じてしまうほど。w
次のピークの布引山が高く聳え、双耳峰ならぬ三耳峰に見える。これはなかなかカッコイイ。稜線の紅葉は期待していなかったが、若干紅葉があり、鹿島槍ヶ岳と絡めることができた。
EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 24mm f16 1/15sec ISO100 PLフィルター
さらに進むと、今度は足元に真っ赤なチングルマの草紅葉。真っ白の綿毛になった花とのコントラストがいい。チングルマの紅葉と合わせて布引山と鹿島槍ヶ岳の3ピークの絵が迫力ある。秋の紅葉もいいけれど、チングルマの花が咲く夏も綺麗だったんだろうなぁ。赤岩尾根より傾斜が緩く、景色もよい。お気軽稜線歩き。
布引山直前で振り返れば、爺ヶ岳からの稜線は長く続き、もう爺ヶ岳より上に出たのではないだろうか。
08:00 冷乗越から1時間ほどで、布引山到着。眼前には重厚な鹿島槍ヶ岳の双耳峰と、そこへ続く上りを残すのみ。圧倒的な景色だね。
南側には、消えそうな雲海の上に八ヶ岳と富士山が浮かぶ。雲があった方が絵になるので、ここで休憩を兼ねて超望遠撮影。こんな日本海に近い場所から富士山がくっきり見えるなんてね。ついでにギザギザ剱岳も。立山~剱岳はまだベタ光線で、もう少し時間が経った方が斜光線でいい感じになる。槍穂高のギザギザスカイラインは、王冠みたい。
残すは鹿島槍ヶ岳への上り一辺倒。ここまで来てまだ十分な体力を残している自分に驚く。これは単にザクで林道歩きを無効化できたお陰だな。
鹿島槍ヶ岳山頂(09:00-09:30)
EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 24mm f11 1/60sec ISO100 PLフィルター
09:00 2度の大休止を入れて、登り始めから6時間で鹿島槍ヶ岳山頂着。17年ぶりとは感慨深い。山頂から見る景色は、前回見た記憶のまま。写真を撮っているため、自分で撮った景色は鮮明に記憶に残るのだろう。後立山連峰の山々には何度も登っているため、どことなく似たような風景ということもあるかもね。
崖の向こうにちょっと低く見えるのは鹿島槍ヶ岳の北峰。前回も行かなかったけど、今回ももういいかな。w 今回も登らないので、もう北峰に登ることはないでしょう。
北側は、五竜岳~白馬岳までの各ピークの重なりがすごい。五竜岳は唐松岳方面から見れば厳つく人を寄せ付けないような山容をしているが、鹿島槍ヶ岳から見ると、稜線の1つの小ピークのようにも見える。
白馬槍ヶ岳の白さと、白馬岳の黒い槍のようなピークが対比的で面白い。白馬三山の縦走は何度か行ったけれど、これもフィルムカメラの時代だったから、撮り直しが必要か。そろそろ行かなければ。
西側は、剱岳~立山~薬師岳と、巨大な山塊が3つ並ぶ。剱岳と立山、もう一度行くことあるかなぁ、微妙だ。薬師岳は、どうでもいいけれど100名山達成した最後のお山。う~ん、前回好条件で撮れたから、薬師岳ももういいかもしれない。
剱岳~薬師岳は、よい斜光線になってきたようだ。それぞれカールやら雪渓やら岩峰やら、山の表情がよく分かるように超望遠で切り取ってゆく。
南東方向は、真っ黒い水晶岳を正面に、北アルプスのいろんなピークが1つの画面に凝縮されている。好条件で撮れている山もあれば、雨で何も見えなかった山もあったり、過去に登った山々の記憶が呼び起こされる。遠い過去を振り返るようで、自分の登山の終焉をどことなく感じる。
気が付けば、信州側から雲が湧き始めている。山頂風景を撮り終えて、鹿島槍ヶ岳、二度登って満足した。もうおそらく来ることはないだろう。
09:30 歩いてきた爺ヶ岳からの稜線と遠くに槍穂高を見ながら、下山を開始する。
下り①(鹿島槍ヶ岳山頂 09:30 ⇒ 11:40 冷乗越)
EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 38mm f16 1/15sec ISO100 PLフィルター
冷池山荘から布引山~鹿島槍ヶ岳の稜線歩きは、石がゴロゴロしているところもあるが、とてもも歩きやすい。傾斜が一定なんだな。
確かにこの区間は歩きやすいが、距離もそこそこあって、冬は西からの偏西風をまともに受け続けるのだろう。冬期の鹿島槍ヶ岳を何度か考えたことがあるが、毎回爺ヶ岳までで限界が近いと感じるので、やはり冬期の鹿島槍ヶ岳は自分では無理なのだろうか、とか考えてしまう。
帰りはチングルマの紅葉が良い光線状態で、真っ赤っか。やっぱり綿毛が綺麗。振り返っても綿毛絨毯。
登山道沿いに池塘が一つ。冷池とはどこの池をさすのだろうか?
信州側を見れば、深く切れ込んだ谷がすぐ近くまで迫る。下から見れば、壁だったからね。
テント場は、みんな撤収して誰もおらず。冷池山荘は、相変わらずテント場から離れている。w
11:00 冷池山荘着。上りはまだしも下りがいつも弱い。CTをほとんど短縮できていないじゃないか。いや、今日は夏日のような暑さで、この暑さのせいにしておこう。
水分はギリギリ足りているが、暑さで参っている。日陰で冷たい飲み物でも飲んでクールダウンしないと運動が持続しなさそう。暑さに負けて、山荘でコーラを購入(450円)。下りの分のエネルギーも胃に押し込んで、生き返った。
あとは一目散に下るだけ、というときに、紅葉と剱岳が絡む場所があり。そうそう、剱岳ドーンよりも、手前に雲海やら雪渓やら紅葉やら、ボスキャラの剱岳なのだから容易に近づき難い奥行き感を出したいんだよね。この写真を最後に、稜線はガスに包まれた。
下り②(11:50 冷乗越 ⇒ 14:40 大谷原登山口)
EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 31mm f11 1/50sec ISO100 PLフィルター
赤岩尾根の紅葉は、行きと帰りで違う光線状態で二度撮れれば、と思っていたが、そこは後立山連峰。全然無理だった。後立山連峰は北アルプス山塊の端で、信州側からの雲が湧きやすい。何度も通っているが、どんな晴れの日でも朝9時には雲に包まれるのが通常という感じ。今日は秋と言うこともあるが、長く晴れていてくれた方か。
ガスっている中、むき出しの岩場を慎重に下る。岩場の下部は、お目当ての紅葉ゾーンが広がるが、ガスで真っ白。鹿島槍ヶ岳の稜線は見えず。まぁこんなもんでしょう。
12:10 白樺平に差し掛かると、一瞬ガスが切れ、紅葉の谷間の向こうに鹿島槍ヶ岳と青空が広がってくれた。そしてまたガス。ちょうど白樺平前後が紅葉エリアで、晴れて欲しかったなぁ。
白樺平で日差しを待ってみるも、日差しは来ず。大漁のナナカマドエリアがあり。全部赤く染まったらさぞ綺麗だろうに。
12:50 高千穂平まで下りると、まったく紅葉しておらず。けど少しだけ晴れ間が広がってくれた。確かに高千穂平は絶好の展望地だ。
高千穂平から下は、下りが苦手な自分にとっては残務処理のような感じ。標高が下がるにつれて気温が上昇し、しかも蒸し暑くてたまらん。完全に夏日だ。
ヘロヘロになりつつも、そこは赤岩尾根。少ない水平移動で効率よく標高を下げてくれる。疲れた足でもだいたい10分で標高差100m弱は下げれる感じで、よいペースだ。赤岩尾根は急登で敬遠されがちかもしれないが、個人的には赤岩尾根ルートは効率的で無駄がなく、素晴らしいと思う。整備して頂いている方々に感謝感謝。
14:00 最後は谷間の堰堤に到達し、西谷出合着。久しぶりの登山の割には、よい感じで下りてこれた。
自分の登山はここで終了。あとはザクに跨り、位置エネルギーを運動エネルギーに変えながら、重力に任せてダウンヒルするだけ。下山後のこのチャリのスピード感が本当に爽快で楽しいんだなぁ。登山とチャリの両方楽しめて、かつ時間と労力も削れて三度嬉しい。
わだちが深くても、フルサスMTBだから無問題。いくら電動といえども、タイヤの細いママチャリだったら、これ無理だと思う。
14:40 ダウンヒルを何度か刻んで味わいながら、20分で大谷原登山口着。やはりザクの威力は絶大。普段使いの稼働率は低いけれど、チャリ登山する限りは絶対に手放せないものだと再認識。
お陰で当初想定していたように、”とっても厳しい日帰り登山”から”ちょっと大変な日帰り登山”へ、難易度を大きく下げてくれた。
山登りは大変だけれど、やっぱりお山はいいな、と再認識。これからは回数を絞って、少ない確実なチャンスに資源をあてていこう。