関東・信越

〔100名瀑〕石空渓谷_精進ヶ滝/九段の滝 ~東日最大級!大瀑布の滝壺まで~

121mと東日本最大級の落差を誇り、日本の滝百選にも選ばれている北精進ヶ滝。
今まで渓谷道終点の観瀑台から遠望するだけだった北精進ヶ滝は、実は滝壺まで行けるらしい。
そこそこの登山経験を積んだ今なら、そろそろ滝壺まで行ってもいい頃合かな。
北精進ヶ滝と九段の滝の滝壺までのルートを、詳細案内します。

shibawannkoのワンポイントアドバイス/ルート

精進ヶ滝駐車場 08:30 ⇒ 12:10 精進ヶ滝 ⇒ 14:00 精進ヶ滝駐車場
(1)難易度
レベルとすれば、沢登り経験者であればロープ確保無しで済む易しいレベル。
登山経験者であれば、沢靴とヘルメットと保険を用意してチャレンジしましょう、という程度です。
しかし、安全の確保された登山道ではないバリエーションルートであるということを念頭に、慎重な行動が望まれます。
土の斜面は踏み跡があったとしても安全とは言えず、大量の雨後とかは緩んで斜面ごとごっそり崩れ落ちることもあります。
以前私は沢で斜面ごとごっそり持って行かれて、一度だけ重傷を負いました。
(2)ルート順序
ルート順序は、①渓谷道終点_展望台→②九段の滝→③精進ヶ滝の順が良いです。
この順序であれば、無駄なく全ての見所を網羅できます。
そして気持ちの盛り上がり方として、①滝遠望で盛り上がる→②九段の滝で度肝を抜かれる→③ラスボスの精進ヶ滝でさらに驚く、という順番が一番効用が高くなると思います。

山行記録 2019年6月23日

一の滝二の滝(09:20~09:40)

EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 50mm f16 1/5sec ISO100 PLフィルター

早朝の時間を入笠山に当てた後、急いで石空渓谷まで移動。
08:30 長い長い無名の林道を走って駐車場着。
この林道、ナビに入ってないやんけ。
仮設トイレが設けられた広い駐車場から、大きな吊り橋を渡って渓谷道に入る。
最後に行った石空渓谷は既に20年近く前かな。
渓谷内の滝々はよく覚えているけれど、細かな周辺の記憶がない。

石空渓谷には、季節を変えカメラを変え、もう4~5回は来ているでしょうか。
今回は緑の季節と滝撮影に適した曇り空を確実に合わせての再訪。
この好条件の中、北精進ヶ滝と九段の滝まで撮り切って石空渓谷の集大成としよう。

EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 33mm f16 0.4sec ISO100 PLフィルター

吊り橋を渡って10分ほどで、最初のハイライトである一の滝と二の滝に到着する。
いきなし石空渓谷のメインと言ってもおかしくないほど、一の滝と二の滝が重なり素晴らしい景観が広がります。
一の滝も二の滝もシンプルですが、非常に形の整った美滝。
一の滝と二の滝の間に渓流を横断する頑丈な造りのアーチ橋がかかり、違和感なく渓谷に溶け込んでいる。

三の滝/竜洗峡

EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 63mm f16 0.8sec ISO100 PLフィルター

二の滝横の急な階段を上ると、吊り橋下に小ぶりな三の滝が現れる。
小ぶりな三の滝ももったいないので、下に下りて撮ってみる。
石空渓谷は、名前の付いている滝だけでなく、名前の付いていない渓流瀑も綺麗。
渓谷道沿いの渓流瀑を余すところなく撮っていきます。

渓谷道沿いに歩いていくと、目立たないですが「竜洗峡」とある。
流れの緩やかな浅瀬に花崗岩の白砂が堆積し、浅瀬の奥には渓流瀑が流れる。
美しい~。
水が透明過ぎて、水が流れているのが分からないくらいです。
石空渓谷は、白い花崗岩を基調とした開けた明るい渓相で本当に綺麗。
渓谷の中では断トツの綺麗さで、自分的には一番好きな渓谷です。

竜洗峡を過ぎると渓流は徐々に荒々しくなる。
よく見ると、一部屋くらいの大きさの大石が点在する。
北精進ヶ滝への渡渉ポイントはどこだろう?
気になりつつも歩いていくと、渓谷道の終点の精進ヶ滝の観瀑台に着いてしまった。
渡渉ポイントは、まったく分からなかった。

精進ヶ滝展望台~九段の滝

EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 70mm f11 1/15sec ISO100 PLフィルター

展望台からは北精進ヶ滝と九段の滝が連ねて、やたら縦に長く落ちる。
北精進ヶ滝と九段の滝を、展望台から一通り望遠レンズで切り取ります。
今日は曇り空で、深い谷を落ちる北精進ヶ滝に陰影が付かなくてよい。
通常であればここで終わり。
渓谷道を引き返すことになりますが、今日はここからが本題です。

一般の方はここまで。
「登山・沢登り経験と十分な装備があり、すべて自己責任で行動できる人を除いて」との解釈で進みます。
ここから先は踏み込んだことのない世界。
あの絶壁を落ちる2つの巨瀑に近づいていくとは恐ろしい。
意を決して、展望台から九段の滝方向へ足を踏み入れます。

展望台からは踏み跡を辿って沢に下り、右手から流れ込む浅い流れを徒渉します。
正面に九段の滝を見ながら進むと、白砂ビーチと清廉な水をたたえる淵が現れる。
ここから先は濡れずに進むことができなさそうなので、覚悟を決めて沢靴に換装。
さて、どこを進めばよいのだろう?

九段の滝(11:20~11:40)

EOS5DsR+EF16-35mmF4L IS USM 24mm f16 0.6sec ISO100 PLフィルター

11:20 小滝と流木を乗り越えると、広い広い九段の滝の滝壺に降り立ちました。
おお~、すげぇ~~~~~っ!
今まで滝を巡ってきた中で、一番のインパクトかもしれない。
当然誰もいないし誰かいたとしても爆音で聞こえるはずがないので、叫んでやった。
大滝を目の前にすると叫びたくなる衝動に駆られるのは、滝の持つエネルギーによるものか。
黒い階段状の岩盤を天から降り注ぐような圧倒的な迫力で迫る九段の滝。
怖い怖い初めての沢ルートを乗り越え(超短いですが)、開けた安全地帯に出て安堵した反動もあり、不安よりも感動が勝った瞬間でした。

この九段の滝の凄さから、ラスボスの精進ヶ滝のことなんか完全に忘れてます。
九段の滝も100名瀑でいいんじゃない?
そのくらい滝壺まで来ると圧倒的な滝でした。
あまりにも感動したので、普段撮らない自撮りも入念に撮ってみたり(笑)。
やはり、滝の大きさを伝えるには人を入れた方がいいかな~って思ったので。
九段の滝ですでにもうお腹いっぱいです。
大満足です。

九段の滝~精進ヶ滝

EOS5DsR+EF16-35mmF4L IS USM 24mm f16 1/6sec ISO100 PLフィルター

今帰っては精進ヶ滝が心残りになるので、この機会に残さず行ってしまいましょう。
問題はどこから九段の滝を高巻けばよいか、取り付きポイントが分からない。
右岸の斜面を注視しながら流れを下りていくと、少し下った地点で赤テープを発見。
結構な急斜面ですが、これ以上下流に歩いても稼いだ標高が無駄になるので、ここから上がることにしました。

フコフコで崩れやすい土の急斜面が嫌らしく、崩れ落ちないように慎重に登ります。
最初にあった赤テープも登っていくと赤テープはなくなる。
多分よく使われるルートから外れたのかもしれませんが、登れないことはない。
しばらく行くと、左側から踏み跡らしきルートと合流し、赤テープが復活しました。
通常、もう少し下流側から斜面に取り付くんでしょう。

その後は短い間隔で赤テープが現れ、登山道とはいかないまでも踏み後はしっかりしていて迷うことはありません。
九段の滝より高い所まで登ると、沢に下りるように斜面をトラバースしてきます。
結構な高度のところをトラバースするので、万が一滑り落ちたりすると、九段の滝に合流して流れていくことになります。

九段の滝を右岸から高巻き終えると、渓流に合流します。
眼前には、前衛の滝と天から降ってくるような精進ヶ滝が立ちはだかる。
うわぁ~、すっげ~~~な。。。
九段の滝と同様に、感動というよりも恐怖といった方が近いかもしれない。
ここから撮って終わりでもいいのかな?っと一瞬思いましたが、あと少しなので滝壺まで完全制覇しましょう。

精進ヶ滝の滝壺へは、飛沫を浴びながら前衛の滝前を徒渉して、左岸の大岩の重なりを登っていきます。
よ~し、こっから先はおサルだな。
下から見ると滝壺はまだまだ先に見えますが、実際は10分程度でそれほど時間はかかりません。
ここまで来て滝壺まで行かないのはもったいないです。
おサルになって大岩を乗り越えていくと、非常に鋭いトゲを持った見たこともない黒い茎の植物が絡まったり。
痛ったいわ、これ!

精進ヶ滝(12:40~12:50)

EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 28mm f11 1/4sec ISO100 PLフィルター

ガレた足場に気を付けながら詰めてゆくと、滝壺上の大岩に到着。
きた~~~~っ!
ようやく滝壺まで来たよ~~~っ!
一息ついて、お仕事お仕事。
余すところなく撮り納めます。
落差も凄いし岩盤も大きすぎて、近づくとかえってよく分からない。
落差の割には滝壺はほぼありません。
落ちた大量の水が、水飛沫に変わって飛散していく。

九段の滝と同じく、精進ヶ滝の大きさを表現すべく自撮り。
けれど、近くに立ちすぎてあまり滝の大きさを表現できなかった(笑)。

精進ヶ滝~登り口

EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 24mm f16 0.4sec ISO100 PLフィルター

石空渓谷の滝々と、今回の目的だった九段の滝と北精進ヶ滝を撮り尽くして目的を達成。
ルートも分かりもう怖いものは何もありません。
この行きの不安感と帰り安堵感の差が激しすぎて笑える。
充実感と満足感を胸いっぱいに、来た道を忠実に帰るだけです。

慎重にトラバースして急斜面を下っていきます。
赤テープに従って下りて行くと、すんなり沢に下りることができました。
赤テープに導かれて下りた沢は、花崗岩が砕けた白砂が堆積する美しい淵で、渓谷道からは見えない場所です。
いやぁ、こんな所があったんですね~。
水が透明すぎてなにも流れてないようだ。
白い花崗岩と淡い翡翠色の淵が美しすぎる。
沢靴を洗うのにちょうどよい淵なので、ここで沢靴から登山靴に換装する。
ヘルメットももういいか。
家帰って洗う手間を省くために、ここで沢靴を綺麗に洗っておきましょう。

登山靴で徒渉して土の斜面をよじ登って渓谷道に合流。
ちょうど「No.3」の看板が立っている裏に飛び出ます。
なんだ、こんなところから徒渉するのか。
知らないと確実に通り過ぎますね。

渓谷道に合流して確実に安全地帯に戻りました。
ああ~~、良かった。
あとは登山靴で軽快に渓谷道を戻るだけ。
徒渉してから九段の滝~精進ヶ滝間は誰にも会いませんでしたが、帰りの渓谷道では釣り師や観光客数名とすれ違いました。

何て素晴らしい渓谷とプラスアルファのダブル大滝なんでしょう。
今回初めて九段の滝と北精進ヶ滝に行って、石空渓谷の魅力と効用が倍増しました。
満足しました、石空渓谷。
南アルプスの美しい渓谷に感謝感謝。

リスクもあり恐怖で逃げ帰りたくなる瞬間も多い沢登りですが、それを乗り越えた分だけ達成感がある、というのが沢登りの魅力でしょうか。
この石空渓谷は、渓谷道だけ普通に歩いても美しい渓谷美が楽しめる。
さらに沢装備で臨めば、恐怖すら覚える九段の滝と北精進ヶ滝という最大級のご褒美がまっている、素晴らしい渓谷です。
沢登りでも、この九段の滝や精進ヶ滝クラスの巨瀑を見ることができる沢は、なかなかないのではないでしょうか。
沢登り未経験者を初めて連れてくるにはぴったしな場所だと思います。
沢登りの魅力に取りつかれること間違いないでしょう。
石空渓谷+九段の滝と精進ヶ滝、お勧めです。

今日の必須アイテム

□ 装備①_沢靴
北精進ヶ滝の滝壺への記録を見ると、「登山靴+裸足で徒渉」という記録も出てきます。
しかし渡渉も数箇所かあり、沢靴のグリップ力の強力さを考えれば、フェルト底の沢靴を用意すべきです。
九段の滝右岸高巻きの土の急斜面も、フェルト底の沢靴は登山靴以上にグリップがあります。
渓谷道から入渓・徒渉する時点から、フェルト底の沢靴に換装した方が良いです。

崩れやすい土の急斜面では、急激な過重移動は避けるべきです。
そのため、過重を分散して過重移動を緩やかにするためにも、ダブルストックがあると非常に重宝します。
当然ながら急斜面だけでなく、滑る苔付きの岩の上でバランスを取るにも有効です。断然あった方がいいです。

MAMMUT(マムート) Wall Rider 56-61cm chill 2220-00140

もしものとき用です。
滑落の危険や落石の直撃を受ける沢筋を行く沢登りでは、言うまでもなく必須です。

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