南アルプス

〔100名山〕北岳/間ノ岳/農鳥岳 ~3度目の正直!1泊4日?で白峰三山冬季縦走~

年末年始は、普段行けないピリッとする冬山にチャレンジしてみたい。
この時期北アルプスは決まって天気が悪いから、天気の良い南アルプスか。
冬季の白峰三山縦走を思い立って今年で3年目。
直近2年間は、装備が足りなかったり怖気づいて北岳で戻ってきた。
その間いろんな冬山を行ってみて、自分なりの冬山装備を整え、若干の冬山経験を積んで、今年こそ三度目の正直で冬季の白峰三山縦走か!

冬山装備は整っているが、昨年後半は山に登れてなくて体力・筋力はガタ落ち。
重たい山行前に体を作っておきたかったけれど、その暇もなく年を越した。
本番が体力づくりのトレーニングになってしまったよ。
はたして冬季の白峰三山縦走はできるのか?う~ん、怖い...。
仙丈ヶ岳か甲斐駒ヶ岳にするかとも迷うも、なんかちょっと違う。
やっぱり3,000m稜線の冬季縦走だ!ということで白峰三山に行ってきました。
目的は3つの3,000m峰の朝焼けと夕焼けを余すことなく撮りつくすこと。
願わくば、朝と夕方だけはしっかり晴れてくれれば最高なんですけれど。

ルート/shibawannkoのワンポイントアドバイス

〔1日目_山行〕12時間30分 /〔休憩〕3時間 /〔合計〕15時間30分
奈良田第一発電所 19:40 ⇒ 22:30 アルキ沢橋 BS ⇒ 22:50 ⇒ 02:00 池山御池小屋 02:40 ⇒ 06:30 ボーコン沢ノ頭 07:30 ⇒ 09:10 八本歯のコル 09:30 ⇒ 11:10 吊尾根分岐 11:30 ⇒ 12:10 北岳12:30 ⇒ 14:20 北岳山荘
〔2日目_山行〕12時間50分 /〔休憩〕3時間40分 /〔合計〕16時間30分
泊北岳山荘 08:50 ⇒ 09:50 中白根山 10:00 ⇒ 11:30 間ノ岳 12:00 ⇒ 13:20 農鳥小屋 13:50 ⇒ 15:10 西農鳥岳 15:20 ⇒ 16:00 農鳥岳 16:10 ⇒ 16:50 大門沢下降点 17:00 ⇒ 20:00 大門沢小屋 21:00 ⇒ 23:50 早川水系発電所取水口 ⇒ 00:20 森山橋 01:20 ⇒ 01:50奈良田第一発電所

〔難易度〕 ①40km②標高差2,300m冬山テント装備を担ぎ上げ、3,000mの稜線を縦走できる体力が必要
〔危険箇所〕ボーコン沢の頭/吊尾根分岐~農鳥岳/大門沢下降点等、稜線上は強烈な西風に晒される。
八本場のコル年末年始はほぼトレースが作られ、ロープが出ていることがほとんど
● 北岳山頂下の雪壁 ⇒ 雪の多いと雪壁が発達し、直登又は夏道トラバース区間が長くなる。東側の岩場で回避可。
● 吊尾根分岐下の雪壁トラバース ⇒ 雪の多いと雪壁に発達し、トラバース区間が長くなる。
間ノ岳の南斜面でのホワイトアウト広大な多重山稜で迷いやすく、視界が悪いときはホワイトアウトの危険大
西農鳥岳下の雪壁 ⇒ それなりの距離を直登&トラバースすることになり、また視界が悪いと方向が分からない。
西農鳥岳~農鳥岳の稜線3,000mの稜線区間が長く続くため、長い時間強風に晒され続けることになる。
農鳥岳~大門沢下降点のホワイトアウト 稜線下は一面の雪原で、視界が悪いときはホワイトアウトの危険大
〔登山装備〕
稜線上は強烈な西風に晒されるため、氷点下15度の烈風でも長時間耐えられる防寒・防風装備が必須
ホワイトアウトするとルートが全く分からなくなる場所があるため、GPS必須(+モバイルバッテリー)
〔展望箇所〕ボーコン沢の頭から北岳が眼前に現れる。それ以降の稜線上は広大な展望が次々と展開していく。

山行記録 2020年1月2日~3日

(1日目)19:40 奈良田第一発電所 ~ 02:00 池山御池小屋 ~ 06:30 ボーコン沢ノ頭

明日は終日天気がよさそう。
早朝はボーコン沢ノ頭から北岳バットレスの朝焼けを狙い、夕方は北岳山荘から北岳西面の夕焼けを撮れれば晴天一日を最大限有効に使える。
朝にボーコン沢の頭にいるためには、11時間前の19時に奈良田を出ればよいか。
中央高速の車窓から見る夕景の南アルプスは雲ひとつない快晴。
今あそこの稜線にいれれば最高の夕景が見れただろうに。快晴の天気が恨めしい。
快晴の1日を逃したということは、後ろの晴天が1日減ったということか。
間ノ岳から農鳥岳を縦走する2日目の天気がもってくれればいいんだけれど。

19:40 奈良田発電所発 → 22:30 アルキ沢橋BS着
いつものごとくゴタゴタ出発で、1時間出発が遅れてスタート。
冬の北岳は3回目なので行程にまったく心配ないが、太陽は待ってはくれない。
なんとしても夜明け前にボーコン沢ノ頭に着かなければならない。
今回は体力に自信がないので、無理せず焦らず行きましょう。
淡々と省エネモードで歩いていくと、ほどなくしてアルキ沢橋BSに到着。
3時間を切ったのは今回が初めて。
年末年始に体をしっかり休めていたのが良かったのかな。

22:50 アルキ沢橋BS発 → 02:00 池山御池小屋着 02:40 → 06:30 ボーコン沢ノ頭
アルキ沢橋BSで食料を少し摂ってから急登を登り始め。
するとほどなくして樹林帯が一面の雪で覆われている。
ここから雪があるとは、今年は雪が多いのかな?
なぜか調子いいのか今回。意外に疲れることなく3時間ほどで池山御池小屋着。
池山御池小屋には数パーティが就寝中の様子。
ここから先は気温が下がるため、ダウンパンツを下に着込んで出発。
ボーコン沢ノ頭までは急登が続き、さすがに疲れ始めてペースが上がらない。
3時間半あればボーコン沢ノ頭へ着くかと思いましたが、なっかなか着かない。
夜明けに間に合わないと努力が無に帰すので急いで間に合わすしかなし。

(1日目)07:30 ボーコン沢ノ頭 ~ 12:10 北岳山頂 ~ 14:20 北岳山荘

EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 70mm f8 1/30sec ISO100 PLフィルター

06:30 息を切らせてギリギリ夜明け前にボーコン沢ノ頭に到着。
行動開始から10時間強、やっと着いたよ~。
自分の装備と体力だと、奈良田からは10時間は切りませんね。
天気は快晴、氷点下17度でなんとなんとの無風。
ボーコン沢ノ頭と言えば風の通り道で、通常は烈風が吹き荒れていて、北岳に来たことを後悔するか又は飛んで逃げ帰りたくなる場所なんですけれど。
暗闇の中、白い真ん丸モフモフのライチョウが5羽雪の上にいましたが、飛び立っていってしまった。
しばらくして虹色の朝焼けが上空から下りてきた。
真正面に聳える北岳バットレスが、真っ赤に染まる。
これだけ近くで北岳の朝焼けを見れると、鳳凰三山にはもう行かなくていいかな。
間ノ岳の北岳から続く長い稜線も赤く染まる。
農鳥岳は焼ける部分が少なく影が多め。甲斐駒ヶ岳も遠くの八ヶ岳もスッキリ快晴。
まずは初日朝の朝焼けをしっかり撮れて一安心。来た甲斐ありました。
マジックアワーが終わると、不眠と長時間歩行の疲れがどっと出てくる。
満足しました。もう本気で帰ってもいいとか思えてきた(笑)。

EOS5DsR+EF16-35mmF4L IS USM 20mm f16 1/100sec ISO100 PLフィルター

疲れて弱気になっているだけと言い聞かせて、北岳山頂に向かう。
八本歯のコルまでは、半寝状態で超スローペース。というか歩きながら寝てるよ。
八本歯のコルは年末年始の登山者で、しっかりトレースができています。感謝感謝。
眠疲れて超スローペースなので、次々に身軽な御池小屋発の登山者に抜かれる。
なんだか重いテントを背負って北岳山頂を目指している自分が大変に思えてくる。
よっぽど白根御池小屋にテント宿泊セットを置いてきたかったよ。
しかし、白峰三山縦走や夕焼けを撮るには、北岳山荘まで担ぎ上げるしかなし。
八本歯のコルより先は、悶絶苦しい急斜面がひたすら続く。

11:10 吊尾根分岐着。
ここまで来たら山頂までもうひと踏ん張り。
カメラとテント等の荷物を分離できないので、デポせず重荷のままアタック開始。
するとなんと、バーンっと雪壁が立ちはばかる。
今年は雪が多いのか、過去2回と比べても断然雪壁のスケールが大きい。
雪は固く締まっていたので、「下りはどうするんだろう?」とか僅かな不安を覚えつつも、アイゼンをを効かせて直登する。

EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 41mm f16 1/80sec ISO100 PLフィルター

12:10 行動開始から16時間かけて北岳山頂着。
山頂のほとんどはクリーミーな雪で覆われ、巨大な滑り台を作っていた。
冬季北岳はもう三度目なので、軽く山頂景色を撮って引き上げます。
巨大な雪壁は、怖いけれどそのままクライムダウンするかと思っていましたが、東側の岩場と草付きを辿ると、安全に吊尾根分岐まで下りることができました。

EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 35mm f8 1/50sec ISO100 PLフィルター

後はダラダラと北岳山荘まで下るだけ~、と思っていたら雪壁トラバースが現れる。
雪が多いので、雪壁トラバースの区間は相当な距離がありそう。
若干下りながらも、その距離は40~50mはありそう。
ただでは通らせてくれない、手強い北岳といったところでしょうか。
カニの横ばいで一歩一歩確実に慎重に進むしかない。
既にステップが切ってあったので、安全確実に進めましたが、1ヶ所だけ岩の日陰になっていたのか爪がほとんど刺さらない箇所があり、えらく緊張しました。
これをトップバッターでルートファインディングしてステップを刻むとなるならば、飛んで逃げたくなったことでしょう。先行者に感謝感謝です。
明日天気が悪くて縦走を中止して引き返すことになった場合、朝このトラバースを引き返すのが非常に嫌な感じがする。
弱気になって、御池小屋に戻ってしまった方が良かったのではと思ってしまう。

14:20 細かいアップダウンを繰り返して、北岳山荘着。
吊尾根分岐から意外と長いのよね、この区間。今年もお世話になります、北岳山荘。
17:00 狙い通り夕方まで快晴が続き、間ノ岳方面へ少し上ったところから夕景撮影。
16時間行動で大変でしたが、朝焼けと夕焼けの両方を撮れた有意義な1日でした。
間ノ岳と農鳥岳を縦走する明日も晴天が続いてくれると良いのですが。

(2日目)08:50 北岳山荘 ~ 11:30 間ノ岳

EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 50mm f16 1/5sec ISO100 PLフィルター

02:00 中白根山で朝焼けを撮るべく早起きして外に出ると、真っ白だよ。
残念ですが冬山ではよくあること。そのまま二度寝。
06:00 寝過ごして起きると、既に東の空は明るくなり始めていた。
初日が疲れすぎていたのか、10時間寝つくしてかなりスッキリした。
明日同じく白峰三山を縦走すると言っていた同部屋の方は、既に出立していた。
飛び起きて外に出ると、上空は雲がかかり北岳と間ノ岳は雲の中。
ああ~寝坊して良かった、と変に安心しながらも、富士山の朝焼け撮影。
上空から雲が下りてきて、幻想的な日の出となりました。
北岳と間ノ岳の朝焼けは雲がかかっていましたが、日の出の写真が撮れてよかった。

EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 30mm f16 1/125sec ISO100 PLフィルター

08:50 遅い朝食を摂っていよいよ縦走開始。
朝方は雲の中だった間ノ岳と北岳はスッキリ姿を現している。
仙丈ヶ岳は雲を被ったまま(仙丈ヶ岳にしなくてよかった)。
ここから先は、冬季未知の世界。ここまで条件が揃ったら、もう行くしかない。
稜線の風は猛烈に強くて不安に駆られるが、同部屋だった方のトレースが残っていることが心強い。
今日一日、この先行者のトレースが随所で自分を勇気づけてくれました。
感謝しきりです。
初めて白峰三山を縦走すると言っていましたが、凄いお人だ。
よほどの雪山経験と強い心をお持ちの方なのでしょう。

09:50 強烈な西風に煽られつつも、なんとか小ピークの中白根山へ到着。
中白根山までは、西側の岩場に逃げることなくほぼ稜線上を行く感じ。
ここまででも強風に怯えながらルートを探しつつ、それなりに消耗しました。
今日は最低でも日没までに稜線を抜けて大門沢下降点まで辿り着ければOK。
稜線を抜けたその後は何とかなるはず。
3,000mの稜線の行程の1/5を取り合えず進めた。
あと1時間の距離で3,190mの間ノ岳のピークが見えている。
振り返ると、真っ白な北岳が鋭さを増して槍ヶ岳のように聳えている。
素晴らしい~。ここまででも何気に満足!

そのまま間ノ岳へ歩を進めると、稜線の西側の斜面を進む。
中白根山までよりも地形的に風は弱くなり、ルートも明瞭になる。
天気も良く不安も去り、1人こんな場所を歩いていることに喜びを感じる。
しかし、急激に雲が西から流れて来てあっという間に太陽を覆い隠す。
ええ~っ!今から天候が崩れると、3,000mの稜線縦走が危ぶまれるんですけれど。。。
天気予報、「今日晴れ」って言うたやないけ。
せめて間ノ岳から向こう側の景色を見させてくださいよ。
一面真っ白くなってしまったが仕方がない。間ノ岳までは行こう。
間ノ岳のピークが見えてくると、薄い雲越しに太陽の位置が確認できるようになる。
もしかして晴れる?晴れてくれる!?
氷点下15℃の烈風だが、自分なりに整えてきたウェアリングで全く寒くない。

EOS5DsR+EF24-70mmF2.8LⅡUSM 38mm f16 1/125sec ISO100 PLフィルター

11:30 間ノ岳へ到着すると雲が千切れて晴れ間が見え始める。
激しく流れる雲の合間から北岳が姿を現し始める。
おお~っ、ドピーカンで見るよりカッコイイ。さすがに標高2位の山だけある!
南側が依然として雲が高く湧いているが、一瞬だけ農鳥岳が姿を現してくれた。
今日後にも先にも農鳥岳のピークを見たのはこの一瞬だけだった。
西側の富士山は雲一つない快晴状態。
自分の登ってる山には雲がかかって富士山は晴れているって、南アルプスではよくあるパターンだ。
そうこうしているうちに北岳も周囲も雲に覆われてしまいました。
ここまで来たら当初の予定通り、農鳥岳を越えて帰るだけ。戻りはしない。

(2日目)12:00 間ノ岳 ~ 13:20 農鳥小屋

12:00 準備を整えて間ノ岳山頂発。
間ノ岳の山頂はだだっ広い。
あたり一面雲に覆われて視界が効かず、今日1回目のホワイトアウト状態。
先行者のトレースも既に風に消されて、どちらに行って良いかも分からない。
焦って気が動転したのか、手前の尾根から下り始める。
しかし嫌な予感がする。
GPSで確認すると、かなり手前の尾根を下り始めてしまっていた。
地図には「一番左の尾根を下る」と書いてあったのに、焦るとろくなことがない。
尾根を2つほど跨いぎながら下りて、本来のルートに合流して一安心。
間ノ岳の南斜面は、以前秋に来た時も道を外した多重山稜の分りずらいルート。
雪を被って視界も失われたら、迷うに決まっとろーが。
地図も当然持っていますが、雪山でGPSは必須です(死ぬかと思ったわ)。

農取小屋までは復活した先行者のトレースに導かれて軽快に下る。
トレースがあったから楽だったものの、ここもどこを歩いてよいのか分からない。
トレースがなく視界もなかったらGPSで確認しながら進むしかないでしょう。
本当にトレースには感謝感謝です。

13:20 稜線の最低基部から少し上ったところでようやく農取小屋が現れる。
ここまで来たのは、もう15年くらい前のことでしょうか。
20時に到着したら、オヤジに怒鳴られてビックリしたのを今でも覚えている(笑)。

見上げる農鳥岳のピークは雲で覆われているが、ときより明るくもなる。
このままゆっくり行けば、農鳥岳で夕景が撮れるかも、と最後の望みは捨てない。
農取小屋のくぼ地で風よけしながら、腹ごしらえ。
縦走路の一番の難関と言われる西農鳥岳の雪壁トラバースは晴れていて欲しかった。
夕方には晴れるかも?っと期待していましたが、空はさらに暗く厚みを増す。
農鳥岳からの夕景撮影どころか、日没までに大門沢下降点に辿り着かないおそれも出てきた。
さらなる心配事は、農鳥岳から先の大門沢コースは歩いたことがないのだ。
天気も悪く難所を残して暗くなる前に稜線脱出が危ぶまれるとは、最低な展開だ。
農鳥小屋でもう1泊することも考えたが、明日晴れなければ状況は変わらないし、先行者のトレースも消えてしまうことからも、今日中に農鳥岳を抜けきることにした。

(2日目)13:50 農鳥小屋 ~ 15:10 西農鳥岳 ~ 16:00 農鳥岳 ~ 16:50 大門沢下降点

13:50 吐きそうに不味い乾燥フードを腹に詰め込んで、農取小屋を出発する。
暗雲立ち込める農鳥岳と未知なるルートが恐ろしくてたまらない。
①低温、②空腹、③疲労の3つの条件が揃うと疲労凍死に至るという。
今の自分の状態を3つの条件に照らし合わせて見ると、
①は氷点下15℃の烈風の中でも準備してきたウェアリングでホカホカ寒さは感じず、
②は今しがた美味しくない乾燥フードを詰め込んだのであと2時間は持つでしょう、
③は昨晩10時間睡眠したし今しがた大休止をとったのでまだまだ元気。
ということは、道迷いや滑落さえしなければOK!
ということで、落ち着いて臨めば農鳥岳も大丈夫でしょう、と自分で自分を鼓舞して農鳥岳に臨む。

雪は風に飛ばされて比較的少ないのか、夏道は途中までよく分かりました。
中腹まで来ると一面の雪壁が現れる。
雪もしっかりしていて、先行者のステップも残っているので、落ち着いてクリア。
直登だったけれどこれが噂の難所のトラバースかな?とか思っていたり(違った)。
さらに高度を上げて西側の岩場を回り込むと、なんと壁だよ!雪の大壁だよ!
視界もほとんど効かない状態で難所のトラバースが現れた。
うゎ~、マジっすか。落ちたら死にますよコレ!恐ろしぃ~。
記録によれば雪壁のトラバースを避けて岩場を直登して乗り越えている方もいるようでしたが、視界が効かないのでどこを登ってよいかも全く分からない。
幸いなことに先行者の明瞭なステップが切ってあるので、それに頼るしかない。
トラバースといっても、最初は10mくらい直登した後に横に10mくらいトラバースする感じでしょうか(緊張してたので距離は自信ありません)。
登山者でごった返すGWの奥穂の雪壁よりもよっぽど恐ろしいわ!
もし仮に先行者のステップが消えていたら1人でクリアできたかどうか。
この視界の効かない状況下でステップがなかったら、自分の実力では引き返すしかなかったように思える。
直登やトラバースはいい加減にそこそこ慣れてきたので無事に通過できましたが、このような状況で難所を迎えてしまったことに反省しきり。
反省どころかまだまだ先は長い。

15:10 難所のトラバースを越えて何とか西農鳥岳に到着。
難所を越えて一安心するも、ここから先も3,000mの稜線が続き、歩いたことがないので基本ルートは分からない。
まったく安心できない状況だが、少し空腹になってきただけでまだまだ歩ける。
西農鳥岳から農鳥岳へは、夏道の露出した岩にペンキマーク伝いに行くが、視界が悪く方向を変える場所で所々ルートをロストする。
氷点下15℃の烈風吹きすさぶ3,000mの稜線で道迷いとは考えただけでも恐ろしい。
一刻も早くこの稜線を脱出したい。暗くなる前に。
視界が効かず迷う場面が何度かありましたが、だんだん慣れてきた。
怪しい方向に下りる又は進む前にGPSで方向を確認すること!

16:00 なんとか方向を確認しつつ、ようやく農鳥岳に到着。
やっと着いたよ~。
農鳥岳からは間ノ岳と北岳の素晴らしい夕景を撮る予定でしたが、もうそれどころではない。もうそんなことはどうでもいい。早く安全地帯に脱出したい。
それでも白峰三山縦走できたことに少しの喜びと達成感を感じた。
自撮りをするとカメラは強風で吹っ飛んでいくので、降ろしたリュックと標識を記念撮影。
リュックは強風で飛んで行かないように、念入りにピッケルでブッスリと固定。
なんだか真っ白く雪を被って遭難者の遺物みたいだな(笑)。

まだまだ油断はできない。大門沢下降点まで標高の高い稜線歩きは続く。
農鳥岳からは、ナイフリッジとはいかずともきわどい尾根上を歩く。
ペンキマーク等の目印は全てなくなり、先行者のトレースだけが頼りとなった。
やがて稜線から外れて下る場面になると、一面の雪原で今日2度目の完全なホワイトアウト状態に突入。
先行者の足跡もかき消され、視界も効かず当たり一面暗くなってきている。
これは、ひどい。。。
慎重にGPSで方向を確認しながら、大門沢下降点を目指す。
ヤマレコマップの矢印の先が示す方光線が便利だなぁ~、とか思いつつも。
雪山では本当にGPSが命綱です。
スマホのモバイルバッテリーも持ってきておいて本当によかった。
一面の雪原を突き進むとそれらしい岩場が見え、そこにうっすら登山道が見える。

16:50 平坦な登山道を進んでいくと、ようやく大門沢下降点の鐘に辿り着いた。
大門沢下降点は風が強い場所らしく、雪が飛ばされて地面が剥き出しになっている。
大門沢下降点に着く少し手前で、強風で飛ばされ転倒してしまった。
ウェアー等何も破れずに事なきをえてよかったよかった。
下降点の鐘を打ち鳴らして、生還を確信した。

(2日目)17:00 大門沢下降点 ~ 20:00 大門沢小屋 21:00 ~ 01:50 奈良田第一発電所

17:00 強風吹きすさぶ稜線を離れて一安心して、大門沢を下降開始。
大門沢下降点から適当に下り始めると、あまりの雪深さにすぐに息絶え絶えになる。
雪深いとは聞いていましたが下りだから大丈夫かな?なんて見当違いな考えだった。
すぐにトレースと合流して一安心。後はトレースに通りに大門沢小屋まで下るだけ。
しかしこのルートは急で雪が深くて、とても自分だったら上りには使いたくない。
トレースなければ、ルートファインディングも含めてお手上げではないでしょうか。
本当に降雪後にルートを刻む人の偉大さが分かります。
今回は他人の刻んでくれたトレースを使わして登らせてもらっている感じです。

20:00 軽快に雪道を下って大門沢小屋着。
さすがにもう疲れました。シャリバテ気味だったので、まずは腹ごしらえします。
避難小屋には5人くらい就寝していたので、静かに残りの食糧を食べまくり。
奈良田発電所までは、残り3時間強のコースタイム。
もうさすがに休みたいですが、たかだか3時間でテントを張りたくないし、今日中に早く帰りたいのだ。

21:00 1時間くらいかけて食べまくって元気になったので、帰ることにした。
標高差の割にはコースタイムが長いな~、と思ったらその通り。
大門沢のルートは、急斜面あり、倒木あり、沢歩きあり、渡渉(橋)あり、崖あり、なんでもありのコースで、今いるここが南アルプスということを知らしめてくれるコースっだった。
白峰三山の縦走を終えた登山者には、とっても優しくないコースだった。

発電所の取水口にある吊橋を渡ると、大きな橋を架けている最中であった。
橋げたの下をくぐり進んでいくと、だだっ広い河原に辿り着き、そこから登山道がまったく行方不明。
GPSや地図上では川を渡るはずだが、そんな箇所は見当たらない。
絶対違うと思いつつ川の右岸をそのまま突き進むと、堰堤に突き当り進めない。
20kg近くある重いリュックを背負い、歩きづらい河原を行ったり来たり。
1時間くらいさ迷うものの水も切れてさすがにヘタリ込んでしまった。
ヘッドライトの電池残量はあるが、GPSの電池は残りわずかだ。
完全に道に迷った!下山口まであと30分の距離で。どうする?どうしよう?
河原でテントを張って翌朝道を探すかとも考えるが、朝になって道が分からなければ状況は悪化するし、人が必ず通るとも思えないし時間を無駄にするだけだ。
正月早々「冬山行ってくる」とか言って出てきたので、一日も早く家族の元に戻って下山報告したいのだ。こんな暗い寒い河原で寝ていられるか。
答えは自分の中にある。
腰を下ろして冷静になって論理的に考えてみる。
→ ここの河原に至る前の雪道には多くの足跡が残っていた(ここらで間違いない)。
→ そして川のそばの残雪にも多くの足跡が残っていた(川を渡った?)。
→ 地図もGPSでもこの川を越えなければいけないらしい。
→ 地図上にある「仮設橋」がどうやらないのではないか?
→ はたしてこれだけの水量のある川を素足で渡渉させる登山道があるのか?
→ と思うが渡る以外に論理的帰結はなし。
ということで、川を渡る判断を下すことになった。
高照度のヘッドライトも、さすがに真っ暗闇の中では対岸にルートがあるのかどうかまでは照らしてくれない。
濡れずに渡れる箇所を探すが、1ヶ所しかない。
しかもこちらからダブルストックを使ってギリギリな感じで、一度向こう岸に渡ると戻るときは石の形状で結構な確率でドボンすると思われる。
疲れ果てて体力的にもうギリギリになってきたので、もう迷いはない。
ダブルストックを棒高跳びのように使い向こう岸に渡ると、、、ルートがあったよ!
分っかりづれーよ!!!
せめて「飛べ!」とか書いておいてくれたら、こんなに迷わなくてよかったのに。
今日中に下山したかったのに日を跨いでしまったじゃないか(迷わなくても日は跨いでいたが)!
よく考えたら1泊4日というよく分からない山行になってしまった(笑)。

01:50 ストレスフリーとなって意気揚々と30分歩いて奈良田第一発電所に到着。
長い長い山行がようやく終わりました。
3度目の正直で、ようやく冬季の白峰三山を縦走できてよかったです。
ご機嫌な斜めの農鳥岳からの写真が撮れなくて残念でしたが、あのような悪天候でも万全に準備を整え、冷静に行動してホワイトアウトも道迷いも切り抜けられたのが少し自信になった気がします。
しかし縦走できたのも先人達のトレースとステップがあってのことであり、自分の実力のなさを思い知るとともに、先人たちに感謝申し上げたいと思います。

北岳 山行記録一覧

2020年01月02日~03日 ■■■■■『北岳/間ノ岳/農鳥岳 ~3度目の正直!1泊4日?で白峰三山冬季縦走~』
2019年01月02日~03日 ■■■■☒『北岳_冬季小屋テント泊 ~厳冬期ピンポイントで晴れず
2018年01月05日~07日 ■■■■☒『北岳 冬季小屋テント泊 ~白峰三山縦走断念しての北岳登頂~

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