サドルは、「合う・合わない」の個人差が非常に大きなパーツである。そして手、お尻、足と、自転車と体が接する3点の1つでもあり、かつ荷重割合も大きいため、何かと痛みが出やすい原因となっている。
しかしサドルの評判がどれだけ良くても、いざ使ってみるとまったく合わない、なんてこともよくある。とどのつまり、他人のお尻に合うかどうかなんて、はっきり言ってまったく参考になりませぬ。
サドル沼にハマりながら、サドルをとっかえひっかえしているうちに、これが”ファイナルアンサー”、最後のサドルかも!と、ついに行きついた感があった(金額的にもw)。
そこで、サドルの形状からして参考にならない人(合わない)もいるとは思いつつも、一方で参考になる人もいるとは思うので、レビューと自分のサドルの変遷をまとめてみました。
prologo SCRATCH M5 PAS 3DMSS(nack)
外観
今回手にしたのが、プロロゴのSCRATCH M5 PAS 3DMSS。細部はこちらでご堪能ください。
先鋭的なロードバイクに非常にマッチする、よいデザイン・形状だと個人的には思う。とても美しい。3Dの格子状の穴が、ただ者ではない感を醸し出している。
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実際つかってみた感想
結論からいえば最高です(自分のお尻にとっては)。
それだけだと伝わらないので、もう少し詳しく。
まず座ってみて最初に感じたのが、「カッチリと硬いな」という感じ。”硬さ”といっても硬くて沈み込まないというものではなく、3Dプリント特有のコシはがありながらしっとりと沈み込む、という独特の感触。
次に感じたのが、ズレないということ。前のSCRATCH M5 SPACEだと、表面が若干つるつるしていたので結構お尻がズリ下がってくることが多かったが、3DMSSは3Dプリントだけあって格子状でほぼ滑ることがない。
しっとり沈み込んで滑らないため、恥骨がサドルに刺せて安定感が抜群。半面、恥骨が刺さってズレないことから、最初はやや恥骨がホールドされ過ぎて痛く感じるときもあるかもしれない(パッドなしの場合)。
購入したのがカーボンレールでハードなNACKモデルということもあるのか、総じてカッチリとお尻を支えてくれる、という感じが強い。体も安定してかつ路面状況も細やかに伝わって来るという、今までにない感触。その一方で、3Dプリントが路面からの衝撃をどそれとなく和らげてくれている、そして軽量!もう言うことないです。
サドルを交換するだけでこれだけ違うのか!と感動ものだった。これだけでロードバイクに乗ることが楽しくなってくる、乗りたくなってくる。
SCRATCH M5 SPACEと形状はほぼ変わらないにもかかわらず、大きな違いがあってびっくり。
極力シンプルに伝えるとこんな感じでしょうか。
(自分の)ロードバイクのサドルは、これが”最終兵器””ファイナルアンサー”になるのは間違いないと思う(お値段的にもね)。
大事に使い続けていこう。
重量
SCRATCH M5 PAS 3DMSSの重量は、カーボンレールのNACKモデルで、カタログ値・実測値ともに174g。
3Dプリントで快適性を備えていて、かつここまで軽いと非常に嬉しい。
一方、今まで使っていたSCRATCH M5 PAS SPACE(TIROX)は、カタログ値221gで実測は229g。
サドル交換で△55g軽量化できるって、結構大きい。
サドル変遷
自分に合うサドル形状とは?
サドル沼にハマりながらとっかえひっかえしているうちに、だんだんと「この形状は自分に合う」というのは分かってくるもの。
逆に自分に合わない形状の方がより的確に分かるかもしれない。
自分の場合で言えば、実際に使ってみて合わなかった、好みではないサドルの形状は以下の4つ。
◗ ロングノーズ型
◗ 穴が開いていないサドル
◗ 座骨幅が狭いサドル
◗ のっぺりフラット型
ロングノーズ型でなく穴が開いていて、それでいて少しラウンドしているサドルであれば、乗ることは出来るでしょう、と言う感じ。それほど許容範囲が狭いわけではないけれど、上のように合わない部分があると気になってしまうもの。
参考までに、今まで辿ったサドルの変遷を紹介していきます。
MOST LYNX AIRCROSS ULTRA マンガネーゼレール
購入したピナレロF5に最初からついていたサドル。ショートノーズタイプで穴あき。パッと見た感じ、自分に合うと思った。
クッションも柔らかくて、特に問題がない。問題を感じないということは、”自分合っている”と言うことなのだろう。
重量はカタログ値通り235g。横から見た形状はフラット型。
しかしデザイン的に若干シンプル過ぎて物足りなさを感じる。またギシギシ音がすることもあり、ちょっと剛性が足りない気がする。
まだ出会っていない運命のサドルって、まだどこかにいるはずだよね?
より良いサドルを求めて、ここから深くて長いサドル沼にハマり始めることになる。w
SPECIALIZED POWER WITH MIRROR
快適性を求めて、評判が高かったスペシャライズドの3Dプリントサドル、POWER WITH MIRRORサドルに手を出してみた。
十分柔らかくかつ3Dプリント特有のコシもあり、乗り心地は評判通りかなりいい。不満は特にない。
機能的に不満はないのだけれど、ややずんぐりむっくりした形状がロードバイクに合わない感じがする。
パワーサドルの十分な快適性は、より直立した姿勢でロードバイクよりお尻に圧がかかりやすいマウンテンバイクに活かすことにした。
パワーサドルはマウンテンバイク用としてとっておいて、まだまだロードバイクのサドル沼は入口あたり。
ただマウンテンバイク用として活用できているため、無駄になったわけではないのでこれはこれで良し。
SPECIALIZED ROMIN EVO MIRROR
パワーサドルと同じく3Dプリントで評判が高かった、スペシャライズドのROMIN EVO MIRRORを試してみる。
形状からしてロングノーズ型で幅も狭い。一目見て「自分に合いそうもないな...」と感じるものの、評判の良いサドルがそれほど悪いはずはない、との思いもあり、購入ではなくスペシャライズドの店舗から500円/日で借りてみることにした。
結果、予想通り自分のお尻にはまったく合わなかった。たった1日でご返却。
ROMIN EVO MIRRORの件から、サドルが他人のお尻に合うかどうか・評判なんてまったく関係なし!という知見を得た。
合わなかったけれど、500円の支出で合う合わないかを試せたのは非常に有意義だった。
これでROMIN EVO MIRRORに未練なし!w
サドル選びって、結構消去法なのかもしれない。
中華製3Dプリントサドル
3Dプリントサドルが欲しい誘惑に逆らえず、安い1万円ちょっとの中華サドルに手を出してみる。
ショートノーズ型の穴あきサドルで、幅も十分。おそらく自分に合うだろう、との確信があったので購入に至る。
悪くない。悪くはないけど、部分的に穴周辺部分のクッションが硬く、全体的にもやや硬めかな。
サドイチ(佐渡ヶ島一周)で240km走ったら、お尻が怪我レベルで痛くなってしまい、サドル沼の旅を続ける決意を新たにする。w
支出も1万円ちょっとだったし、悪くはないので、今はスマートトレーナー用として活用している。総じて買ってよかったサドル。
スマートトレーナーで頻繁に使ってもビクともしないので、耐久性も十分。
スマートトレーナー用で重量とか関係ないけど、実測183gとかなり軽量。
中華と言えども、部分的な硬さ以外品質に何ら問題はない。
prologo SCRATCH M5 SPACE(TIROX)
ロングライドでの快適性と見た目のカッコよさを求めて辿り着いたのが、先代のSCRATCH M5 SPACE(TIROX)。
ショートノーズでもなくロングノーズでもないセミショート形状で、中間辺りまで細く切れ込んでいる。座面は小さそうだし、はたして自分に合うかどうかは確信が持てず。
ただデザイン的には非常に洗練されていて、ロードバイクにはよく合うと思う。この形状が個人的には美しいと思った。
思い切って購入してみたら、これは良かった。
サドルとの干渉がなく脚を真下に下ろしやすく、非常にペダリングがしやすい。クッションもSPACEという厚めのモデルだけあって、ロングライドでもお尻の痛みに悩まされることはなくなった。
カタログ重量値が221gで実測は229g。重くもなく軽くもなく普通。「標準バージョンと比較して+5mmのパディングフォームを備える」とする快適性モデルのため、この重量で済んでありがたい。
サドル沼の終着点としては、SCRATCH M5 SPACEで十分だった。
ある意味ここで終わればよかったんだけれど、最高のサドルを求めての旅はまだ続く。
YOELEO CL MAX
SCRATCH M5 SPACEで十分だったのだが、気が狂ったのか富士ヒルクライムレースに出場するとのことで、今まであまり気にしてこなかった軽量化の要請が働く。
レース1週間前の試走でブロンズ90分切りに8分遅いという結構絶望的な状況で、軽量化の誘惑から、いったん終了したサドル沼をさらに深みへと掘り下げてしまう。
重量は実測114g
軽い!確かに軽いですよ。これだけでSCRATCH M5 SPACEの229gから△115gの軽量化が実現するのは非常に魅力的だ。
早速サドルを交換して乗ってみましたよ。
硬った!!!
軽量化のため、サドルだけでなくタイヤやバーテープなど、快適性を支える各パーツを一気に変えたものだから、驚くほど快適性が損なわれて乗りにくいバイクに仕上がった。
ゴツゴツ硬すぎて、もうロードバイク乗る気がしないくらい。w
3日間くらい頑張って乗った見たものの、これはダメかと。すぐにSCRATCH M5 SPACEで戻すことに。
快適性は自分の中では譲れない要素。多少重くてもこんな乗り心地の悪いサドルは使えません。3回乗ってお蔵行きになりました。
富士ヒルは、慣れ親しんだSCRATCH M5 SPACEで出場。やっぱり大事ですよ、快適性って。いくらヒルクライムレースで短いからと言って、不快なものは気になって気になって仕方がなくなっちゃう。ここらへんは人によるでしょう。
結果、YOELEO CL MAXは自分にとっては無駄な投資になった。
けどこういうのは実際自分が乗って試してみないと分からないので試すしかない。致し方なし。合う人には合うのでしょうけれど、自分のお尻と方向性には合わなかったということ。
もう二度と軽量サドルには手を出しません。3回使って1万円という、そこそこ高い授業料でした。残念...。
prologo SCRATCH M5 PAS 3DMSS(NACK)
そして辿り着いた”ファイナルアンサー”が、プロロゴのSCRATCH M5 PAS 3DMSS。
SCRATCH M5 SPACEが非常に良かったので、形状もほぼ同じだから間違いはないはず。
そのうえ3Dプリントで快適性や安定性が上昇するうえ、重量もSCRATCH M5 SPACEの229gから174gへ△55gも軽くなるものだから、欲しくならないわけがない。これ以上のサドルはないはず!
結果、最高でした(二度目)。
「自分の気に入った機材に乗る」って、ロードバイクでとっても大事ですよね。