モータースポーツ

≪レース撮影者必見!≫ モータースポーツ流し撮り ~撮影方法決定版!~

投稿日:2019年9月2日 更新日:

モータースポーツの写真をみて感動を覚えるのは、まずは何と言っても躍動感ある流し撮りの写真ではないでしょうか。
ただ実際にサーキットへ行って流し撮りをしてみると、思いのほか難しく、最初は自分が撮ろうと思い描いた写真はなかなか撮れないと思います。
また「流し撮りは難しい」というその“難しさ”も、いろんな要因か複雑に絡み合っているため、失敗した原因がなんなのかもよく分かっていなかったりするのではないでしょうか。

そこで、流し撮りの写真を成功させるための要因を体系的に整理し、あわせて対策を考えていきたいと思います。
失敗を重ねて分析し、試行錯誤を繰り返す中でなんとなく自分の中で流し撮りの何たるかが分かり、自分なりの流し撮りのベースができてきたと感じたので、自己流ではありますがその方法を体系的に纏めてみました。
自己流ではありますがそれほどかけ離れて間違いではないと思いますので、参考になる部分は参考にして頂ければ幸いです。
流し撮りに必要な機材については、「モータースポーツ流し撮り≪撮影機材編≫」を合わせてご覧ください。

流し撮りの要因とシャッター速度の決定

流し撮りを成功させる重要な要素として、「どれだけ流すか」のシャッター速度の決定があげられます。
シャッター速度の決定を誤り、不必要に高速シャッターを選択すると、マシンは綺麗に止められても躍動感を感じない意図しないものとなってしまう一方、無理にスローシャッターを選択すると、すべてのコマがブレて成功写真がなくなってしまったりします。
このように流し撮りの成否を分ける重要なシャッタースピードですが、シャッタースピードを決定するにしても複数の要因が絡み合うため、それぞれの要素を以下で説明していきます。
〔要因①〕の車速と〔要因④〕の失敗への許容度については、流し撮りをしたことがある人にはすぐに分かることだと思います。
また〔要因②〕の焦点距離についてはなんとなく理解していても、シーズン始め等に久しぶりに流し撮りをするとすっかり忘れてしまったりするのではないでしょうか。
そして流し撮りを始めて「なんでうまくいかないんだろう?」という失敗の背景に潜んでいるのが〔要因③〕の車の回転で、意外とその要因を認識されていないのではないでしょうか。

〔要因①〕車速

これは比較的誰でも簡単にイメージできるかと思います。
被写体であるマシンがの速度が速ければ速いほど、マシンを追従して回すカメラも速くする必要があるため、流れる背景の量が大きくなります。
言い換えると、車速が早い場合は危険を冒してスローシャッターを選択する必要はなく、早めのシャッタースピードを選択しても背景は十分に流れる一方、車速が遅い場合は、スローシャッターを選択しないと背景は十分に流れないということになります。

同じ250mm付近の焦点距離の写真を比べると、写真左はもてぎのバックストレートエンドで車速が非常に速いので、1/200秒の高速シャッターを切っても背景は十分に流れていますが、写真右は鈴鹿のヘアピンで車速が遅いので、1/125秒を切っても背景や手前の縁石の流れ方は少なくなっています。

〔要因②〕焦点距離(マシンとの距離)

焦点距離が長いほど焦点距離が短い場合と比べて、同じシャッタースピードと振り幅でも流れる量が大きくなります
これは、自分を中心とした異なる円をイメージしてもらえれば分かると思いますが、例えば焦点距離が200mmと短い場合は半径が小さい円、焦点距離が600mmと長い場合は半径が大きい円になります。
この自分を中心とした2つの円において、中心角が同じでも当然ながら半径の大きい円の方が円周の長さが長くなる、すなわち流れる量が大きくなるということがイメージしてもらえるかと思います。

同じ1/125秒のシャッタースピードの2枚の写真を比べてみます。
写真左は富士のコカ・コーラコーナーで焦点距離560mmの大幅トリミングなので、実質的には700mm付近でしょうか。1/125秒のシャッタースピードでも背景の縁石が十分流れています。
一方写真右は鈴鹿のヘアピンで、マシンまで近いので焦点距離255mmで撮っていますが、背景や手前の縁石の流れ方は700mmで撮った場合と比べて少なくなっています。

〔要因③〕車の回転(コーナーイン側かアウト側か?)+ピントの合わせ位置

この“車の回転”の要因は意外とイメージしにくいのではないでしょうか。
私も何度か撮っていくうちに、「なんでこの短い焦点距離でなかなか合わないんだろう?」というケースが何度かあり、ケースを分析することで分かりました。
これにはさらに以下の2つの要因が関連してきます。
(要因③-1)コーナーの内側から撮るか外側から撮るか
(要因③-2)コーナーから近いか遠いか遠いか

■ コーナーイン側からの撮影
まず決定的なのが(要因③-1)の「コーナーのイン側から撮るかアウト側から撮るか」になります。
コーナーの内側から撮る場合は、あまり影響がありません。
なぜなら自分がコーナーの中心に位置しており、自分を中心にマシンが等距離で回っていくことになるので、マシンが同じ側面を常にこちらに向け続けていることになるからです。
なのでコーナーイン側から撮る場合は、スローシャッターでも焦点を合わせやすく、かつ、広い範囲に合うことになります。
具体的には、鈴鹿で言えば第2コーナー激感エリア、SUGOで言えば馬の背コーナーといったコーナーになります。

■ コーナーアウト側からの撮影
次にコーナーのアウト側から撮る場合ですが、撮影者のカメラを回す回転径と車がコーナーを回る回転径が反対向きになるため、マシンはコーナーを回ることにより撮影者に近づいてきて離れていきます(AFがなければ円と円が重なる接点の1点でしか焦点が合いません)
そのうえ、マシン自体もコーナーを回りながら回転しているため、焦点を合わすべきフロントグリルやフォーミュラーカーのドライバーの頭は、追従すべきマシン全体の中でも動き続けていることになります。
そのため、コーナー外側から撮る場合は、漫然とマシンを追うのではなくフロントグリルの一点を注視しながら追うようにしないと車体の中央に焦点が合ってしまい、合わすべきフロントグリルに焦点の合っていないボツ写真が出来上がります。
このようにコーナー外側から撮る場合は、画面全体におけるブレの範囲が多いため、スローシャッターにし過ぎると1点は焦点が合っているものの、全体的ブレたモヤっとした写真になります。

次に(要因③-2)でコーナー外側から撮る場合でも、近距離から撮る場合と遠距離から撮る場合で、その程度に差が出てきます。
これは同じシャッター速度でも、近距離から撮る場合はマシンの回転が大きくなるため、よりブレやすくなる一方、遠距離の場合はマシンの回転が少ないため、近距離の場合と比べればブレにくくなります。
そのため近距離だからと言ってスローシャッターで撮っていると、思いのほか焦点が合わない写真が多くなるのは、こういったケースになります。

では同じ1/60秒のシャッタースピードで、同じような焦点距離の2枚の写真を比べてみます。
写真左は鈴鹿の第2コーナー激感エリアで、コーナーイン側からの撮影です。
コーナーの中心にいる撮影者の周りをマシンが回っていくため、1/60秒のスローシャッターでも比較的合わすのは容易で、しかもサイド全面にピントが合っているのが分かります。
一方写真右は富士の(名前がころころ変わる)GR Supraコーナーで、コーナーアウト側から撮っています。
マシンに近いうえコーナーの回転径も小さいため、マシンは大きく向きを変えながらコーナーを回っている最中です。
そのため同じ1/60秒のシャッター速度でも、手前のヘッドライトの1点にしか焦点は合わず、あとは大きくブレています。
もうお分かりのように、後者のコーナーアウト側から撮影する方が難しくなります。
漫然とマシンを追いかけていると、ヘッドライトに焦点が合わず、マシン中央のお腹あたりにピントが来てしまいます。

■ ピントの合わせる位置
マシンの回転に関連して「マシンのどこにピントを合わせるか」ですが、以下の合わせ方で異論はないかと思います。
逆に言うと、ここにピントが合っていないと作品としては成立しないボツ写真ということです。
〔フォーミューラーカーの場合〕    ドライバーの頭部
〔GTカー等のいわゆる「箱車」の場合〕   フロントグリル(マーク)から手前側のライト付近
このようにフォーミュラーカーの方がマシンの中心にドライバーの頭部があるため、漫然とマシンを追いかけていても結果としてOKな場合が多い一方、GTカー等の箱車はフロントグリルやライトを追い続けなければならないので、GTカー等の箱車の方が難しいと言えます。

GTカーとフォーミュラーカーのピントを合わせる位置の違いを、2枚の写真で確認していきます。
写真左のGTカーは1/30秒のスローシャッターの中、フロントグリルを凝視してなんとかピントを合わせました。
写真右のフォーミューラーカーは、コーナー内でマシンがブレてもドライバーの頭部にピントを合わせて芯を残します

〔要因④〕失敗への許容度(残り周回数/成功写真の有無)

これは誰しもが自然とそういう意思決定をしているのではないでしょうか。
例えばレースが250km2時間半といったGTレースや、さらに9周とか短いWTCRの場合は、周回数が少なくなるだけ撮れる枚数も減ります。
写真を残そうとすれば、自然と成功確率の高い早いシャッタースピードを選択するでしょう。
一方で6時間耐久レースのような長丁場なレースにおいては、サーキットの各撮影ポイントで十分な枚数が撮れるため、成功確率の低いスローシャッターに挑戦できるかと思います。
また既に成功写真を確保できている場合には、よりチャレンジングなスローシャッターに挑戦することでしょう。

〔要因⑤〕要因①~④を考慮してシャッター速度を決定

上記の要因①~④を総合的に考慮して、成功写真が残る範囲内で背景が十分流れるシャッタースピードを選択します。
私は試行錯誤を繰り返すうち、状況に応じて以下の3つのシャッタースピードを使い分けることに落ち着きました。
(SS①:1/125秒)流し撮りをする自分の標準のシャッタースピード。
(SS②:1/  60秒)鈴鹿第2コーナー激感エリアやSUGOの馬の背コーナー等、容易なコーナーイン側から撮影時。
(SS③:1/250秒)もてぎバックストレートエンド(90°コーナー入口)等の車速が非常に速いコーナーやバックショット。

私は可能な限りコーナーに合ったスローシャッターを切るようにしています。
なぜなら、安全を期して早めのシャッタースピードで成功写真を何枚も確保したとしても、たった一枚それよりもスローシャッターが決まれば、先に撮った早いシャッタースピードの写真は要らなくなるからです。
流し止めた写真だったとしても、感動せず残らないシャッター速度は効率が悪いので最初から撮らないようにしています。
ただでさえ繰り返しサーキットに通っていれば、似たような写真が量産されてきますので(笑)。
「前回より一歩前へ」といった感じです。

シャッター速度以外のカメラとレンズの設定

流し撮りの諸要因から、適切なシャッタースピードを決定しました。
シャッタースピード以外の、カメラとレンズの設定を、設定を忘れると大変なこととなる重要な順で紹介していきます。
設定を間違えたまま撮り始めるとボツ写真を量産することだけでなく、貴重な周回数も無駄にします
以下の設定全般に言えることですが、慣れるまでは1つ1つ確認をする癖をつけた方がよいと思います。
特にレーシングカーの撮影と、ピットウォークでのレーシングクィーンの撮影の設定は、①オートフォーカスモードや②手振れ補正モード等の重要な設定が異なるので、レーシングカーの撮影とピットウォークでの撮影で行ったり来たりしていると、設定を切り替え忘れるという凡ミスが生じます。
私も何度となく設定の切り替えを忘れて、多くの周回数を無駄にしたことがあります。

オートフォーカスモードの設定

まず絶対に必要な設定が、自動追尾のオートフォーカスモードに設定することです。
メーカーによって「コンティニュアスサーボ」だったり「AIサーボ」という名称になっています。
このモードを誤ると大量なボツ写真が量産されます。
事前の設定確認も必要ですが、撮り始めて少ししたら、プレビューを拡大してちゃんと撮れているかを確認した方が良いかもしれません。
プレビューを拡大せずにチラッと見ただけだと、ピントが合っているのか合っていないのかが分からないことが多いです。

手振れ補正モードの設定

次いで重要なのが、レンズ側の手振れ補正モードの設定です。
流し撮り用のモードがあるので必ずそれに設定しましょう。
これもかなり設定の切り替えを忘れやすいところですが、流し撮りモードにせず通常モードにしていると、経験的にやはり成功率は低くなります

フォーカスエリアの設定

フォーカスエリアの設定は複数ありますが、モータースポーツ撮影に適するのは、①1点、または、②1点と周りを含めた9点になるかと思います。
私は切り替え忘れを防ぐために、常に1点に設定しています。

連射設定

まず連射か単発かですが、モータースポーツ撮影はとても一発で決めきれるものではなく連射が前提です。
モータースポーツ撮影は動体撮影なので、狙っているマシンの背景にもいろんなタイミングで他のマシンが入ってきたりします。
すると偶然のマシンの重なりから当初のフレーミングとは別のフレーミングの方が良い場合も多く、数多くシャッターを切ることによって良いコマが多く残るようになります。
当然タイミングだけではなく、多くシャッターを切ることによってブレていない写真も多く残るようになってきます。
ある程度の成功確率の中で後は数の理論
きっちりちりと芯が残った写真を多く残して、その中から偶然のマシンの重なり等、良いものを選んでいくと納得いく写真が残る、というスタイルに落ち着いています。
レース後にボツ写真を数千枚消す、という作業が重くのしかかりますが(笑)。

露出補正

画面の多くを占めるアスファルトの路面は黒いので、天気とマシンの色にも左右されますが、そのまま撮ると黒い部分を多く拾って露出オーバー気味の写真が出来上がる場合が多いです。
この間の抜けた明るい写真が嫌なので、私はマシンの流し撮りの際は一律「マイナス1/3」設定で撮っています。
たまに白いマシンやライトを拾うと露出アンダーになりますが、割合的にはアンダーにしておいた方がよいです。

流し撮りの体の動かし方

次に、カメラとレンズの設定を適切に行ったとしても、肝心の流し撮りの動きができなければ、目的は達成できません。
ではどのように体を動かしたらマシンを上手く追従できるのかを説明していきます。

〔基本〕水平方向流し撮り

まずは、上下の要素がなく、水平方向にカメラ(レンズ)を流す水平方向流し撮りが、基本の動きとなります。
ポイントは主として以下になり、どれも欠かせない重要な要素です。

■ 手順①:シャッターを切るポイントに正対するよう構える
被写体のマシンと正対したときにシャッターを切るのが一番安定するからです。そのため、正対しないポイントでシャッターを切った写真はよりも、正面でシャッターを切った写真の方が必然的に成功確率が高くなります。
コーナーのどこでシャッターを切るのかを明確にして、走ってくるマシンを待ち構えましょう。

■ 手順②:シャッターポイントの前から早めに、マシンの動きと体の回転をシンクロさせると同時に、AFの追従を始める
マシンの軌道と自分の体の動きを、シャッターポイントの前から十分にシンクロさせた方が成功確率が高くなります。
またこのことは同時に、カメラのオートフォーカスで早めにマシンを捉えることも兼ねています。
特にフォーカス速度の遅いカメラやレンズを使う場合は、フォーカスが間に合わなくなることがあるからです。

■ 手順③:シャッターを切るポイントを過ぎてからも、フォロースルーをしっかり取る(体の回転を止めない)
シャッターを切った後でも、体の回転は止めません。
体の回転を止めてしまうと、回転を止める直前のコマがシンクロしなくなります。
ある程度経験を積むと、体の回転を止めた連射の最後の方のコマは激しくブレていることが多いのに気付くと思います。

■ 手順④:カメラを手で回すのではなく、体幹で回す(体とカメラの距離を一定に保つ)
これも
非常に重要な部分です。
手先でカメラを回してマシンを追おうとしても、うまくシンクロできずに高確率でブレます。
マシンを追う場合は、腰を中心とした体幹で回していきます。
体幹で回して手先で回さないためには、両足をしっかりと地につけて体とカメラの距離を一定に保ち、カメラまでの間にある肘や手首を固定するような意識で脇を締めます
ここら辺は経験して感覚的な部分になりますが、よくゴルフで手先で打ってもあちこち曲がって飛ばない一方、体幹の腰から背中の大きな筋肉を使って打ったときは真っ直ぐよく飛ぶのと同じイメージでしょうか。
また垂直方向には一脚を使ってカメラとレンズの重量を支えますが、水平方向に体とカメラとの距離を保持するためにも「腕力」が必要になるのも事実です。
レンズの大きさにもよりますが、私は一脚でカメラとレンズを支え、レンズフードの下側を左手で下からつまむように脇を締めて持つと余計な力が入らず、マシンの動きと上手くシンクロできるので、この構えに辿り着きました。

〔応用〕斜め方向流し撮り

流し撮りをしていく中で、かなり初期の段階でぶち当たる“難しさ”は、「斜め方向の流し撮り」ではないでしょうか。
単に自分を中心としてレンズを水平に回していく流し撮りは、それほど難しくはないと思います。
ただ水平方向に回していく流し撮りという状況は、たいていの場合はコーナーイン側から撮影する状況です。
実際サーキットへ行くとコーナーイン側から撮れるポイントは驚くほど少なく、限られた幾つかのコーナーしかない、ということに気付くと思います。
たとえばshibawannkoのアクセス圏内にある、富士、もてぎ、SUGO、鈴鹿の4つのサーキットで、こうした水平方向に回していく、すなわちコーナーイン側から撮れるコーナーは、私の知りうる限り以下の4つしかありません。
①富士スピードウェイ → ダンロップコーナー入口
②ツインリンクもてぎ → 90°コーナーイン側(G席)
③スポーツランドSUGO → 馬の背コーナー
④鈴鹿サーキット → 第2コーナー激感エリア

それ以外のコーナーアウト側から流し撮りをする場合は、撮影者とマシンの位置関係から、ほぼ斜め方向に上下の動きが加わります

では水平方向の流し撮りのと撮り方をベースとして、斜め方向の流し撮りの際には何に気を付けたらよいのでしょう。
ここからは私の完全に我流の方法で、「試行錯誤を繰り返していたらこの方法に行きついた」というものです。
そのため「少しは参考になるな」と思った方だけ読んでいただければと思います。

■ 手順①:カメラと一脚を固定する
まずカメラと一脚を(意図する構図の傾きの角度で)固定します。
雲台を固定すると追従しにくくはなりますが、不要な上下のブレを防ぐことができます
私は全種類の雲台で固定する場合と固定しない場合をいろいろ試してみましたが、よほど振り幅が大きくて固定すると追従しきれない場合を除いて固定した方が良い、という結論に至りました。

■ 手順②:マシンの動く方向とレンズを流す方向を合わせるために、一脚の軸を傾ける
もうここからがいかにも”我流”っぽくなってきました。
斜め方向流し撮りの場合は、撮影者の前をマシンが横切る軌道自体が斜めなので、マシンの軌道の角度とレンズを動かす軌道の角度を合わせる必要があります。
水平方向流し撮りの場合は、回転軸が地面に垂直になるため一脚は真っ直ぐ直立させて構えます。
一方斜め流し撮りの場合は、回転軸自体が斜めなのでそれに合わせて一脚も斜めに構えることになります。
やや不自然な構えのようにも見えますが、マシンの軌道と合わせて振ろうとすると回転軸も傾ける方が合理的な動きといえます。

■ 手順③:重移動してシンクロする区間を長くする
ここまでくると、完全な我流の域です(笑)。
コーナーアウト側から撮る場合は、マシンが横切っていく軌道はほぼ斜め方向になることに加え、そもそもマシンがコーナーを回る円軌道と撮影者がカメラを振る円軌道は逆向きになり、上下方向も距離もその接点は1点と狭い”点”になります。
その狭い接点を少し伸ばせば、マシンとカメラが同調して、シャッターチャンスが増えると考えました。
私が何度も失敗しながら試行錯誤した結果、体重移動してシンクロする時間を長くする方法に行きつきました。
例えばマシンが左上から右下に斜めに横切っていく場合、最初は右足に重心を預けておき、マシンが通過して行くにつれて左足に重心を移動します。
マシンが自分の正面を横切っていくときに、カメラの動きを体の体重移動により円軌道から斜めの水平移動に変えて同調区間を長くする、という方法です。
言葉で説明するのはかなり難しいのですが、特にストレートエンド等で車速が速く、速く大きく斜めに動かさなければならない斜め方向流し撮りの場合は、この方法で撮るに至っています。

構図等 ~どう撮るのか?どう切り取るのか?~

上述のように、カメラや機材を適切に設定し、高速で動くマシンを上手く流し撮りできたとします。
ただそれだけで躍動感あふれる感動的な流し撮りの写真ができるわけではありません。
それは「どう撮るか(切り取るか)」、という写真の本質的要因である「構図」の問題になります。
「ちゃんと車を止められた!」で終わっていては見た人に感動を与えられず、「止まってるね」で終わってしまいます。
なかなか言葉で表現して定式化しにくいものですが、あともう一歩なのでおつきあいください。

構図 ~マシンは真ん中?~

まずマシンをどこに配置するかです。
これもケースバイケースなので一概には言えませんが、一般的に被写体を中央に持ってくる「日の丸構図」は、安定感はありますが平凡で、インパクトのある写真にはなりにくいです
モータースポーツ撮影自体が動体撮影で、動いている被写体の一瞬を切り取ったものだったり流し撮りだったりと、インパクトのある対象ではあります。
しかしマシンをど真ん中に持ってくることをやめて、進行方向側をやや広く空けたり(逆もしかり)、左右上下どちらかに寄せて配置した方が、グっと締まる絵になると思います。

水平 ~傾ける?傾けない?~

ほとんどのレーシングカーは細長く、速い車ほど偏平になっていきます。
そのため水平を出してマシン全体を入れた場合、上下に広いスペースが空き、この空いた空間の処理が難しくなります。
特にGTカーのような箱車よりもフォーミュラーカーのような鉛筆のように細長いレーシングカーの場合はより顕著です。

そのため、被写体のレーシングカーを傾けて対角線上に配置した方が、画面に占めるレーシングカーの割合を多くできますし、無駄なスペースを潰せることになります。
かといって、傾け過ぎても「落ち着かない感」が増してくるので、傾けてもMax30度くらいかな~と思います。
進行方向を上か下かどちらに傾けるかですが、私はコーナー出口の進行方向を下げる構図が好きです。
またマシン全体を入れずとも、さすがに顔を欠かせてはまずいですが、リアは大胆に削っても良い場合もあります。

背景

最後となりましたが、上手く流し撮りが決まったとしても「何かつまらないな。。。」と感じたことはないでしょうか。
それは「背景」です。流し撮りの写真の成否を決める重要な要素になります。
それではダメな背景と良い背景を見ていきましょう。
〔ダメな背景〕一面のアスファルト/一面のサンドバリアー/灰色の衝撃吸収のクッション
〔よい背景〕 白と赤(緑)の縁石鮮やかな看板サイドバイサイドで並ぶマシンや背景に重なるマシン

よい背景は流し撮りで流れていることが目立つため、よりスピード感あふれる写真になる一方、ダメな背景は流れても変化が少ないので、スピード感のある写真にはなりにくいという違いです。
仮によい背景とダメな背景でそれぞれ流し撮りが決まった場合、良い背景の写真が残り、ダメな背景の写真は残りません。
そのため撮る前から良い背景が入る位置やコーナーで撮影を始めることが肝要で、写真効率が良くなります。
「最初から残らない写真を撮ってもね。。。」ってところです。
またマシンを前後または左右に重ねられると迫力満点ですが、こればかりは周回のタイミングなので、タイミングを待って数多く撮るしかないでしょう。

それでは、よい背景の実例を3枚の写真で紹介していきます。
写真左はもてぎの90°コーナーイン側G席での撮影で、オーソドックスに縁石を入れたケースです。
白と青の縁石が流れることにより、車速は遅いですが疾走感満点の写真になりました。
私はコーナー流し撮りでは、縁石は必ず入れるようにしています。
写真中央は富士の(名前がころころ変わる)GR Supraコーナーの出口付近からの撮影です。
世界選手権のWECでは、通常のレースではない派手派手な看板が多く設置されます。
そこでマシンのアップではなく広めに撮り、縁石と看板とその奥の看板を豪勢に入れて画面を華やかにしています。
さらに後続車がライト点灯付きで背景に入ってくれました。
写真右はもてぎのグランドスタンドからで、掟破り?のピット流しです。
背景は赤と白の派手な看板が流れてくれて疾走感抜群ですが、メインストレートでMaxスピードで近づいてくるマシンを1/60秒のスローシャッターで流したため、凄まじいほどの低い成功率でした(笑)。
50枚に1コマくらいの成功率だったと思います。

最後に

最後までお読みいただきありがとうございます。
背景が大きく流れる中で、レーシングカーをピタっと止められた時の喜びは感動もので、麻薬常習犯のようにまたその感動を得るためにサーキットへ撮りに行ってしまいます。
一昔前は絶対に撮ることのできない流し撮りのシーンでしたが、昨今のカメラとレンズの驚くべき進化で「自分もここまで撮れるようになったか」と振り返ると思ってしまいます(フルサイズ機なのでトリミングの嵐ですが 笑)。
私自身が失敗を繰り返してきたので、この記事が皆さんのモータースポーツ流し撮りの一助になれば幸いです。
流し撮りに必要な機材については、「モータースポーツ流し撮り≪撮影機材編≫」を合わせてご覧ください。

≪レース撮影者必見!≫ モータースポーツ流し撮り ~撮影機材編~

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