南アルプス

〔200名山〕上河内岳_冬 ~寒波大雪でまさかの入山者0!地獄の単独フルラッセルのご褒美は...~

一番やりたくない山行は、雪山テント泊。なぜなら大変で辛すぎるから。
そんなやりたくない山行でも、雪山テント泊でしかたどり着けない光景がある。大変で辛い雪山テント泊ができるのも、体力的にあと数年と近頃思えてきた。雪山テント泊での敗退や未達成の山はいくつか残っている。限られた時間で1つ1つチャンスをものにしていこう。

そんなやり残した雪山テント泊の山の1つが上河内岳だ。雪山を始めて以来、上河内岳からの朝焼け聖岳の写真を撮りたいと思っていたが、2018年にチャレンジしたが吊り橋と登山道崩落で失敗したきり。
〔ルート情報〕畑薙大橋⇔茶臼小屋間 登山道損壊状況(2018/12/29現在) | shibawannkoの撮影山行
ただの冬山の登頂にはまったく興味はない。雪を纏った降雪直後の真っ白の雪山を撮りたいのだ。クリスマス寒波が到来し、南アルプスでも降雪が期待できる今がそのときか。やらずに後悔するよりチャレンジしたい。このエリアの最終目的は雪の上河内岳~聖岳だが、まずは南アルプスの大展望地である、手前の上河内岳を狙うことにした。

ルート/shibawannkoのワンポイントアドバイス

〔1日目_山行〕10時間50分 /〔休憩〕1時間10分 /〔合計〕12時間
畑薙ダムゲート前 04:30 ⇒ 04:50 畑薙大吊橋 ⇒ 05:30 ヤレヤレ峠 05:40 ⇒ 07:20 ウソッコ沢避難小屋 07:40 ⇒ 09:50 横窪沢小屋 10:30 ⇒ 16:30茶臼小屋
〔2日目_山行〕12時間10分 /〔休憩〕5時間10分 /〔合計〕17時間20分
茶臼小屋 03:00 ⇒ 06:20 上河内岳の肩 ⇒ 06:30 上河内岳 07:50 ⇒ 08:00 上河内岳の肩 ⇒ 11:30 茶臼小屋 14:00 ⇒ 15:50 横窪沢小屋 16:30 ⇒ 17:30 ウソッコ沢避難小屋 17:50 ⇒ 19:10 ヤレヤレ峠 19:30 ⇒ 20:00 畑薙大吊橋 ⇒ 20:20 畑薙ダムゲート前

ポイント

≪大寒波到来大雪後の積雪&一番手ラッセル状況≫
◗ 1合橋あたりから完全雪景色。
◗ 横窪峠付近から足首ラッセル(アイゼン)。
◗ 横窪沢小屋~上河内岳山頂までは、往復すべてスノーシューラッセル。
◗ スノーシューでも1,800m~茶臼小屋間は、超急傾斜でかなり厳しいラッセル。
◗ 稜線に出てからでも、当然沈む。
⇒ 常時膝下、深いと膝上ラッセルとなり浮力命。スノーシュー以外は敗退確実。
⇒ 当然ながら、ラッセル交代要員がいないソロだと非常に厳しい。

≪使用武器≫
◗ 3合橋~横窪沢小屋(往復):アルミ10本爪軽量アイゼン
◗ 横窪沢小屋~上河内岳(往復):すべてスノーシュー+ウィペット
⇒ 軽量化のため、チェーンスパイクとピッケルは不所持。ストックとピッケルはウィペットで代用。

≪危険個所≫
◗ ウソッコ沢避難小屋に至るまでの、崖に切られた狭いトラバース道
◗ 茶臼だけ方面からお花畑ルートへの入口 ⇒ 西側斜面が氷化していると危険/道が分かりづらい
◗ 上河内岳方面のお花畑ルートと冬期尾根道の合流付近 ⇒ 道が分かりづらい
⇒ 稜線上は当然西風が厳しいが、稜線上でも①竹内門の岩の陰と②河内岳の肩の2か所は、西風を防げるポイント。

 

山行記録 2022年12月30日~31日

(1日目)畑薙ダムゲート前 04:30 ~ 04:50 畑薙大吊橋 ~ 07:20 ウソッコ沢避難小屋 07:40 ~ 09:50 横窪沢小屋

EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 100mm f8 1/10sec ISO100 PLフィルター

5年前に冬の上河内岳へ挑んで失敗したときに反省したことは2つ。
① 沼平~畑薙大橋間の東俣林道への自転車投入
⇒ テント泊フル装備の最大重量で片道3km/往復6kmの林道歩きは辛すぎた。特に復路で疲れ切っている最後の林道歩きは堪える。林道はほぼ水平。たかだか3kmと言えども、自転車を投入すべきであった。ただでさえハードな上河内岳。楽できるところは極力省力化すべき。
② アプローチシューズの投入
⇒ 雪が現れるのは1,650mの横窪沢小屋付近から。それまでの雪のない山道を、ハードな雪靴で歩くのは辛すぎた。雪が現れる前のこの区間は、アプローチシューズを使った方が楽。

前回の反省を踏まえて、自転車とアプローチシューズを導入。
初日の目的は、茶臼岳からの夕景撮影。15:30くらいまでに茶臼岳に到着したいが、降雪直後で雪の状況が分からない。大幅にラッセルで遅れるであろう時間を考慮して、4時には出発したかった。しかし、雪山テント泊の準備とアプローチの悪さでダントツトップを行く畑薙第一ダムまでの劣悪アプローチに工事通行止め30分を食らってさらに遅れる。

04:30 二度目の失敗は許されない。気合を入れて自転車とともに沼平ゲートスタート。ナイトハイクではないが、結局今日も準備と長いアプローチで一睡もできずに徹夜スタートとなった。
20kg近いリュックを背負っての自転車漕ぎは楽ではないが、それでも45~50分歩くのよりかは遥かに楽。以前来たときは未舗装だったが、今では綺麗にほぼ全面舗装されていて、自転車アプローチにおあつらえ向き。労せず畑薙大吊橋まで。

今回はアプローチシューズを投入したので、重荷と言えども、想像した通り冬靴よりはるかに楽。順調に進んでヤレヤレ峠を過ぎたあたりから雪が現れ始める。1合橋あたりから完全な雪道になった。こんなところから雪道になるのは想定外。今まで冬の上河内岳の記録は何度も参照させてもらっていたが、こんな下から雪道になっている記録はなかったと思われる。
それでもだましだましアプローチシューズで歩いていたが、さすがに氷には対応できずに危険を感じたので、3合橋を超えたあたりで観念して冬靴+アイゼンに切り替える。アプローチシューズは岩陰へデポ。
完全に雪景色となる中、広がる雪原に足跡はない。この時点でラッセル一番乗り確定。沼平ゲートには3台ほど駐車車両があったが、危惧していた通り、やはりこうなったか。この先の上部のラッセルが心配になる。

(1日目)横窪沢小屋 10:30 ~ 16:30 茶臼小屋

EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 24mm f8 1/15sec ISO100 PLフィルター

09:50 横窪沢小屋着。前回登山道崩落により撤退した横窪峠から先に進み、冬季初めて横窪沢小屋に降り立つ。
横窪沢小屋の裏からスノーシューに履き替えてスタート。スノーシューでも10-20cm沈み込む程度で、傾斜もヒールリフターを活用して難なく進める感じだったが、1,700mを超えたあたりから様相が変わってくる。スノーシューでも沈み込みが膝下くらいまでになり、それに加えて超急斜面に降雪直後のパウダースノー。沈み込むだけならまだしも、急斜面にサラサラのパウダーの雪質が相まって、足場か踏み固められずにズリ落ちまくる。テント泊セットの最大重量を担ぎながらの超急斜面のラッセルはきつすぎる。水平ではなく上りながらのトラバース急斜面とかもかなり厳しい。

標高を増すにつれて、積雪は深くなるともに傾斜も急になる。今までラッセル一番乗りに出くわすことは何度もあったが、ここまで厳しいラッセルを体験するのは初めてだ。今までで違うところは積雪量が多いうえに超急斜面というところ。先は全く見えない。
気温も低く一定して氷点下12度。低温と高負荷運動により、エネルギー消費が激しい。エネルギーが切れると動けなくなるので、標高差300~400m上がる都度、凍り始めたおにぎりを補充しなければならなかった。
果てしなく続く深雪急斜面ラッセル。とりあえずの今日のこの激しいラッセルの終わりは、標高2,400mにある茶臼小屋で終了するが、その距離が絶望的に感じてくる。昼になってもいっこうに後続者が現れない。そのうち物音がすると、後続者きて追い抜いて行ってくれるのでは、という幻聴めいたものを感じるほど(笑)。

標高2,200mの樺段あたりから、さらに傾斜が強まり疲労も重なり、かなりペースが上がらなくなってくる。大幅なペースダウンで、今日の茶臼岳からの夕景撮影もぜんぜん間に合わなそう。もうこの頃には、クリスマスにこんな山奥に来たことを後悔しきり。今日の夕景撮影も本命の明日の朝焼け撮影も、もうどうでもよくなっていた。そこにいるのは「日没までになんとしてでも茶臼小屋まで着く」ことだけを考え動くラッセルマシーン。特に自分にとってラッセルは目的阻害要因にすぎず、まったく好きではないんだよね。
このときの喜びは、ピンクテープを見つけることただそれだけ。一面の雪原で道なんかないため、ルートファインディングが必須。GPSを確認しながらそれらしいところを進んでいくので、ピンクテープを見つけるとやはりホッとする。そしてまた次のピンクテープを探して進むという繰り返し。しかしそのピンクテープが現れるのは、はるか頭上という急斜面ぶり。

標高2,300mあたりから、標高を上げながらの茶臼小屋へのトラバースへ入る。この標高を上げながらの深雪トラバースが厳しい。通常の斜面と違い、適当にジグを切ることもできない。
この頃にはもう完全にバテた。1~2歩進めて10~20秒休まないとまた次の1歩が踏み出せない。疲れ果ててストックに持たれて呼吸を整えていて、ふと気付く。1歩踏み出さなければ状況は何も変わらないと。思い立ってまた1歩を踏み出す。
ヤマレコアプリが10分毎に時刻と標高を教えてくれるが、10分経って進めた標高が20mだったりするとかなりガックリ来る。標高100m上げるのに1時間はかかっていたのではないだろうか。

日没近い時間になって、ようやく茶臼小屋が視界に現れる。水平距離にしてあと200~300mが絶望的な距離に思えてくる。もう一刻も早く帰りたいが、ここまで来たら茶臼小屋まで行くしかない。標高差にして50mを上がるのより、700m下って横窪沢小屋に行く方が楽なのではないかと思えてしまう。

16:30 日没ギリギリになんとか茶臼小屋に到着。自分を追い抜いていく者はいなかったので、当然自分1人の貸し切り状態。
もうかなり限界を超えていた。当初の目的の上河内岳からの朝焼け撮影とか考えられず、一刻も早く帰りたいと思うだけ。なんでクリスマスにこんなところに来てしまったのか。暖かい家で家族とぬくぬくしていた方がよっぽど良かった、と後悔することしきり。
標高1,600mの横窪沢小屋からラッセルがスタートと考えると(もっと手前の横窪峠下からラッセルしていたが)、標高2,400mの茶臼小屋まで、標高差800mのラッセルで6時間を要した計算になる。テント泊セットを持って、ここまでの標高差をラッセルしたのは初めて。正月にトレースが完全に出来上がった北岳に登るよりよっぽど大変だった気がする。冬の塩見岳でも降雪直後に1人だけということもあったが、塩見岳のラッセルよりも厳しかったと思う(途中敗退したが)。人が入らない南アルプス南部の山々って、本当に難しい。

普段であれば疲れに任せて爆睡して、体中ホカホカになるはずなのだが、寒くて3時間弱で起きてしまう。あまりに疲れすぎたのか、体が温まらない。追い食いしたら少しだけ眠れた。

(2日目)茶臼小屋 03:00 ~ 06:20 上河内岳の肩 ~ 06:30 上河内岳 07:50

EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 57mm f8 1/25sec ISO100 PLフィルター

1:30起床。少し寝たら、帰りたい衝動も少し落ち着いたようだ。外に出てみると快晴。夜明けまでまだ時間があるが、何となく寒気も入らず夜明け時の天気は大丈夫そうな感じがする。
こうなるともう当初の予定通り、上河内岳に向かわざるを得ない。ここで帰ったらそれこそ後で激しく後悔するだろう。疲労困憊、超低温の爆風、どのくらい消耗するか分からないラッセル、暗闇での道迷い等、様々な不安がもたげてくるが行くしかない。
美味しくないアルファ米を食べれるだけ胃に詰め込んで、上河内岳往復に備える。

03:00 上部もラッセルが予想されたので、コースタイムの2倍の時間がかかるだろう想定し、余裕を見て3時出発。
まずは茶臼小屋から稜線までの区間。ここも相当手こずるのではと思っていたが、確かにズボズボ沈む、昨日のように足場が崩れて登れないほどの超急斜面ではない。難なく稜線へ到達。稜線はかなり低温なうえ強風が吹いているが、冬はこんなもんでしょう。行動できないほどではない。

次は竹内門までの区間。ここは夏道のお花畑ルートと冬期の尾根道ルートの2つあるらしい。夏道のお花畑ルートは、12年前の2010年に1回通ったきりで、冬の尾根道ルートは通ったことはない。地形図を見ると上がって下る尾根道ルートより、お花畑ルートの方が楽そうだったので、お花畑ルートを選択。
斜面を下ってお花畑ルート方面へ行くが、最大照射900ルーメンの高照度ヘッドライトで照らしても、そこはまさに漆黒の闇。暗闇でルート不明。とてもじゃないが暗闇に下りていくことはできない。方向転換して冬期の尾根ルートへ向かう。
しかし尾根ルートもそう簡単ではなかった。暗闇なので細かいルートは分からないうえ、尾根筋だったら雪は飛ばされて歩きやすいだろうと思っていたが、ここも深雪にハマりまくる。
時間を費やしながらも、なんとか尾根筋とお花畑ルートとの合流地点まで辿り着くが、その先の雪原がさらによく分からなかった。どこを進んでよいか歩いていくうちに方向が変わったり樹林に阻まれたりで、行ったり来たり。樹林に阻まれると雪が深くてスノーシューでも深いと膝上までハマりまくる。ここの雪原の道迷いで、朝に無理やり胃袋に詰め込んだエネルギーを吐き出すとともに、貴重な時間まで費消してしまった。トレースが1つあるだけでまったく違うのに、と思っても仕方がない。この2日間で、このエリアには自分一人しかいないのだから。

ここまでにかかった時間と残るルートのコースタイムを考えると、日の出時刻に上河内岳山頂に到達することは難しそう。なんてことだ、ここまでこんなに大変な思いをしてきたのに。悔しいがどうにもならない。この深雪に勝つ自分の体力が足らないだけなのだ。
もう帰りたい気満々なのだが、かといってここで引き返すわけにもいかず、いつの間にか強風が吹き荒れるようになった稜線を上河内岳へ向かって進む。稜線を進んでいくとそれとなく地形ははっきりしてくるので、道迷いのリスクは減った。そしてなんとなくルートも判別できるようになり、沈み込んで体力を奪われる雪の上ではなく、ルートまたはルート左右の岩の上を歩けるようになる。するとペースも上がり、竹内門に着く頃には、山頂までのコースタイムと夜明けまでの残り時間がほぼ同じ時間となるまでになっていた。
もしかして頑張ったら山頂夜明けに間に合っちゃう?ここまで来たら頑張っちゃう?

散々道迷いで深雪と格闘してきたので、もうすでに空腹。空腹状態で爆風に近い氷点下16度の稜線を歩き続けるのは怖い。山頂に至るこの稜線で、西風を避けられる場所もないように思える。そんなときに、shibawanwanが持たせてくれたチョコを、ポケットにしこたま詰め込んできたことを思い出した。チョコが口の中に入っている限りは歩き続けられる気がした。

06:20 ペースを取り戻し上河内岳の肩に到着。山頂までは10分強で登れば山頂夜明けに間に合うことになる。チョコを追加投入して、休む間もなく登りにかかる。山頂までのルートは、雪が硬く締まっていてくれて、スノーシューで、沈み込まずによいペースで登れた。

EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 45mm f11 1/15sec ISO100 PLフィルター

06:30 上河内岳山頂着。なんと、何度も諦めかけていたけど間に合ったよ!十数年ぶりの目的を達成できたかもしれない。準備時間も十分にあり、夜明けを迎える。
夜明けとともに、南アルプス南部の山々が真っ赤に染まる。これが撮りたかったのだ。聖岳の手前に南岳の焼ける斜面を入れるためには、どうしても上河内岳山頂からしかない。撮影時に違和感を覚え、さらに下山後に写真を確認すると、フレーム内に手前のシルエットとなった上河内岳の斜面が入ってしまっている。本当であれば南岳の焼けた斜面を大きく取り入れたかったのだが、そう撮るには山頂から結構離れた場所まで移動する必要があったのかもしれない。なんてこった。こんな絶好のチャンスをもう一度はないのに。ただ山頂から離れると、今度は南側の山々が撮れなくなるので、今回はこれでよかったとしよう。
富士山は逆光だが、手前の焼ける斜面を入れるといい。だれが焼ける斜面にスノーシューで穴を掘ったのは?ってそれはお前だ。

EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 70mm f8 1/320sec ISO100 PLフィルター

南部の山々は、茶臼岳が低くて小ピークにしか見えない。奥に存在感を感じる真っ白い山は光岳。冬の光岳を想像するが、大変そうでないな、それは。
それにしても、こんな巨大な白い山々が広がる光景が圧巻過ぎる。喜びと達成感と今までの大変さが入り混じる複雑な感情を覚えるが、こんな思いをさせてくれるのが南アルプスのエリアということなのだろうか。
07:50 こんな大変な思いをして再び来ることはないだろう。撮り残さず撮ったら撤収。結局マイナス16度の稜線に何時間いたのだろう。w

(2日目) 上河内岳の肩 08:00 ~ 11:30 茶臼小屋 14:00

EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 24mm f16 1/200sec ISO100 PLフィルター

帰りは景色を楽しみながらゆっくり下山。稜線にはシュカブラと往路の自分の足跡。 こんな爆風の稜線を深夜に登るなんて、自分を褒めてあげたい。 特にこの付近は風が強かった。
さらに下りてゆくと、樹氷やらモンスターやらがあちらこちらに。これも冬の嵐の直後にしか見れない景色。危険を乗り越えたので、空腹に耐えながらではあるが景色が楽しめる。この素晴らしい景色が広がるこのエリアに自分一人しかいないなんて。

EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 70mm f11 1/250sec ISO100 PLフィルター

樹氷越しに、光る駿河湾。スノモンと富士。ニョロニョロがいっぱい。
素晴らしい景色と自分のトレース。こんな景色を見たくて雪山に入るのだ、ということを再認識させられる。

EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 36mm f11 1/250sec ISO100 PLフィルター

雪景色を楽しみながら、尾根道ルートとお花畑ルートの分岐まで戻る。もうこれ以上の負担は避けたい。上りを避けるがごとく、復路はお花畑ルートを選択。
トレースのない一面の雪原を歩くのは、ボコボコ沈み込むが楽しすぎる。そして振り返れば上河内岳。山頂からだけではなく、ここにも絶景が広がっていた。
お花畑の大雪原を通過すると、樹林に突き当たる。ルートはよく分からないが、ここを上部に向けて切りあがっていくらしい。上部へ抜けるため、低木をぬってトラバースしてゆく。

EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 24mm f11 1/160sec ISO100 PLフィルター

適当に樹林をトラバースしながら抜けていくと、完全な無立木の斜面に出る。マジかよ、この斜度登るの?これか、冬の記録で「危険」ってよく書かれていたのは。12月のこの雪質であれば、スノーシュー(ライトニングアッセント)でも行けると判断して、知っていて突っ込んだのだが。お花畑ルートも、ただでは通してくれなかった。
ライトニングアッセントを確実に雪面に食い込ませて、トラバースしながら高度を上げていく。思っていた通り今日の雪質では問題なかったが、3月とか氷化しているとひじょゆに怖い思いをすると思った。ある程度締まっている分、昨日の崩れ落ちるパウダー深雪のトラバースに比べたらよっぽど楽だったが、高度感があるのと西風の直撃を受け続ける。

(2日目)茶臼小屋 14:00 ~ 15:50 横窪沢小屋 16:30 ~ 17:30 ウソッコ沢避難小屋 17:50 ~ 19:10 ヤレヤレ峠 19:30 ~ 20:00 畑薙大吊橋 ~ 20:20 畑薙ダムゲート前

EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 70mm f11 1/200sec ISO100 PLフィルター

11:00 茶臼小屋に下りる稜線まで戻ってきた。この後はそのまま茶臼岳に登る予定だったが、天気が変わりつつある。強風から爆風に変わってきて、体ごと持っていかれる。茶臼岳山頂まではすぐの距離。行くか行かざるか?
まだポケットにチョコは残っている。しかし今までの経験から、爆風下では何かが起こると、自分の中で危険信号が点滅している。自分に何かが起こらなくても、レンズとかいろんなものを持っていかれそうだ。反対側の聖岳や上河内岳は既にガスがかかり始めていて、しかも今のベタ光線では大した写真も撮れなさそう。
やめよう。ここは無理しないことにした。

EOS R5+RF24-70mmF2.8L IS USM 24mm f8 1/80sec ISO100 PLフィルター

11:30 稜線下から富士山を見ながら、再び茶臼小屋へ。本当にこの小屋を冬期開放していてくれることが有難い。この小屋がなければ、山頂夜明けの写真を撮ることもできなかったのだから。
空腹すぎるので、これまた長い下山に耐えられる分だけの食料と飲料水を雪から作る。
14:00 最後はお世話になった茶臼小屋を、入ってしまった雪を掃き出して綺麗に掃除。善意の箱に善意を入れて撤収(昨今の相場ではないがお札が1枚しかなかった)。

帰りもフカフカの新雪パウダーは、まだまだ締まらない。昨日付けた自分のもがくようなトレースのみが続く。それにしても自分のトレースというものは歩きやすい。歩幅が一緒だしスノーシューだし。踏んでいない部分を踏んでいけば、一本の太いトレースができるよね、とかとか思いながら。
自分の昨日のトレースを強固にしながらサクサク軽快に下りてゆくと、1,700m付近で、自分のスノーシューではないツボ足が混ざり始めるのに気づく。この時間帯からすると今日のものではなく昨日のもので、引き返したのか。二番手でもきつかったと思う。

標高を下げても、トラバース道が狭く崖上にあったりと、小さいところがいろいろ危ない。荷物が重いので、その分慎重に下りてゆく。
ヤレヤレ峠ではお決まり過ぎるので「ヤレヤレ」言わないつもりでいたが....、ヤレヤレヤレヤレヤレ!最後に現れるこの登り返しの区間がやたらに長い。スノーシューや冬靴まで背負った超重量級のリュックとなっているので辛い。この登り返しで、少し心臓が痛くなった。

20:00 畑薙大吊橋を渡って下山。相棒のチャリンコが待っていてくれた。さぁ、重荷を肩に食い込ませているこのお疲れ人を、軽やかに沼平ゲートまで連れて行ってくれ。
沼平ゲートまでは、一度も下りずに12分で到着。舗装化され、この区間は自転車必須区間ということを確信した。

人も少なく大変な分だけ記憶に強く留まる山域というのが、南アルプス深南部ということのようにも思える。上河内岳から見た冬の聖岳、赤石岳、荒川岳等、まだまだ登っていない雪山はたくさんあった。けどもう見ているだけで十分かな。

■ 使用レンズ(備忘)

① 24-70mmF2.8:聖岳を狙うには、この焦点距離がぴったりくる。
② 100-400mmF5.6-8:アップで撮りたい場合のみ(以外は不要)。
~~~(未使用レンズ)~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
➂ 14-35mmF4:軽量化のため不所持。特に広く撮るものは少ない。
④ 100-500mmF4.5-7.1:重すぎて担ぎ上げるのは無理。

 

上河内岳 山行記録一覧

2010年07月16日~19日 ■■■■☒『南アルプス新南部縦走』
2022年12月24日~25日 ■■■■■『上河内岳_冬 ~寒波大雪でまさかの入山者0!地獄の単独フルラッセルのご褒美は...~』

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